知財判例データベース スターバックスの店舗での販売用音盤再生が著作権侵害に該当しないと判断した事例
基本情報
- 区分
- 著作権
- 判断主体
- ソウル中央地方法院
- 当事者
- 社団法人韓国音楽著作権協会(原告)v. 株式会社スターバックスコーヒーコリア(被告)
- 事件番号
- 2008ガ合44196
- 言い渡し日
- 2009年04月29日
- 事件の経過
- 未確認
概要
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著作権法第29条第2項での「販売用音盤」は市中で一般消費者に販売される音盤、即ち市販用音盤だけを意味するのではなく、特定多数人に代価を受けて譲渡するために製作された音盤も「販売用音盤」に含まれると言える。また、著作権法施行令第11条1号ロ目での「音楽を鑑賞させることを営業の主要内容の一部とすること」と関連して、音楽を通して売上げに肯定的な効果を得たという事情だけでは販売用音盤の再生が営業の主要内容の一部と認めるには足りない。
事実関係
原告の信託著作物が入ったCD(以下「本件CD」)を被告が自身の店舗で再生したところ、原告は信託著作権の侵害を主張して侵害差止を請求した。訴訟で原告は著作財産権の制限を規定している著作権法(以下「法」)第29条第2項の販売用音盤とは一般人らに販売される市販用だけを意味するもので、被告が使用する本件CDのような非売品はこれに該当しないため、被告には法第29条第2項の例外が適用されず、仮にこの例外が適用されても著作権法施行令(以下「施行令」)第11条1号ロ目でのように被告は本件CDを再生することによって売上げに肯定的な効果を得ているなど、音楽を鑑賞させることを営業の主要内容の一部としているので、施行令により法第29条第2項の適用が排除されるため、被告の本件CDの再生は原告の信託著作権を侵害すると主張した。
判決内容
法院は、本件CDが法第29条第2項の「販売用音盤」に該当するかどうかと関連し、(1)法第29条第2項は販売用音盤を市販用音盤だけに制限しておらず(文言解釈)、(2)立法経過を見ても市販用音盤だけに制限解釈しなければならない特別な理由はなく(歴史的解釈)、(3)法の他の規定を総合してみれば「販売」とは著作物などの代価を受けて譲渡することを意味するため(体系的解釈)、本件CDも法第29条第2項の「販売用音盤」に該当すると判断した。
また法院は、被告の本件CDの再生が施行令第11条1号ロ目の「音楽を鑑賞させることを営業の主要内容の一部とする公演」であるかどうかと関連し、被告が音楽を通して売上げに肯定的な効果を得ているという事情だけでは本件CDの再生が被告営業の主要内容の一部であると認めるに足りず、利潤を増やすために音楽を再生、鑑賞させることが営業の一部にはなっても営業の「主要」内容の一部になるとは見難いと説示した。このように法院は、被告の本件CDの再生は法第29条第2項に該当するが、施行令第11条には該当しないと見て、結局著作権侵害を否定し原告の請求を棄却した。
専門家からのアドバイス
著作財産権の制限に関する規定である法第29条第2項は世界的に立法例がまれであり、著作財産権者の権益を過度に侵害する素地があるとして改正の必要があるとの声があるのは事実である。、ただ、今のところは法令による例外規定、即ち、施行令第11条を拡大することによって著作財産権者の権益を保護していると評価される。実際に施行令第11条の他の規定をみれば、競馬場、競輪場、ゴルフ場、スキー場、旅客用航空機、ホテル、カジノ、大規模マート、デパートなどで販売用音盤を再生することに対しては著作財産権が制限されない(すなわち著作権侵害となる)と規定されており、これらの規定は法改正を通して順次追加、拡大されてきたものである。被告の本件コーヒーショップでのCD再生が施行令の他の規定(ホテル、カジノ、デパートなどでのCD再生)と特に違うところはないと思えなくはないが、法院は法令で明示的に著作財産権が制限されないものと規定した場所以外の場所に対しては単に規制外と判断したもようである。今後大法院に上告され最終判断が改めて出されるかどうかは今のところ分からないが、本判決は著作財産権の制限と関連した法第29条第2項及び施行令第11条の適用範囲に関して明示的な基準を法院が提示したところに意義があり興味深い部分である。
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