知財判例データベース 一部の指定商品に対し不使用取消審判を請求した後、審決取消訴訟の段階で他の取消事由を新しく主張することは許容されないと判示した事例

基本情報

区分
商標
判断主体
大法院
当事者
株式会社カタナゴルフ(原告、上告人)v. Pan-West Pte Ltd(被告、被上告人)
事件番号
2010フ1213
言い渡し日
2010年09月09日
事件の経過
確定

概要

291

商標法第73条第1項第2号の商標登録取消審判請求は登録商標の指定商品全体に対してのみすることができ、その一部に対する請求は許容されないため、審判手続きで登録商標のうち、一部の指定商品に対してのみ商標法第73条第1項第3号の商標登録取消事由を主張し、その後の審決取消訴訟手続きで商標法第73条第1項第2号の商標登録取消事由を追加に主張することはできない。[1]

事実関係

被告は商品類区分第18類のスポーツかばん、第28類のゴルフクラブなどを指定商品とする本件登録商標[2]の商標権者である。原告は、被告が正当な理由なしに本件登録商標を指定商品のうち、商品類区分第28類の指定商品に対して3年以上国内で使用しなかったため、商標法第73条第1項第3号に該当すると主張して登録取消審判を請求したが、特許審判院は原告の請求を受け入れなかった。その後、原告は特許法院に審決取消訴訟を提起し、本件登録商標が商標法第73条第1項第3号に加えて、被告が本件登録商標の指定商品に本件登録商標と類似の商標を使用することにより日本カタナ社の「KATANA」などの商標に便乗し不当な利益を得て一般需要者に商品出処の混同を生じさせたため、商標法第73条第1項第2号にも該当するという主張を追加したが、特許法院も原告の請求を棄却したため、原告は大法院に上告した。

判決内容

大法院は、本件登録商標が商標法第73条第1項第3号に該当するかどうかと関連し、被告は実使用商標[3]が付されたゴルフクラブ200本を輸入し販売した事実があり、これは単純なサンプル用であるとか商標権の取消を免れるために輸入されたものであると見られず、実使用商標は本件登録商標と同様に「」図形と英文字「KATANA」及び「GOLF」を全て含み、単に図形と英文字が2段配列から3段配列に変形された程度に過ぎないため、これら商標は取引社会の通念上、同一な商標に該当するため本件登録商標はその指定商品であるゴルフクラブに適法に使われたと判示した。また、商標法第73条第1項第2号の商標登録取消審判請求は、登録商標の指定商品全体に対してのみすることができ、その一部に対する請求は許容されず、審判手続きで本件登録商標の指定商品のうち、一部である商品類区分第28類の指定商品に対してのみ商標法第73条第1項第3号の商標登録取消審判を請求した後、審決取消訴訟に至ってはじめて商標法第73条第1項第2号の商標登録取消事由を追加して主張することは許容されないと判示しながら、原告の上告を棄却した。

専門家からのアドバイス

韓国商標法は、第73条第1項第3号(3年間の不使用)の場合、指定商品の一部に対する取消審判請求も許容しているが、第73条第1項第2号(商標の不正変形使用)の場合には指定商品全体に対してのみ取消審判が許容されている。

特許審判院の商標登録取消審判段階において、審理されなかった新たな取消事由を特許法院の審決取消訴訟段階で新しく追加して主張することが許容すべきかどうかに関しては、いわゆる「審級の利益」という側面では議論の余地があるが、いずれにせよ韓国特許法院は、審決取消訴訟で新たな取消事由を主張することを許容しており、その主張の適否当否に関して積極的に判断できるという、いわゆる無制限説の見解をとっている(特許法院2006年4月7日言渡2005ホ5907判決:審判請求人が特定商標の指定商品全体に対して不使用を理由とする取消審判を請求し、特許法院の審決取消訴訟段階で不正使用による取消を追加した事案である)。

しかし、本件のように審判院で一部の指定商品に対してのみ取消審判が請求され、審決もそれのみに限定された場合には事情が異なる。この場合は審決取消訴訟段階で不正使用の主張を認めれば審決の対象にならなかった指定商品に対する審理までせざるを得ず、訴訟理論上でも許容され難いため、特許法院がその主張そのものが理由がないものとして排斥したわけである。

原告としては、もちろん商標の不正使用を理由に再度取消審判を請求すればいいわけであるが、他人の登録商標に対する取消を争おうとする場合、指定商品の全体か一部を争うのか、他の取消事由があるかどうかを最初から綿密に検討して審判請求を行うように留意する必要がある。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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