知財判例データベース 漫画漢字学習教材が自然法則を利用したもので、反復再現性があり、発明に該当すると判断した事例
基本情報
- 区分
- 特許
- 判断主体
- 特許法院
- 当事者
- 株式会社アイコニクスエンタテインメント(原告)v.株式会社book21(被告)
- 事件番号
- 2009ホ351
- 言い渡し日
- 2009年10月16日
- 事件の経過
- 上告
概要
256
本件特許発明は、漢字学習教材を使用する学習者が漫画のイメージ等を通じた効果的な漢字学習ができるように教材の本文に学習する漢字に関連する漫画のイメージをストーリーと関連を持たせて挿入し、その漢字漫画のイメージの図示面の各部分を空間的、物理的に配置または形成する構成をとっているため、これは視覚的な配置を有機的に構成して学習効果を高めることができるという自然法則を利用した発明に該当し、その技術分野は漫画及びアニメーション産業分野であるといえるので、発明の属する技術分野で通常の知識を持つ者であれば、本件発明に開示された技術的手段を利用して、本件特許発明を容易に反復実施することができるものとみられる。
事実関係
原告は漫画漢字学習教材(下図参照)に関する被告の登録特許 に対し、1)心理法則に該当するイメージ教育方法を漫画の中に挿入したもので、人間の精神的作用及び判断をその構成要素としており、自然法則を利用したものではなく、2)発明の効果は実施者の表現能力や被学習者の学習能力などのように、極めて主観的な要素の結合によって決定されるため、反復再現性がなく、3)新規性、進歩性がないという理由で登録無効審判を請求した。これに対して特許審判院が原告の審判を棄却したところ、特許法院に審決取消訴訟を提起した。
判決内容
自然法則の利用の有無に関連し、特許法院は本件特許発明を使用する学習者が漫画のイメージ等を通じた効果的な漢字学習ができるように教材の本文に学習する漢字とこれに関連する漫画のイメージをストーリーと関連を持たせて挿入し、その漢字漫画のイメージ図示面の各部分を空間的、物理的に配置または形成する構成をとっているため、これは視覚的配置を有機的に構成して学習効果を高めることができるという自然法則を利用した発明に該当し、実施者の精神的な判断がある程度作用するとしても、これは一般的な発明の実施にも要求される最小限の精神作用としての判断にすぎないと説示した。
反復再現性に関連し、特許法院は発明の実施者によって、その効果においてある程度の差が発生し得ることは他の発明の場合でも同様であり、本件特許発明に反復再現性があるかどうかを判断することにおいては、発明の実施者を本件特許発明の属する技術分野である漫画及びアニメーション産業分野の通常の知識を有する技術者とみなければならないと説示して反復再現性を認めた。ただし、特許法院は本件特許発明の新規性、進歩性が否定されるという理由で原告の請求を認容した。
専門家からのアドバイス
本件は、普通、著作物として保護されるものと認識される漫画教材が特許の対象になり得ることを示している点にその特色がある。もちろん、上記判決によって全ての漫画教材が特許発明として認められるのではなく、本件特許発明のように、視覚的な配置を有機的に構成して学習効果を高めることができる等の自然法則を利用し、漫画及びアニメーション分野の通常の技術者を基準とした反復再現性が認められなければならない。被告の上告により大法院の最終的な判断が下される予定であるが、大法院でも特許の対象となり得るという判断が下されれば、今後、漫画教材等に対する特許出願について積極的に検討してみる必要があろう。一方、本件で特許法院が自然法則として取り上げている「視覚的配置を有機的に構成して学習効果を高めることができるということ」と「反復再現性は該当技術分野の通常の技術者を基準とする」という説示は、類似発明の特許性を主張しようとする出願人にとっては積極的に援用できる判断であると考えられる。
ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム
ジェトロ・ソウル事務所 知的財産チームは、韓国の知的財産に関する各種研究、情報の収集・分析・提供、関係者に対する助言や相談、広報啓発活動、取り締まりの支援などを行っています。各種問い合わせ、相談、訪問をご希望の方はご連絡ください。
担当者:大塚、李(イ)、半田(いずれも日本語可)
E-mail:kos-jetroipr@jetro.go.jp
Tel :+82-2-3210-0195