知財判例データベース 自己の商号を普通に使用する方法で表示したものではないため、商標権の効力が及ぶと判断した事例

基本情報

区分
商標
判断主体
大法院
当事者
株式会社チャンス産業(原告)v. ○○(被告)
事件番号
2006ダ51577
言い渡し日
2009年09月25日
事件の経過
破棄差戻し

概要

217

商標法第51条第1項第1号[1]において登録商標権の効力が及ばないための「商号を普通に使用する方法で表示する」とは、商号を独特の書体や色彩、図案化された文字など特殊な態様で表示することなどにより特別な識別力を持たせることなく表示することを意味するだけでなく、一般需要者がその標章を見て商号であることを認識できるように表示することを前提とする。従って、標章自体が特別な識別力を有するように表示されたのか、さらにその他にも、使用された標章の位置、配列、大きさ、他の文字との連結関係、図形と結合されて使用されたのかどうかなど、実際の使用態様を総合して取引通念上、自己の商号を普通に使用する方法で表示した場合に該当するのかどうかを判断しなければならない。

事実関係

オンドル装置が設けられた電気寝台を指定商品とする「チャンスオンドル」(以下「本件登録商標」)に関する登録商標権者である原告は、ハングルインターネットアドレス「장수온돌(チャンスオンドルのハングル)」(以下「本件ハングルインターネットアドレス」)を登録し、インターネット使用者がウェブブラウザのアドレスウィンドウに「장수온돌」と入力すると連結されるウェブサイト(www.jangsuondol.com)で電気寝台などの商品に関する情報を提供し、販売するショッピングモールを運営していた被告に対し、このような行為は商標権の侵害に該当すると主張し、本件ハングルインターネットアドレスの使用禁止及び移転登録を請求した。これに対してソウル高等法院は、被告が本件ハングルインターネットアドレスを使用した行為が商標的使用に該当するとしても、これは自己の商号を普通に使用する方法で表示した場合に該当し、商標権の侵害ではないと判断したところ、原告は大法院に上告した。

判決内容

法院は、ドメイン名の場合、ドメイン名の使用態様及びそのドメイン名で連結されるウェブサイト画面の表示内容などを全体的に考慮して取引通念上、商品の出所を表示し、自己の業務に関係した商品と他人の業務に関係した商品を区別する識別表示として機能しているときには商標の使用として見ることができると説示した後、このような商標の使用に該当するとしても自己の商号を普通に使用する方法で表示する場合には、商標法第51条第1項第1号の本文により登録商標権の効力は及ばないが、ここでいう「商号を普通に使用する方法で表示する」とは、商号を独特の書体や色彩、図案化された文字など特殊な態様で表示することなどにより特別な識別力を持たせることなく表示することを意味するだけでなく、一般需要者がその標章を見て商号であることを認識できるように表示することを前提にすると言えるので、標章自体が特別な識別力を有するように表示されたのか、さらにそれ以外にも、使用された標章の位置、配列、大きさ、他の文字との連結関係、図形と結合されて使用されたのかどうかなど、実際の使用態様を総合して取引通念上、自己の商号を普通に使用する方法で表示した場合に該当するのかどうかを判断しなければならないと説示した。

法院は、上記の通りの基準に基づいて具体的な事実関係を詳察して、被告が本件登録商標と同じ本件ハングルインターネットアドレスを登録し、これを本件登録商標の指定商品と同一、類似の商品を販売するショッピングモールに連結されるように使用するのは商標権侵害行為に該当し、さらにハングルドメイン名の場合、数字、文字、記号などの結合からなり、階層的構造を有する一般的なドメイン名よりも商品の出所表示ないし広告宣伝機能が強い点、被告がウェブサイト上段に本件ハングルインターネットアドレスと同じ文字部分を目立つように表示し、これを商品の名称にまで使用した点などを考慮して、本件ハングルインターネットアドレスは取引通念上、自己の商号を普通に使用する方法で表示した商標に該当すると見ることができないとし、これと異なる判示をした原審の判断が誤りであると指摘した後、原審を破棄した。

専門家からのアドバイス

判例は、電子商取引が活発に行われている現代においてドメイン名の使用が既存の登録商標権の侵害に該当するかどうかは、事案の具体的な事情に応じて個別的に判断しており、該当する場合とそうでない場合が混在している。ところで、ドメイン名が使用者の商号に該当する場合、一定の商号使用について商標権の効力を制限する商標法第51条第1項第1号が適用され得るかどうかが問題となる。本件においても本件ハングルインターネットアドレス使用者は、使用標章がハングルインターネットアドレスであるという点以外に自己の商号を普通に使用したものであり、商標権の効力が及ばないと主張した。だが、商標権の効力が及ばない商号の使用とは商号を普通に使用する方法で表示することを言うのであり、一般需要者がその標章を見て商号であることを認識できるように表示することが要求され、これに該当するのかどうかは、やはり実際の使用態様を総合して具体的な事案ごとに個別的に判断するしかない。本事案でもアドレスウインドウに現れるアドレスだけを考慮したのではなく、連結されるウェブサイトの中に示される使用態様までも考慮したうえで判断を下している。従って、本判決は商標的使用に該当するドメイン名の使用及び商標権の効力が及ぶ商号の使用に関する法院の解釈が今後どのようになっていくかを推し量る一例を提示するものだと言えるだろう。

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