知財判例データベース 1つの特許請求項に一部の無効事由がある場合、その項全てを無効としなければならないかに関して判断した事例

基本情報

区分
特許
判断主体
特許法院
当事者
○○(原告)v. 韓国電力公社(被告)
事件番号
2008ホ13367
言い渡し日
2009年07月10日
事件の経過
未確認

概要

246

特許請求の範囲の1つの請求項に係る発明の一部に、公知技術の範囲に属する等の特許無効事由がある場合には、その公知技術などが他の進歩性が認められる部分と有機的に結合されたものであると認められない限り、その項全てに関して無効としなければならず、その特許請求の範囲の当該請求項のうち一部に関してのみ無効であるとしてはならない。従って、多数の独立項を単純に引用する従属項において進歩性がない一部独立項に関する従属項部分と残りの独立項に関する従属項部分の間に有機的な結合関係が認められなければ、残りの独立項に関する従属項部分に特許無効事由があるかどうかをみる必要もなくその従属項は全て無効にならなければならない。

事実関係

被告は発明の名称が「電力量計の遠隔検針システム」である原告の特許発明の特許請求の範囲のうち、請求項第1、2、5、6、7項の発明に対して登録無効審判を請求し、特許審判院は当業者が比較対象発明から上記の発明を容易に発明できるから進歩性なしとして無効審決を下した。これに対して原告は特許法院に審決取消訴訟を提起したところ、独立項第1、2、3、4項の従属項である第5項に一部無効事由がある場合、従属項全てが無効になるかどうかが争点になった。

判決内容

法院はまず独立項である請求項第1項及び第2項の発明が比較対象発明と比べて進歩性がないと判断した。次に請求項第1、2、3、4項の従属項である第5項は、本件第1、2項発明の従属項部分と本件第3、4項発明の従属項部分に分けられるところ、進歩性がない本件第1、2項発明の従属項部分により従属項全てが無効になるかに関し、法院は、特許請求の範囲の1つの請求項に係る発明の一部に、公知技術の範囲に属する等の特許無効事由がある場合には、その公知技術などが異なる進歩性が認められる部分 と有機的に結合されたものと認められない限り、その項全てに関して無効にしなければならず、その特許請求の範囲の当該請求項のうち、一部に関してのみ無効とすることはできないという法理を説示し、本件第5項発明の場合、本件第1、2項発明の従属項部分とこれを除外した残りの部分である本件第3、4項発明の従属項部分の間に有機的な結合関係があるとは見られないため、本件第5項発明はその一部である本件第1、2項発明の従属項部分の無効事由によりその残りの部分である本件第3、4項発明の従属項部分にも無効事由があるかどうかをみる必要もなく全て無効にならなければならないと判断し原告の請求を棄却した。

専門家からのアドバイス

特許請求項の一部が公知となる等で無効事由があってもその公知となった部分と残りの構成が有機的に結合して進歩性が認められる場合にはその特許請求項のうち、無効事由がある一部だけを無効とできないというのは法院の確立された態度であると言える。ところが、本件は発明の技術的構成に一部の無効事由がある場合でなく独立項を単純引用する従属項で引用される独立項のうち、一部独立項に進歩性が認められないとき、残りの独立項を引用する従属項部分も無効になるかが問題となった。これに対して特許法院はそれぞれの独立項を引用する従属項部分が互いに有機的結合関係にないとの理由で従属項全てを無効とみなしたわけである。

権利者の立場としては一つの従属項で多数の独立項を引用せず、それぞれの独立項に対する個別的な従属項を記載しておけば、進歩性がないと判断された独立項を引用する従属項だけが無効とされ、他の独立項を引用する従属項は無効とされなかった可能性もあったわけであるから、出願発明の特許請求の範囲作成時には独立項、従属項の係り受けには留意されたい。

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