知財判例データベース 利用関係は特許発明と均等な発明を利用する場合でも成立すると判示した事例

基本情報

区分
特許
判断主体
特許法院
当事者
株式会社ヘイチティー(原告)v. 株式会社ヒュビット(被告)
事件番号
2009ホ2364
言い渡し日
2009年12月18日
事件の経過
未確認

概要

262

特許発明と確認対象発明が利用関係にある場合には、確認対象発明は特許発明の権利範囲に属するのであり、このような利用関係は確認対象発明が特許発明の技術的構成とは違う新しい技術的要素が付加されたものであって、確認対象発明が特許発明の技術内容を全て含んでこれをそのまま利用していると共に確認対象発明内で特許発明が発明としての一体性を維持している場合に成立するものであり、これは特許発明と同一の発明だけでなく均等な発明を利用する場合も同様である。

事実関係

被告は、発明の名称が「歯牙矯正用ブラケット」である原告の本件特許発明に対し自身の実施発明が権利範囲に属さないという消極的権利範囲確認審判を提起した。特許審判院では、被告の確認対象発明は本件特許発明と目的、構成、効果が相違するという理由で被告の請求を認容したところ、原告は被告の確認対象発明が本件特許発明と均等関係にある発明を利用していると主張し、特許法院に審決取消訴訟を提起した。

判決内容

特許法院は、特許発明と確認対象発明が利用関係にある場合に確認対象発明は特許発明の権利範囲に属するのであり、このような利用関係は、確認対象発明に特許発明の技術的構成とは違う新しい技術的要素が加わったものであって、確認対象発明が特許発明の技術内容を全て含んでこれをそのまま利用していると共に確認対象発明内で特許発明が発明としての一体性を維持している場合に成立するものであり、これは特許発明と同一の発明だけでなく均等な発明を利用する場合にも同様であると判示した。そして、被告の確認対象発明においては本件特許発明と一部作業工程の順序が異なっているとしても、そのような変更によっても両発明は課題解決の原理が同一であり、実質的に同一の機能、作用、効果を示し、このような変更は該当技術分野で通常の知識を有する技術者が容易に想到する程度に自明であるという理由によりこのような差は均等の範疇内にあるものに過ぎないと判断した。よって特許法院は、均等関係にないという被告の主張を排斥し、原告の請求を認容した。

専門家からのアドバイス

特許発明を侵害している者、特に特許発明に対し消極的権利範囲確認審判を請求している者は、特別な事情がない限り自身が実施する確認対象発明の構成が特許発明の構成とは少し相違するよう変更したり一部構成が追加されていると主張するのが一般的である。本件で特許法院は、このような変更・追加にもかかわらず、特許発明の権利範囲に属すると言うためには均等の概念が適用される必要があり、確認対象発明が特許発明と均等な発明を利用した場合でも利用関係が成立し、このような確認対象発明は特許権の権利範囲に属すると示している。原告・被告の主張が実際にどのように交わされたのかによって判決文の書き振りも変わってくることもあり得るが、利用関係の有無を特に持ち込まずとも確認対象発明と本件特許発明との均等関係の存否と権利範囲の属否について判断しても同じ結論となろう。

いずれにしても、先行特許発明を回避しようとする確認対象発明の実施者としては自身の確認対象発明が先行技術の均等の範疇に含まれるかどうか、特許発明に付随的な付加物を追加しただけなのか、特許発明の本質的な要素が異なっているのかどうかまで綿密に検討した後、慎重に消極的権利範囲確認審判を提起することが必要であると言えよう。

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