知財判例データベース 2人以上が共同で提起した特許無効審判の場合、審判請求人の間に合一確定が必要であると判断した事例

基本情報

区分
特許
判断主体
大法院
当事者
○○(原告)v.○○(被告)
事件番号
2007フ1510
言い渡し日
2009年05月28日
事件の経過
破棄差し戻し

概要

244

特許を無効にするという審決が確定した時には当該特許は第三者との関係でも無効となるため、同一の特許権に関して2人以上の者が共同で特許の無効審判を請求する場合、その審判は審判請求人の間で合一確定を必要とするいわゆる類似必要的共同審判に該当し、当初請求人が共同で特許発明の無効審判を請求した以上、請求人は類似必要的共同審判関係にあるため、たとえ上記の審判事件で敗訴した特許権者が共同審判請求人のうち一部だけを相手に審決取消訴訟を提起したとしても、その審決は請求人全部に対して全て確定が遮断され、審決取消訴訟が提起されなかった残りの請求人に対する提訴期間の経過により審決のうちのその残りの請求人の審判請求に対する部分だけがそのまま分離・確定されるものではない。

事実関係

被告と訴外株式会社は共同で「テーパーローラーベアリング用リテーナ製造装置に適用される反転装置」という原告の特許発明(以下「本件特許発明」)に対し無効審判を請求し請求認容審決を受けた。これに対して原告は、共同審判請求人のうち、被告だけを相手取って審決取消訴訟を提起したが、提訴期間が経過した後になって訴外株式会社を当事者に追加する当事者追加申請をした。これに対して原審は共同で請求された無効審判の審決に対する取消訴訟は欠落した当事者の追加を申請できる固有必要的共同訴訟でないため、当事者追加申請は不適法であり、その結果、訴外株式会社に対する部分に関しては提訴期間が経過したことにより無効審決が確定したため、本件訴えは訴えの利益がなく不適法であると判断し却下した。これに対して原告は大法院に上告を提起した。

判決内容

法院は2人以上の者が共同で特許無効審判を請求し勝訴した場合に特許権者が提起する審決取消訴訟は、審判請求人全員を相手に提起しなければならない固有必要的共同訴訟ではないため、原告の当事者追加申請は許容されないと原審と同一の判断をした。

しかし、特許を無効にするという審決が確定した時には当該特許は第三者との関係でも無効になるものであるため、一つの特許権に関して2人以上の者が共同で特許の無効審判を請求する場合、その審判は審判請求人の間に合一確定のみを必要とするいわゆる類似必要的共同審判に該当すると判示した後、本件で原告が共同審判請求人のうち、訴外株式会社を除外した被告だけを相手に審決取消訴訟を提起したとしても、その審決は被告と訴外株式会社に対して共に確定が遮断されるのであって、訴外株式会社に対する提訴期間の経過により審決中の訴外株式会社の審判請求に対する部分だけがそのまま分離して無効確定となったわけではないと判断した。これにより法院は必要的共同審判に関する法理誤解を理由として原審を破棄差し戻しした。

専門家からのアドバイス

複数の出願人による共同出願の拒絶査定不服審判請求は、「複数の出願人全員によらなければならず(固有必要的共同訴訟の考え方)」、この不服審判でも特許が受け入れられなかった場合に出願人側が提起する審決取消訴訟は、「複数出願人中の一部だけでも提起できる(類似必要的共同訴訟の考え方)」というのが現在の韓国、日本における特許実務である。ただし、このような査定系審判のケースでなく、共有の特許権への無効審判や権利範囲確認審判などの当事者系審判に対する審決取消訴訟、または逆に一つの特許権への複数の請求人が共同して行なった当事者系審判に対する審決取消訴訟については事例があまり多くなく、法理的解釈にも多少ゆらぎがあるのが実情である。

原審である特許法院が示した「審決取消訴訟の当事者から除外された訴外株式会社の勝訴審決部分が確定しているからすでに特許は無効となっており、よってこの審決を取消す訴訟の実益がない」という考え方も一部肯定論がなくはないようであるが、大法院は、本件において「共同で請求された無効審判自体が類似必要的共同審判である」と言い切り、被告のみを名宛人として審決取消訴訟が提起されたことによって当該特許の無効が確定しないこととなった効果は訴外株式会社にも拡張されるから、当該特許権を無効とした審決が妥当であるかどうかを改めて特許法院で判断すべきであると差し戻した。 別個の無効審判ではなく共同でなされた一つの無効審判であるのに、申請人の一部には無効確定が保留され残りの申請人の部分は無効が確定したという考え方はやはり無理があろうし、手続上の瑕疵による司法判断の機会逸失を防ぎ授権者を保護救済するという側面でも妥当な判断であると言えよう。

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