知財判例データベース 著名な商品標識又は営業標識が持つ識別力の損傷又は名声の損傷程度に関して判断した事例

基本情報

区分
不正競争
判断主体
大田地方法院
当事者
バーバリーリミッテッド(原告)v.○○(被告)
事件番号
2009ガ合9489
言い渡し日
2009年12月18日
事件の経過
上訴

概要

269

不正競争防止法は、第2条第1号ハ目[1]で定めた不正競争行為が成立するためには単純な抽象的な脅威の発生だけでは十分でなく、識別力損傷又は名声損傷という具体的な結果が客観的に存在するか、そうでないとしてもそのような可能性が極めて大きな場合でなければならないと言え、単に有名商標と同一・類似の商品標識又は営業標識を使用した事実があるからといって他人の標識の識別力や名声の損傷という結果又はその可能性を推定するものではない。

事実関係

衣類、かばんなどに関する「BURBERRY」、「バーバリー」商標の登録権利者である原告は、被告が「バーバリー歌」という商号でカラオケ営業をしたところ、被告のこのような行為は原告の商品標識又は営業標識が持つ識別力と名声を損傷させる不正競争行為に該当するとし、不正競争防止法第2条第1号ハ目を根拠に被告が使用する標識の使用禁止及び損害賠償を請求した。

判決内容

法院はまず原告の登録商標が周知の程度を越えて著名な程度に至り、被告が使用した商号は原告の登録商標と類似しているとの点を認めた。次に法院は被告の行為により原告の商品標識又は営業標識が持つ識別力及び名声が損傷されたかどうかに関連して、不正競争防止法第2条第1号ハ目で定めた不正競争行為が成立するためには、単純な抽象的危険の発生だけでは十分でなく、識別力損傷又は名声損傷という具体的な結果が客観的に存在するか、そうでないとしてもそのような可能性が極めて大きい場合でなければならないと言えるところ、単に有名商標と同一・類似の商品標識又は営業標識を使用した事実があったからといって他人の標識の識別力や名声の損傷という結果又はその可能性を推定するものではなく当該標識の使用が不正競争行為に該当すると主張する者はそのような使用により実際に自身の標識の識別力や名声が損傷されたという結果又はその可能性に関して別途の主張・立証をしなければならないと判示し、原告がそのような主張と立証を果たさなかったことを理由に原告の請求を棄却した。

専門家からのアドバイス

周知・著名な他人の商品標識又は営業標識を商号などで使用し他人の商品標識又は営業標識が持つ名声や識別力に便乗しようとする事例は普段の生活の中でも目にすることが多い。万一、このような行為をそのまま放置すれば他人の商品標識などが持つ価値は維持され難く、このような理由で不正競争防止法はそうのような行為を不正競争行為の一つとして規定し禁止している。ところが、実務ではどの程度に至れば「商品標識などが持つ識別力や名声が損傷された」と認められるのかが度々問題となっており、本件について一審の地方法院は単純な抽象的な脅威の発生だけでは十分でなく、具体的な結果が客観的に存在するか、そのような可能性が極めて大きくなければならないという厳格な態度を取っている。しかし、このような厳格な態度に対しては、商標権には対世効のある排他的独占権が認められている点などを考慮すれば「識別力や名声の損傷可能性」だけで充分であるという反対意見が存在しているのも事実であり、これに関する上級法院の判断が注目される。

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