知財判例データベース 教材に「EBS」が使われてもEBS放送講義用であることを案内・説明するためであれば商標権侵害ではない

基本情報

区分
商標
判断主体
大法院
当事者
○○○(被告人、被上告人)v. 検事(上告人)
事件番号
2010ド5994
言い渡し日
2011年01月13日
事件の経過
確定

概要

341

他人の登録商標を利用した場合であるとしてもそれが出処表示のためのものでなく書籍の内容などを案内・説明するために使われる場合には、商標権を侵害した行為と見ることができないため、被告人が発行した学院の教材に「EBS」標章が使われたとしても出処混同のおそれがなく、EBS放送講義の教材として使われたという教材の内容又は用途を案内・説明するための目的であれば、商標権侵害に該当しない。

事実関係

被告人は被告人が運営する「○○○国語論述専門学院」において、指定商品を「書籍、学習紙」などとする被害者の財団法人韓国教育開発院の登録商標「」と同一の「EBS」標章(以下「本件標章」とする)を正当な権限なく被告人が発行する「隙のないWriting・語彙・語法」教材(以下「本件書籍」とする)の表紙に付し、本件書籍約150部を上記の学院受講生に配布した。検事は上記のような行為は商標権侵害行為に該当するという理由で被告人を起訴し、第一審法院はこれに対して有罪を認めたが、第二審法院は第一審判決を破棄して無罪を言渡、検事はこれを不服として上告した。

判決内容

大法院は、他人の登録商標をその指定商品と同一又は類似の商品に使用すれば他人の商標権を侵害する行為になるが、他人の登録商標を利用した場合であるとしてもそれが商標の本質的な機能と言える出処表示のためのものではなく書籍の内容などを案内・説明するために使われる等、商標の使用として認識され得ない場合には登録商標の商標権を侵害した行為と見ることができず、商標として使われているかどうかを判断するためには、商品との関係、当該標章の使用態様(商品などに表示された位置、大きさ等)、登録商標の周知・著名性、また、使用者の意図と使用経緯などを総合して実際の取引界でその表示された標章が商品の識別標識として使われているかどうかを総合して判断しなければならないという法理に基づき、本件書籍の表表紙の中央部分及び背表紙に本件標章が記載されているにもかかわらず、本件書籍の表表紙と背表紙及び裏表紙の下段部に被告人が運営する学院名がロゴ化された特定標章及び学院の住所、インターネットアドレス、電話番号などと共に記載されているという点、書籍の各ページごとに上段には被告人の英文名が、下段にはロゴ化された特定標章及び学院のインターネットアドレスと共に学院名が各記載されているという点などを考慮する時、全体的に本件書籍の出処が被告人又は被告人が運営する学院であるものと明らかに認識され得ると判断した。また、本件書籍の内容は被告人がEBSで放送講義をしながら製作・使用したものであるところ、書籍の最初のページに「この本はEBSで放送している講義教材です」と記載しこれを明示している点、被告人も本件書籍がEBS放送講義の教材で使われたことを表示して自身が運営する学院の受講生にのみ配布する意図で本件標章を使用した点などを総合的に考慮してみれば、本件標章はEBS放送講義の教材で使われたという本件書籍の内容又は用途を案内・説明するためのものであるだけで、その出処を表示する商標として使われたものであるとは言えないため、商標権を侵害したと言えないと判示し、検事の上告を棄却した。

専門家からのアドバイス

本判決は商品の出処表示のための目的でなくその内容などを案内・説明するための目的で使用する場合であるため、商標的使用に該当しないという理由で商標権侵害を否定したわけであるが、本判決は被告人がEBSで実際に講義をし、その講義内容を要約整理して自身が運営する学院受講生にのみ制限的に配布したというなどの特別な事情を前提として下されたことに注意をすべきである。従って、上記のような特別な事情なくEBSのような韓国内では顕著に著名な団体の公信力を利用してマーケティングを展開するために該当団体の標章を講義教材などの書籍に無分別に使用する行為の場合には依然として商標権侵害の可能性があるという点を念頭に置くべきであろう。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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