知財判例データベース たとえ自己の登録商標権に基づく使用であっても需要者間に混同を引き起こすことを目的とするなどの場合には、登録商標に関する権利を乱用するものである
基本情報
- 区分
- 商標
- 判断主体
- ソウル中央地方法院
- 当事者
- ルイ・ヴィトン・ マルティエ(原告)v. ○○○他1(被告)
- 事件番号
- 2011ガ合132628
- 言い渡し日
- 2012年07月13日
- 事件の経過
- 控訴期間経過前
概要
353
商標権者が当該商標を出願・登録するようになった目的と経緯、商標権を行使するに至った具体的・個別的事情などに照らし、商標権者による商標の使用が商標使用者の業務上の信用維持と需要者の利益保護を目的とする商標制度の目的や機能を逸脱して、公正な競争秩序と商取引秩序を乱して需要者間に混同を引き起こしたり、相手方に対する関係において信義誠実の原則に違背するなど法的に保護を受ける価値がないと認められる場合には、その商標の使用がたとえ自己の登録商標権に基づいたものであってもこれは登録商標に関する権利を濫用するものとして許容され得ない。
事実関係
原告は1854年頃から「Louis Vuitton」というブランドでかばんと衣類などを生産して世界各国に販売し、1991年頃韓国に子会社を設立して韓国国内に原告の製品を輸入・販売してきたフランス会社であって、財布、かばん類などを指定商品とする本件登録商標[1]の登録権者であり、一方、被告はかばんの卸・小売業を運営する者であって、指定商品をかばん類とする多数の商標権[2](被告商標1~5)を登録し保有し、これらを組合わせて白黒反転させて、被告使用標章[3]のような反復文様の皮革、織物を使用したかばん製品を生産・販売している。原告は被告製品の生産・販売行為が原告の本件登録商標権の侵害に該当するという理由で被告を相手取って商標権侵害差止及び商標権侵害による損害賠償を請求した。
判決内容
法院は、被告は自身が保有している登録商標権に基づき被告使用標章のような模様を使用して適法にかばんを生産・販売する権利があるという被告の主張と関連し、商標権者は指定商品についてその登録商標を使用する権利を独占し、商標法によって登録された商標はそれが無効となるか、取り消されるまでは保護されるのが原則であるが、商標権者が当該商標を出願・登録するに至った目的と経緯、商標権を行使するに至った具体的・個別的事情などに照らし、相手方に対する商標権の行使が商標使用者の業務上の信用維持と需要者の利益保護を目的とする商標制度の目的や機能を逸脱して、公正な競争秩序と商取引秩序を乱し、需要者間に混同を起こしたり相手方に対する関係において信義誠実の原則に違背するなど、法的に保護を受ける価値がないと認められる場合には、その商標権の行使はたとえ権利行使の外形を備えているとしても登録商標に関する権利を濫用するものとして許容され得ないと説示した。その上で、被告は過去にも数回本件登録商標と類似の文様を使用してかばんを生産・販売する行為により法的制裁を受けてきたにもかかわらず、現在に至るまで本件登録商標を構成する図形と類似の図形に関し商標登録を受けて被告の製品を生産・販売しており、また被告の上記の登録商標は被告の製品が被告により生産・販売されているという意味の出所表示として機能するよりは、一般需要者に被告の製品があたかも原告の製品であるかのように誤認・混同させるために機能しており、被告は被告の製品を生産しつつ商標の外観だけでなく個別図形の配置、かばんの材質、色相、製品の形態などまで原告の製品を模倣している点などの諸般事情を総合してみる時、被告が自身の登録商標を組み合わせて原告の製品と類似の製品を生産・販売し、さらに原告が商標権侵害行為の差止を求める本件訴えにおいて自身の登録商標権を盾に上記請求の棄却を求めるのは商標権の濫用行為と見るのが相当であると判断し、被告に5,000万ウォン相当の財産上の損害と5,000万ウォン相当の名声及び信用毀損による損害を賠償することを言渡た。
専門家からのアドバイス
「被告商標1~5」は、それぞれ独立した単体の図形商標として出願されたもので、本件登録商標全体と比べると同一・類似の関係にはないため、審査過程でも特に問題なく登録にいたったものと思われる。登録された商標を変形して使用することについては商標法にも罰則規定があるが、このように登録された商標を複数組合せて使用することについて特に制限規定はなく、そもそも想定していない。
商標権の登録が自他識別の目的ではなく、他人の著名な商品と混同を引き起こして利益を得ようとする目的で形式上商標権を取得した場合は、その商標登録出願そのものが不正競争行為を目的とするものとして、仮に権利行使の外形をもっているとしても、これは適法な権利の行使と認めることができないというのが既存判例の見解である。ただ既存の判例では、商標権濫用と関連して、登録商標権が「国内外の需要者間に特定人の商品を表示するものと認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不当な利益を得ようとしたりその特定人に損害を与えようとするなどの不正な目的を持って使用する商標」や、「故意に著名な他人の商標・サービスマークや商号などの名声に便乗するために、無断で他人の標章を模倣した商標」に該当するなど登録商標自体に無効事由があることを前提にしているものがほとんどであった。
本件判決は地方法院の一審判決であるが、登録商標自体に特別な無効事由がないにもかかわらず、被告が過去模倣品の生産・販売行為で法的制裁を受けたことがあり、商標の外観だけでなく個別図形の配置やかばんの材質、色合い、デザインなどまで原告の製品を模倣しているなどの諸般の状況を考慮し、商標権の濫用を認めたもので、模倣品に悩まされる側にとっては心強い判決と言えよう。しかしながら、権利濫用の適用は、いわば法の例外を法自体が認める規定であるため、法的安定性の確保のために厳格で保守的な運用が行われることが多く、商標権濫用の法理を拡張し過ぎたものと解される余地もある。その意味で本件に対する上級審の判断を鋭意注視する必要があろう。
注記
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被告商標1~5
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