知財判例データベース マンション建築分譲などの高額商品は、一部類似部分が存在しても出処の混同を生じさせる可能性が低いとした事例

基本情報

区分
商標
判断主体
大法院
当事者
東部建設株式会社(原告、上告人)v. 東部住宅建設株式会社(被告、被上告人)
事件番号
2010ダ20778
言い渡し日
2011年12月27日
事件の経過
確定

概要

334

商標の類否は、その外観・呼称及び観念を客観的・全体的・離隔的に観察してその指定商品の取引で一般需要者や取引者が商標に対して感じる直観的認識を基準とし、その商品の出処に関して誤認・混同を生じさせるおそれがあるかどうかによって判断しなければならず、対比される商標との間に類似の部分があるとしても、当該商品をめぐる一般的な取引実情などを総合的・全体的に考慮した場合、その部分だけで分離認識される可能性が稀薄であるか、または、全体的に観察すれば明確に出処の混同を避けることができる場合には、類似商標と見ることができない。

事実関係

原告は各種建築資材及びマンション建築業などを指定商品及び指定役務とする本件登録商標及び登録サービスマーク(以下「本件登録商標」とする)[1]の権利者として、「東部」又は「東部セントレビル」を標章と使用している者である。一方、被告は「東部住宅ブリアント」又は「ブリアント」という標章(以下「被告使用標章」とする)を使用してマンションを建築したり分譲している者であるところ、原告は被告が本件登録商標と類似の被告使用標章を使用する行為は本件登録商標に対する原告の商標権を侵害するものであるという理由で、被告を相手取って被告使用標章に対する使用を差し止めることを請求した。これに対して第一審と第二審は、被告使用標章は原告の本件登録商標と互いに異なり商品又はサービスの出処に関して誤認・混同を生じさせるおそれがないという理由で原告の請求を棄却したところ、原告はこれを不服として大法院に上告した。

判決内容

大法院は、商標の類否判断について、その外観・呼称及び観念を客観的・全体的・離隔的に観察してその指定商品の取引において一般需要者や取引者が商標に対して感じる直観的認識を基準としてその商品の出処に関して誤認・混同を生じさせるおそれがあるかどうかによって判断しなければならず、対比される商標との間に類似の部分があるとしても、当該商品をめぐる一般的な取引実情、即ち、市場の性質、需要者の財力や知識、注意の程度、専門家であるかどうか、年齢、性別、当該商品の属性と取引方法、取引場所、事後管理の如何、商標の現存及び使用状況、商標の周知程度及び当該商品との関係、需要者の日常言語生活などを総合的、全体的に考慮し、その部分だけで分離認識される可能性が稀薄であるか、全体的に観察する時、明らかに出処の混同を避けることができる場合には、類似する商標と判断することはできない旨先ず説示した。そして、この法理に基づき、被告使用標章のうち「東部住宅ブリアント」について「東部住宅」と「ブリアント」とを互いに分離して観察した場合、これらは不自然な程度に不可分的に結合されているとは言えないため、その構成部分の一部である「東部」又は「東部住宅」だけで呼称・観念される余地がないわけではないが、被告は「東部住宅建設株式会社」という商号で設立登記をし、指定役務を建物分譲業等として「ブリアント」、「BRILLIANTE」のように構成されたサービスマークの登録を受けたものであるところ、本件の弁論終結当時にはマンション分譲広告やマンション外壁などにその施工社の商号又はその略称と商標・サービスマークを結合して使用することが慣行化されていた事実があり、さらに、被告が建築・分譲したマンションの広告チラシ及びマンション出入口・外壁などには「東部住宅ブリアント」のように「東部住宅」と「ブリアント」が一連に記載された形態で表示されたり、「ブリアント」が大きく記載された上に「東部住宅」が小さく記載され表示されている事実、及び被告使用標章が使われたマンションは高価の物であって一般需要者や取引者が充分な注意を注いでこれを取引するようになるものと思われる事情などがあり、これらマンション建築及び分譲などをめぐる一般的な取引実情と被告使用標章の使用状況などを総合的・全体的に考慮してみれば、被告使用標章の「東部住宅ブリアント」は、一般需要者や取引者間に原告の本件登録商標と共通される「東部」や「東部住宅」部分だけで分離認識される可能性は稀薄であり、標章全体である「東部住宅ブリアント」又は構成部分のうち、標章全体で占める比重がより大きい「ブリアント」として呼称・観念される可能性が高いものと判断した。結果、被告使用標章である「東部住宅ブリアント」は原告の本件登録商標と外観はもちろん呼称・観念においても互いに異なり一般需要者や取引者に商品又はサービスや営業の出処に関して誤認・混同を生じさせるおそれがないとして、原告の上告を棄却した。

専門家からのアドバイス

商標の類否判断に関する本判決の要旨は、おおむね日本における取り扱いとほぼ同じであると考えられる。しかし、本件では、小額の一般消費財のようにきわめて短時間の間に陳列された商品を選び購入するのではなく、高額なマンションという商品の特性上、需要者は熟考のうえに熟考を重ねて購入するわけであるから、実際には出処の誤認混同の可能性が低くなるという点が考慮されたと思われる点に注意する必要がある。すなわち、本判決でも説示されているように、「東部住宅ブリアント」という被告の使用標章は、「東部」又は「東部住宅」だけで呼称・観念される可能性があることを勘案すれば、需要者の商慣行、被告使用標識の使用状況、具体的な混同の有無などにより本件とは異なる結論が導き出される可能性もあったと考えられる。

このように、他人の商標と類似している標章を一部含んで使っている場合には、その使用状況等により商標権侵害とされる可能性が少なくないことから、当該類似している部分によって分離して識別力を有していないか、全体的に観察すれば非類似といえるものであるか、上述の観点から十分に検討する必要がある。

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