知財判例データベース 特許法院の審決取消訴訟における訴訟費用担保提供申請権は被告にのみ認められ原告には認められない

基本情報

区分
商標
判断主体
大法院
当事者
株式会社メインワン(申請人)v. エイ-リストインコーポレイティッド(被申請人)
事件番号
2012カホ15
言い渡し日
2012年09月13日
事件の経過
確定

概要

367

特許法院の審決取消訴訟でも訴訟費用担保提供申請権(当該制度について、後述「専門家からのアドバイス」を参照)は被告にあるだけで、原告が上記のような担保提供申請をすることはできず、この点は審決取消訴訟の被告が当該審決取消訴訟の不服対象になった特許審判院審決が下された商標登録無効審判手続の請求人であるとしても同様である。

事実関係

審判請求人は、特許審判院に商標登録無効審判を請求したところ、特許審判院はその請求を受け入れて商標登録を無効とする審決をした。これに対し、原告・特許権者は、審判請求人を被告として特許法院に上記審決の取消しを求める訴えを提起したところ、特許法院が審決を取消す判決をしたため、被告・審判請求人は、これを不服として大法院に上告を提起したところ、原告・特許権者は、被告・審判請求人による上告に対し本件訴訟費用の担保提供申請をした。

判決内容

法院は、商標登録無効審判は特許審判院での行政手続であり、その審決は行政処分に該当し、それに関する不服の訴訟である審決取消訴訟は行政訴訟に該当すると言えるところ、行政訴訟法第8条第2項[1]により準用される民事訴訟法第117条第1項[2]は「原告」が韓国に住所、事務所と営業所を設けていないとき、又は訴状、準備書面、その他の訴訟記録により請求に理由がないことが明白なときなど訴訟費用に対する担保提供が必要であると判断される場合に「被告」の申請があれば法院は原告に訴訟費用に対する担保を提供するよう命じなければならないと規定しているため、訴訟費用の担保提供申請権は、当該審決取消訴訟の被告にのみあり、原告が上記のような担保提供申請をすることはできず、この点は、当該審決取消訴訟の原因が被告による審判請求であるとしても同様であると判断した。そして、本件訴訟費用の担保提供申請は民事訴訟法第117条第1項で定めた申請権がない本案訴訟の原告により行われたものとして不適法であるという理由で申請人の訴訟費用担保提供申請を却下した。

専門家からのアドバイス

「訴訟費用担保提供申請」制度とは、韓国に住所・事務所又は営業所を設けていない原告が敗訴して訴訟費用を負担するようになった場合、被告が訴訟費用を確実に弁償され得るようにするために設けられたものである。当該制度によると、担保提供を申請した被告は、原告が担保を提供する時までに陳述拒否権を行使することができ、原告が担保を提供すべき期間内に提供しなかった時には、法院は、弁論なしに判決で訴えを却下することができる。本件で法院は、訴訟費用担保提供申請権が「被告」にのみ認められていると規定している民事訴訟法の文言に忠実に従うことにより、仮に当該訴訟の原因が「被告」による審判請求であったとして、被請求人である「原告」には請求権がないものと判断し、当該訴訟費用担保提供申請を却下した。

訴訟費用担保提供申請は、原告による無責任な訴権濫用の牽制手段としても作用するものであるから、そうすると本件における訴訟費用担保提供の申請人は確かに審決取消訴訟の「原告」ではあるものの、実質的にこの紛争は被申請人の無効審判請求により開始されたという点で申請人にも訴訟費用担保提供申請を認める必要性があるのではないかという考えも理解できなくはない。しかし、特許審判手続は根本的に司法手続ではなく行政手続であって、司法手続自体は審決取消訴訟によってはじめて開始されるものである以上、現行法規定上、これを覆すのは難しいであろう。

この制度を利用しようとする者としては、本人が審判手続きの請求人・被請求人にかかわらず、該当審決取消訴訟の原告であるか被告であるかで判断されるということを理解しておきたい。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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