知財判例データベース 無効審決取消訴訟中に5年の除斥期間が経過した登録商標に対し新たな無効事由を追加主張することは許容されない
基本情報
- 区分
- 商標
- 判断主体
- 特許法院
- 当事者
- 株式会社アモーレパシフィック(原告)v.○○○(被告)
- 事件番号
- 2011ホ4400
- 言い渡し日
- 2011年07月29日
- 事件の経過
- 上告
概要
314
先登録商標(1)を比較対象標章として請求された商標法第7条第1項第7号 による登録無効審判に対する審決取消訴訟係属中において、商標法第76条第1項 による商標登録日から5年の除斥期間が経過した後に比較対象として新たに追加された別の先登録サービスマーク(2)は、無効事由を主張するための比較対象になり得ない。
事実関係
緑茶、麦葉茶、プーアル茶など各種茶類を指定商品とする本件登録商標の商標権者(被告)に対し、原告は、本件登録商標は先登録商標(1)との関係で商標法第7条第1項第7号に該当するため、その商標登録は無効であるとして登録無効審判を請求し、特許審判院は、本件登録商標は先登録商標と非類似であるとして棄却審決を下したところ、無効審判請求人(原告)は、これを不服として審決取消訴訟を特許法院に提起した。そして、原告はこの審決取消訴訟係属中に、本件登録商標の登録日から5年が経過した後、先登録サービスマーク(2)を比較対象として提出して登録無効の主張を追加した。
判決内容
特許法院は、第一に、本件登録商標が先登録商標(1)との関係で商標法第7条第1項第7号に該当するかどうかと関連し、本件登録商標と先登録商標(1)は外観、呼称、観念において互いに差があって全体的に類似していないとして原告の主張を排斥し、第二に、先登録サービスマーク(2)との関係で商標法第7条第1項第7号に該当するかどうかと関連し、商標法第76条第1項の趣旨は除斥期間が経過した後には無効審判を請求できないことはもちろん、除斥期間の適用を受けない無効事由により無効審判を請求した後、その審判及び審決取消訴訟手続きの中で除斥期間の適用を受ける別な無効事由を新しく主張することも許容されないと判示した。原告が本件登録商標の登録日から5年が経過した後になってはじめて本件登録商標が新しい先登録サービスマーク(2)との関係で商標法第7条第1項第7号に該当するという主張を追加したという事実が明白な以上、(1)商標法が一定の登録無効事由に対しては除斥期間を設定することにより登録商標権をめぐった法律関係の速やかな確定を図っているという点、(2)審決取消訴訟手続きで審判段階では扱われなかった新しい先登録商標を比較対象標章として提出することを許容しているとしてもこれは紛争の一回的解決及び手続き経済のためのものであって、新たな先登録商標に基づいた登録無効審判請求が可能であるということを前提とするだけであるという点、(3)除斥期間経過後、新たな先登録商標に基づいて登録無効主張をすることを許容すれば実質的に除斥期間の経過後に新たな登録無効審判請求をするのと同じであり、除斥期間を設定した趣旨を没却させる結果になるという点等に照らしてみれば、除斥期間経過後に新たに提出した先登録サービスマークとの関係で商標法第7条第1項第7号に該当するという主張をすることは、許容できないとして原告の請求を棄却した。
専門家からのアドバイス
特許の無効審判に対して除斥期間を設けていない特許法と異なり、商標法は登録無効事由を公益的無効事由と私益的無効事由の2種類に区分し、私益的無効事由については5年の除斥期間を設けている。これは、瑕疵ある特許権が行使されると第三者に大きな被害を及ぼし得る特許とは異なり、商標の場合には、瑕疵ある商標権の行使によって発生する弊害より、長期間の使用により蓄積された第三者の善意を傷づけることによる弊害がより大きいと考えた立法者の意図が反映されたものである。そして、韓国においては、たとえ審判段階で判断されなかった違法事由であっても、審決取消訴訟段階で新たに追加して主張・立証することができ、これを審理・判断して判決の基礎とすることができるというのが大法院判例の定説とされている。しかし、商標法76条1項の除斥期間の経過が問題となる場合には、商標法の上記のような立法趣旨が尊重されるべきであり、本件判決もこの立法趣旨に従った判決であって、目新しいものではない。
以上のとおり、韓国では、日本のプラクティスと異なり、審判段階で判断されなかった証拠や違法事由についても、審決取消訴訟段階で提出、主張できるので、注意されたい。
ただし、その際、除斥期間には十分留意し、先登録商標などの証拠資料も漏れることのないよう準備を進めるべきである。
注記
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3商標法第7条(商標登録を受けることができない商標)
- 次の各号のいずれかに該当する商標は、第6条にもかかわらず、商標登録を受けることができない。
7. 先の出願による他人の登録商標(地理的表示登録団体標章を除く。)と同一又は類似の商標であってその指定商品と同一又は類似の商品に使用する商標
4商標法第76条(除斥期間)
- 第7条第1項第6号乃至第9号の2及び第14号、第8条、第72条第1項第2号並びに第72条の2第1項第3号に該当することを事由とする商標登録の無効の審判、商標権の存続期間の更新登録の無効の審判及び商品分類の転換登録の無効の審判は、商標登録日、商標権の存続期間の更新登録日及び商品分類の転換登録日から5年を経過した後は、これを請求することができない。
- 次の各号のいずれかに該当する商標は、第6条にもかかわらず、商標登録を受けることができない。
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