知財判例データベース 登録商標と類似ではあるが、全体的に取引社会通念上、登録商標と同一であると見られないという理由で登録商標の使用を否定した事例

基本情報

区分
商標
判断主体
特許法院
当事者
株式会社ピーエムシープロダクション(原告)v.○○(被告)
事件番号
2009ホ8515
言い渡し日
2010年02月25日
事件の経過
確定

概要

271

商標法第73条第1項第3号で規定する「登録商標の使用」とは、登録商標と同一の商標を使用した場合を言い、同一の商標とは登録商標そのものだけでなく、取引社会通念上、登録商標と同一と見られる形態の商標を含むが、類似商標を使用した場合までは含まず、登録商標が結合商標であって結合商標をなす記号や文字又は図形がそれぞれ商標の要部を構成している場合にはその中の一部分だけを商標として使用してもこれをもって登録商標を正当に使用したとは言えない。

事実関係

原告は被服、Tシャツ、ネクタイ、帽子などを指定商品とする本件登録商標[1]の商標権者であるところ、被告は原告を相手に本件登録商標はその指定商品のうち、Tシャツ、ネクタイ、帽子などに対して取消審判の請求日前に継続して3年以上国内で使われなかったため、取り消されなければならないと主張して上記の指定商品について登録取消審判を請求し、特許審判院は本件登録商標が国内で上記の指定商品に対し正当に使われたという証拠が不足しているという理由で被告の請求を認容する審決を下した。その後、原告は審決取消訴訟を特許法院に提起し、本件登録商標は国内で上記の指定商品に対し正当に使用されたものであると争った。

判決内容

法院は、原告がミュージカル劇「ナンタ」の公演10周年を記念するために2007年10月頃、広報用パンフレットを製作して観覧客などに配布し、そのパンフレットには「ナンタ10周年記念Tシャツ」がナンタ専用劇場内のキャラクターショップで購入できるという案内文と共にその記念Tシャツの写真が掲載されており、その記念Tシャツのうちの一つには本件使用標章[2]が表示されていたという事実を認めた。しかし、本件登録商標は平凡な書体の英文字「NANTA」とハングル「난타(ナンタのハングル)」が同じような類似の大きさで上下2段に併記されていてそれぞれ商標の要部を構成している反面、本件使用標章はあたかもひびが入ったように図案化された太いゴシック体の英文字「NANTA」が不揃いに大きく配列され、大きく記載されており、その左側の上に「난타 10th Anniversary」という文句が手書きのような比較的平易な字体で小さく付記されていて全体的に「NANTA」部分が圧倒的に目立ち、本件使用標章の上記「난타 10th Anniversary」部分はそれ全体で「ナンタ10周年記念」という意味を有するため、ハングル「난타」だけが分離認識されるとは見難く、その部分全体としてでも意味上宣伝文句に過ぎないため、使用商品との関係においてで識別力がないか、あっても微弱であるという理由で、本件使用標章は本件登録商標の一要部であるハングル「난타」に該当する部分が欠如しているから全体として取引社会通念上、本件登録商標と同一とは見られないと判示し、原告の請求を棄却した。

専門家からのアドバイス

商標法第73条第1項第3号の規定により商標権者が正当な理由なしに登録商標をその指定商品に対して取消審判の請求日前に継続して3年以上国内において使用していない場合には、利害関係人の請求により商標権登録を取り消すことができ、これは商標権者が具体的な使用意思なしに長期間登録商標を使用していないにもかかわらず、指定商品に対して商標法上の独占排他的な権利を認めるのは不当であるという趣旨の一種の制裁規定である。

従って、法院は登録商標を実際に使用したかどうかを判断する際には、登録商標とまったく同じものや取引社会において通念上同一と見なせる形態の商標を使用した場合には登録商標を使用したと認めるものの、類似している程度であって同一ではない商標を使用した場合には商標の使用と認めず、厳格な判断姿勢を見せている。

本件は併記されたハングルと英文のいずれもが商標の要部に該当する場合、その登録商標と使用商標が同一であるかどうかに対する判断基準を提示しており、商標権者としては商標を使用するとき、要部それぞれの大きさ、フォント、配列などをすべて考慮しながら登録商標の要部がすべて同一の範囲内で使われたと認められるよう注意する必要がある。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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