知財判例データベース ゲームに登場するキャラクターも著作権法の保護対象になり得るが、複製権又は2次的著作物作成権を侵害したものではないと判断した事例

基本情報

区分
著作権
判断主体
大法院
当事者
K株式会社(原告、脱退)、株式会社KDE(原告継承参加人、上告人)v. 株式会社N、株式会社H(被告、被上告人)
事件番号
2007ダ63409
言い渡し日
2010年02月11日
事件の経過
確定

概要

272

ゲームに登場するキャラクターにも創作性が認められるため、原著作物であるゲームとは別個に著作権法の保護対象となり得るが、そのキャラクターに関して商品化がなされたかどうかは著作権法による保護如何を判断するにおいて考慮する事項でない。また、複製権又は2次的著作物作成権の侵害如何を判断するために両著作物の間に実質的類似性があるかどうかを判断するに際しては、創作的な表現形式に該当するかどうかだけを以って対比しなければならない。

事実関係

原告K社は1994年に発売したゲーム機用野球ゲームソフトウェア(以下「原告ゲーム」とする)の著作権者であり、原告継承参加人KDE社は2006年頃原告から原告ゲームの著作権を譲り受けた会社であり、被告N社は2005年頃オンライン用野球ゲーム(以下「被告ゲーム」とする)を製作し、被告株式会社H社は自身が運営するインターネットサイトを通して被告上記の野球ゲームを提供している。原告継承参加人は、被告らが原告ゲーム実況野球のキャラクターと実質的に類似の新野球キャラクターが登場する被告ゲームを製作・提供することにより、原告継承参加人の原告ゲームのキャラクターに対する複製権又は2次的著作物作成権を侵害したという理由でその侵害の差止を求める訴訟を提起した。原審法院は原告ゲームのキャラクターは原告ゲームの著作物の一部分に過ぎないため、独自の著作物性は認められず、原告ゲームのキャラクターと被告ゲームのキャラクターは実質的類似性がないという理由で原告継承参加人の請求を棄却した。これに対し、原告継承参加人は、ゲームキャラクターにも独自の著作物性が認められ、両キャラクターの間に実質的類似性が認められるという理由で上告を提起した。

判決内容

法院は野球を素材としたゲームである原告ゲームに登場するキャラクターは野球選手又は審判に漫画の中の登場人物のような可愛いイメージを感じることができるよう人物の姿を個性的に図案化することにより著作権法が要求する創作性の要件を備えているため、創作性のある著作物として原著作物であるゲームとは別個に著作権法の保護対象になることができ、原告ゲームのキャラクターに関して商品化がなされたかどうかは著作権法による保護如何を判断するにおいて考慮する事項でないと判示した。しかし、複製権又は2次的著作物作成権の侵害如何を判断するために両著作物の間に実質的類似性があるかどうかを判断するに際して創作的な表現形式に該当するかどうかだけを以って対比しなければならないと判示した上で、被告ゲームのキャラクターと原告ゲームのキャラクターの間に類似する面があることは事実であるが、このような部分は原告ゲームのキャラクターが発売される以前に既に漫画、ゲーム、人形などで可愛いイメージの子供のようなキャラクターを表現するのによく使われた手法であるか、又は野球を素材としたゲーム物の特性上必然的に類似に表現せざるを得ないものであると言え、上記のような類似点だけでは両キャラクターの創作的表現形式が実質的に類似しているとは言えないため、被告ゲームのキャラクターが原告ゲームのキャラクターを複製したと見られないのはもちろん、原告ゲームのキャラクターの2次的著作物に該当するとも見られないと判示し、原告継承参加人の上告を棄却した。

専門家からのアドバイス

大法院が、ゲームに登場するキャラクターにも創作性が認められるため、原著作物であるゲームとは別個に独立した著作権法の保護対象になることができ、そのキャラクターに関して商品化がなされたかどうかは著作権法による保護如何を判断することにおいて考慮する事項でないという判示部分は妥当なところであると言えよう。しかし、両キャラクターが実質的に類似するかどうかに対する判断基準と関連して、大法院が全体的な観察方法を全く考慮せず、創作的表現形式のある部分だけを分離して比較・判断しなければならないと説示しつつ、これを基に両キャラクターの類似性を否定したことは著作権者の権利保護に反しており、権利者としては無念の残る判決である。

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