知財判例データベース 不使用取消審判で指定商品が取消になっても、審判係属中に追加登録された指定商品まで必ず取消されるのではない

基本情報

区分
商標
判断主体
特許法院
当事者
○○○(原告)v. コンピュケースエンタープライズカンパニーリミテッド(被告)
事件番号
2011ホ1432
言い渡し日
2011年06月22日
事件の経過
確定

概要

329

登録商標に対する不使用取消審判請求当時、登録されていた原指定商品が全て不使用により取消しになったとしても、指定商品追加登録出願制度の趣旨などに照らし、不使用取消審判請求当時には指定商品でなかったが、不使用取消審判の係属中に追加登録された指定商品まで必ずしも共に登録取消とならなければならないものではない。

事実関係

コンピュータを指定商品として2003年3月28日登録された本件商標[1]に対し、被告は2009年6月15日付でその指定商品について審判請求日前続けて3年以上使用されなかったため、商標法第73条第1項第3号によりその登録が取り消されなければならないと主張し、登録権者である原告を相手取って登録取消審判を請求した。一方、原告は被告が本件審判を請求する前の2009年2月27日付で既存の指定商品であるコンピュータの他に光ディスク、光スキャナー、ノートブックコンピュータ、キーボード、ディスクメモリー、デジタルカラー複写機、デジタルカラープリンター、マウス、コンピュータケース、コンピュータ電源供給装置など多数のコンピュータ関連用品に対して指定商品追加出願をし、本件審判係属中である2010年5月7日付で指定商品追加登録となった。これに対し、特許審判院は追加登録された指定商品のうち、一部に対して本件商標が使われた事実があるが、原登録指定商品であるコンピュータについては審判請求日前3年以内に使用した事実がなく、本件の審理対象は、原登録指定商品であるコンピュータだけが審理対象であるものの、追加登録された指定商品は、原商標権に合体されて一体となるものであるため、原商標権と共に消滅すべきものであるとし、追加登録された指定商品を含む指定商品全てに対して本件商標の登録が取り消されなければならないと判断した。原告はこれを不服として審決取消訴訟を特許法院に提起した。

判決内容

特許法院は、本件審判の審理対象となる指定商品の範囲と関連し、商標法第73条第1項第3号によってその登録が取り消される商品は「審判請求当時に登録された指定商品であって、取消審判請求に係る指定商品」である点、商標法第77条により準用される特許法第159条第2項は「審判においては、請求人が申し立てなかった請求の趣旨については、審理することができない」と規定しており、商標法第73条第1項第3号による不使用取消審判の対象は審判請求時に請求された指定商品に限られる点、被告は特許審判院に提出した審判請求書で請求の趣旨を「本件商標はその登録を取消す」と記載し請求の理由で本件商標の指定商品は「コンピュータ」であるという点を明示し、当時指定商品追加出願中であった残りの指定商品に関しては何らの主張をしなかった点などを総合し、本件審判の審理対象である指定商品は審判請求当時に指定商品として登録されていた「コンピュータ」に限定されると判事し、本件商標の指定商品のうち「コンピュータ」部分に対して商標法第73条第1項第3号所定の登録取消事由があると判断した。

そして追加登録された指定商品に関しては、(1)指定商品追加登録出願制度の趣旨は商標登録出願後、指定商品を追加する必要が生じたり商標登録後に事業拡大などの事情変化により指定商品の範囲を拡大しようとする場合、別途の商標登録出願手続きによらず指定商品の追加登録を可能にすることによって出願人の経済的負担を減らし商標権の権利範囲をより柔軟に拡張できるようにするためのものである点、(2)商標法第71条第1項第3の2号が「指定商品の追加登録が第48条第1項第4号[2]に違反した場合」だけを登録無効事由と規定しており、追加登録後において、原登録された指定商品に対する登録商標が消滅した場合については、特段登録無効事由と規定していない点、(3)商標登録取消審判で原登録された指定商品全てが取り消される場合、追加登録された指定商品も原登録に附隨して取り消されるか否かは、商標法上明文の規定がなく、商標権者に不利に解釈することは不当である点などを総合し、本件商標のうち、原登録された指定商品部分が取り消されたとしても、本件審判請求の後に追加登録された指定商品部分まで共に取り消されるものではないと判断し、本件商標の指定商品のうち、コンピュータを除いた残りの指定商品に関する部分まで消滅するとした原審審決の取消を求める原告の請求を認容した。

専門家からのアドバイス

通常、指定商品が追加登録された場合、原商標権と合体して運命を共にすることが原則であるが、商標法第73条第1項第3号による不使用取消事由に関し、審判請求されている指定商品のうち一つ以上に対して使用事実を立証すれば取消を免れることができると規定している商標法第73条第4項の趣旨に照らしてみれば、原登録された指定商品部分が取り消されたという理由により、不使用取消審判請求時点で登録されておらず、その後、原登録された指定商品に関する商標の取消しが確定する前に追加登録された指定商品まで共に消滅するというのは、その趣旨に反すると共に、指定商品の追加登録制度の趣旨にも反するものであり、本件判決は上記のような立法趣旨に符合する妥当なものである。

しかし、もしも第三者から不使用取消審判請求された後に、指定商品追加出願を行った場合には、本件とは異なる結果となることに留意せねばならない。すなわち、不使用取消審判請求後に指定商品追加登録出願がなされたとすると、この出願は韓国商標法第7条第5項により拒絶理由に該当するからである。

韓国商標権の管理上、日頃から実際に登録商標を使用している商品、または、出願日から3年が経過する前に使用する予定の商品を確認し、指定商品の追加出願及び登録の必要性を綿密に考慮する必要がある。

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