知財判例データベース 「バーバリーカラオケ」という商号でカラオケ営業をすることは不正競争行為に該当すると判示した事例

基本情報

区分
不正競争
判断主体
大田高等法院
当事者
バーバリーリミッテッド(Burberry Limited)(原告、控訴人)v.○○○(被告、被控訴人)
事件番号
2010ナ819
言い渡し日
2010年08月18日
事件の経過
確定

概要

293

不正競争防止法第2条第1号ハ目所定の不正競争行為の場合[1]、営業の種類が異なるなどの理由で有名商標と直接的な混同可能性がないとしても有名商標の標識の識別力や名声を不当な方法で損傷させる行為を禁じているところ、周知・著名な商標である「バーバリー」をカラオケ営業に使用することも上記不正競争行為として禁止される。

事実関係

原告は衣類、かばんなどファッション関連製品を製造・販売しつつその商品標識として登録商標である「BURBERRY」又は「バーバリー」などを使用している会社であり、被告は2003年11月頃から天安市で「バーバリーカラオケ」と表記した外部看板をあげカラオケ営業をしている個人である。原告は被告が原告の周知・著名な商品標識である原告の登録商標と同一又は類似の「バーバリーカラオケ」という標識を使用してカラオケ営業活動をすることは不正競争防止法第2条第1号ハ目所定の不正競争行為に該当するという理由で被告を相手取って上記標識の使用差止及び損害賠償を請求したところ、一審法院の大田地方法院は、単に有名商標と同一・類似の商品標識又は営業標識を使用した事実があったとしても他人の標識の識別力や名声の損傷という結果又はその可能性を推定することはできず、実際に標識の識別力や名声が損傷されたという結果又はその可能性に対する別途の主張・立証がなければならないと判示し原告の請求を棄却したため、原告は大田高等法院に控訴した。

判決内容

大田高等法院は「識別力の損傷」は「特定の標識が商品標識や営業標識としての出処表示機能が損傷されること」を意味すると解釈することが相当であり、このような識別力の損傷は著名な商品標識が他人により営業標識として使われる場合にも起こり得るのであり、「名声の損傷」は「特定の標識の良いイメージや価値を傷づけること」を意味するものと解釈されるという法理に基づき、被告が7年以上原告の登録商標をカラオケ店舗の商号として使用してきた以上、たとえ原・被告の営業が同一・類似でないとしても、被告が著名な原告の登録商標を営業標識として使用することにより原告の登録商標の商品標識としての出処表示機能が損傷されたと言え、被告が原告の登録商標を多数人が比較的に低廉な価格で利用できるカラオケ店舗の商号として使用することにより高級ファッションイメージで知られた原告の登録商標の名声が損傷されたと言えるため、被告の行為は不正競争行為に該当すると判示し原審を破棄し原告の使用禁止請求を認容した。

また、原告の損害賠償請求に対しては原告に損害が発生した点は認められるが、その損害額を立証するために必要な事実を立証することが事実の性質上、極めて困難な場合に該当するという理由で、本件登録商標を使用した期間、原告の営業規模と認知度、被告の営業形態及び営業規模、被告の不正競争行為の態様及び期間、原・被告の営業の異質性など諸般の事情を考慮し、原告が請求した2,000万ウォンのうち250万ウォンを認容した。

専門家からのアドバイス

不正競争防止法第2条第1号ハ目所定の不正競争行為は著名商標に対する「希釈化行為」を差し止めるための条項であるが、識別力損傷又は名声損傷という結果又はその可能性に対する別途の立証が必要であるかどうかに対しては、明確な大法院判決はなく、一般的にその可能性を立証することでも充分であると理解されている。識別力損傷の不正競争行為を認めた最初の大法院事件はいわゆる「viagra.co.kr」事件(大法院2004年5月14日言渡2002ダ13782判決)であるが、ここでもその立証の程度に関する明示的判断はなく、識別力損傷という結果に対する厳格な立証を要求しないまま、その可能性があることのみをもって不正競争行為として認めたのである。

識別力の損傷や名声の損傷という結果を証拠により目に見えるよう完全に立証することが性質上不可能であるのに、完壁な立証を要求すれば関連条文の趣旨自体が没却される結果になるという点からも上記の大法院判決や本件の大田高等法院の判断が適切であり、大田地方法院の第一審判決の結論にはやはり問題があったと思われる。

商品又は営業を表すものとして韓国内で周知・著名性を獲得した標識を保有しているとしても、他人がその保有者の営業とは全く異なる分野の商品や営業に同一・類似の標識を使用している場合には商標権侵害や混同による不正競争行為であると主張しにくいのが現実であるが、このような場合には不正競争防止法第2条第1号ハ目に基づいた「希釈化行為」に関する差止請求や損害賠償請求を積極的に検討してみる必要がある。

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