知財判例データベース 登録無効審決が確定された特許に対する訂正無効審判請求棄却審決の取消を求めることは法律上の利益がない
基本情報
- 区分
- 特許
- 判断主体
- 特許法院
- 当事者
- ウンジンケミカル株式会社(原告)v.○○○(被告)
- 事件番号
- 2010ホ5888
- 言い渡し日
- 2011年02月15日
- 事件の経過
- 確定(上告棄却)
概要
321
原告が訂正の無効を求める本件特許に関し、その登録を無効とする特許審判院の審決が下されてそのまま確定されたため、本件特許は最初からなかったものと見なければならず、従って、訂正の対象自体がなくなった以上、本件特許に対する原告の訂正無効審判請求を棄却した本件審決の取消を求める法律上の利益もなくなったと見なければならない。
事実関係
被告は「縦糸及び横糸の連結方法により製織されるブラインド」に関する本件特許を登録後、特許請求範囲、詳細な説明及び図面の内容を訂正する訂正審判を請求して特許審判院から訂正を認める審決(2008訂82号)を受けた。原告はこれに対して上記の訂正を無効とせよという趣旨の訂正無効審判を請求したが、特許審判院は上記の訂正は特許法で規定している要件を満たす適法なものであるという理由で原告の請求を棄却する本件審決を下し、原告はこれを不服として本件訂正無効審決に対する審決取消訴訟を特許法院に提起した。
一方、原告はこれと別途に被告を相手取って無効審判を請求しその無効が本件訂正無効審判の審決以後に確定した。
判決内容
特許法院は、特許無効審決が確定された時には、その特許権は最初からなかったものと見なされるため、結果的に存在しない特許を対象として判断した審決は違法ということになるが、特許が無効と確定された以上、原告としてはその審決の取消を求める法律上の利益もなくなったと見るのが相当であるため、審決取消の訴えは不適法なものと言える。また同様に、無効となった特許の訂正を求める審判も訂正の対象がなくなるためその訂正を求める利益がなくなるという法理に基づき、原告が訂正の無効を求める本件特許が無効と確定された以上、本件特許に対する訂正無効審判請求を棄却した本件審決の取消を求める法律上の利益はなくなったため、本件訴えは不適法と判断し、これにより訴えを却下した。
一方、原告は、本件特許に対する無効審決は、特許審判院2008訂82号審決により訂正された明細書に基づいて無効事由に関する判断が下された大法院判決の拘束力に従ったものであるため、上記の訂正を無効とする審決が確定された場合には、上記の大法院判決と前提を異にするもので意味がなくなり、本件特許は訂正前のものに戻り有効に存続することになるため、訂正の無効如何を確定する利益があると主張したが、特許法院は、特許を無効とする審決が確定された以上、その特許権は最初からなかったものと見なすことができ、訂正の無効を求める対象もなくなると言えるため、訂正を無効とする審決が下されたことにより、以前の登録無効判断は無意味なものとなるという趣旨の原告の主張は理由がないと判断した。
専門家からのアドバイス
特許法第136条第6項は「第1項の訂正の審判は、特許権が消滅した後も、これを請求することができる。ただし、審決により特許が無効となった後は、この限りでない。」と規定しており、この条項の解釈と関連し、これは特許無効審決の確定後には新しく訂正審判を請求できないというだけの趣旨であり、それ以前に既に提起された訂正審判には何ら関係がなく、従って、訂正審判によって訂正された特許に対する無効審決には再審事由が発生するという見解も存在する。
しかし、特許無効審決の確定後も訂正を認めてその訂正により確定した無効審決に再審事由が発生するとして蒸し返すことは妥当ではない。
本件判決は、特許無効審決が確定された以上、訂正の無効を訴える利益はなくなり、仮に訂正を無効とする審決が下されたとしても既に確定された登録無効審決の効力には影響を与えることができない点を明確にしたという点でその意味があると言える。
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