知財判例データベース 商標不使用取消審判において、商標使用有無の判断にあたっては、OEM生産者ではなくその商品の発注者である商標権者や使用権者を主体としなければならない
基本情報
- 区分
- 商標
- 判断主体
- 大法院
- 当事者
- ○○○他2(原告、上告人)v. 株式会社五星コーポレーション(被告、被上告人)
- 事件番号
- 2012フ740
- 言い渡し日
- 2012年07月12日
- 事件の経過
- 破棄差戻し
概要
357
自身の商標でなく相手先ブランドを使って商品を生産するいわゆるOEM方式においては、商品の製造に対する品質管理など実質的な統制が当該OEMの発注者によって維持され、また、その製造等は、専ら当該発注者の注文にのみ依存し、さらに、生産された商品の全量が発注者に引き渡されるのが普通である。そのため、商標の不使用取消審判において、当該商標の使用有無の判断に当たっては、特別な事情がない限り、当該OEMに係る商品の発注者である商標権者や使用権者を主体として判断しなければならない。
事実関係
原告は、指定商品を冷麺とする本件登録商標[1]の商標権者であり、被告は、本件登録商標の通常使用権者として、いわゆるOEM方式で◯◯物産に生産を委託し、そこから本件登録商標が表示された冷麺の供給を受けて日本国内で販売してきた。一方、被告は、本件登録商標がその指定商品に対して3年以上国内で使用されなかったとの理由で商標法第73条第1項第3号[2]により商標の不使用取消審判を請求したところ、特許審判院は、被告の請求を受け入れて本件登録商標の商標登録を取り消すという審決をした。原告は、これを不服として特許法院に審決取消訴訟を提起したが、特許法院も本件輸出者である◯◯物産は、通常使用権者でないため、本件登録商標は、商標権者、専用使用権者、通常使用権者のいずれもその指定商品に対して本件取消審判請求日前3年以内に国内で正当に使用していないとして原告の請求を棄却したため、原告は、これを不服として大法院への上告を提起した。
判決内容
大法院は、商標法第2条第1項第1号において「『商標』とは、商品を生産・加工又は販売することを業として営む者が自己の業務に係る商品を他人の商品と識別されるようにするために使用する次の各目のいずれかに該当するものをいう。」と規定していることを指摘した上で、自身の商標でなく、商品の製造発注者が要求する商標を付して商品を生産するいわゆるOEM方式による商品の製造・輸出などにおいては、商品製造に対する品質管理など実質的な統制が当該商品の発注者によって維持されており、また、当該商品の製造・輸出などは、専ら当該発注者の注文にのみ依存して行われ、その全量が発注者に引き渡されることが普通であるため、商標法第73条第1項第3号に基づいた商標不使用による商標登録取消審判において、当該商標の使用有無を判断するに当たっては、特別な事情がない限り、当該商品の発注者である商標権者や使用権者主体として、その使用の判断を行わなければならないという法理を示した。そして、本件の場合、○○物産は被告から注文を受けた冷麺を被告が指定したとおりに本件登録商標を包装に表示して製造し、その全量を被告に供給したものであるうえ、いずれの者にも本件登録商標に対する商標使用料を支払ったところもなく、○○物産によるこのようなOEMによる商品の製造等は、商標の使用には当たらないとした。一方で、被告自身が本件登録商標の通常使用権者に該当するため、本件登録商標は、その通常使用権者である被告により正当に使用されたと見る余地があると判断し、このような理由で原審判決を破棄した。
専門家からのアドバイス
本判決で法院は、商標の形式的な付着行為の他に、商標が実質的に誰の業務と関連した商品を他人の商品と識別できるようにするために使用されたのかなど、商標使用の実質的な側面を考慮し、本件で商標の実質的な使用者は輸出者でなくOEM方式による商品の発注者であると判示した。本判決の結論は、商標不使用を理由とした商標登録取消審判だけでなく、商標の「使用」が問題になる商標法上諸般の問題に広範囲に適用できるものと考えられる。例えば、商標権侵害と関連して、商標権者は、実際の製品生産者でなくOEM方式による商品の発注者に商標権侵害差止請求権などを行使しなければならない。同様に、商標登録の無効や取消審判で該当審判を請求することができる利害関係人は、実際の製品生産者でなくOEM方式による商品の発注者であることになる。このように、OEM方式による商品については、被請求人適格ないし当事者適格において注意が必要となる。
注記
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商標法第73条(商標登録の取消審判)(1)登録商標が次の各号の一に該当する場合には、その商標登録の取消しの審判を請求することができる。
3. 商標権者・専用使用権者又は通商使用権者のいずれもが正当な理由がないのに登録商標をその指定商品に対して取消しの審判の請求日前に継続して3年以上国内において使用していない場合
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