知財判例データベース 方法の発明と特許権消尽に関して判断した事例
基本情報
- 区分
- 特許
- 判断主体
- 特許法院
- 当事者
- ○○他1人(原告)v.○○(被告)
- 事件番号
- 2008ホ13299
- 言い渡し日
- 2009年12月18日
- 事件の経過
- 上告
概要
264
方法の発明に対する特許権者が国内でその方法の実施にのみ使用する物を譲渡した場合、特許権は消尽され、これは特別な事情がない限り物の譲渡が契約による場合だけでなく競売手続きによる場合でも同様である。しかし、方法の発明に対する特許権が共有である場合においては、国内でその方法の実施にのみ使われる物が譲渡されたとしても、その物が共有者のうち、一部の所有であり、その所有者でない他の共有者がその物の譲渡に対し同意したところがなければ、譲受人又は転得者がその物を利用し該当方法発明を実施することと関連して特許権は消尽されない。
事実関係
原告らは被告が実施している確認対象発明が、自身が共有している「血粉飼料製造方法」に関する特許(以下「本件特許」)の権利範囲に属するとして積極的権利範囲確認審判を請求した。これに対して特許審判院は被告の確認対象発明が本件特許と同一又は均等範囲に属すると判断しながらも、原告らの特許権は被告が実施している確認対象発明に対する関係において既に消尽されたものとして原告らの請求を棄却した。これに対し、原告らは審決取消訴訟を提起したところ、被告は自身が使用している飼料製造設備は本件特許の実施にのみ使われるものであって本件特許の共有特許権者のうち、1人が所有していたものを譲り受けたものであるため、本件特許権は被告がその設備を利用し確認対象発明を実施することと関連しては既に消尽されたものであると再度主張して争った。
判決内容
法院は被告の確認対象発明が本件特許発明と同一又は均等の範囲に属するという点では特許審判院と結論を共にしたが、特許権が消尽されたという被告の主張に対しては相違する判断を下した。
具体的に法院は方法の発明に対する特許権者が国内でその方法の実施にのみ使用する物を譲渡した場合、譲受人及びその転得者は上記の物を利用し特許対象方法を使用できることを前提に物を譲り受けるものであり、特許権者は該当物を譲渡するとき、特許の実施代価を含んで物の譲渡価額を決定できる点等に照らして譲受人又は転得者がその物を利用し該当方法発明を実施することと関連しては、特許権が消尽されると説示した。しかし、法院は方法の発明が共有である場合には国内でその方法の実施にのみ使われる物が譲渡されたとしてもその物が共有者中の一部の者の所有で、その所有者でない他の共有者がその物の譲渡に対して同意をしたところがなければ、譲受人又は転得者がその物を利用し該当方法発明を実施することと関連しては特許権が消尽されないと判断した。
法院はその理由について、共有特許権者は特許発明を原則的に自由に実施できるという特許法の規定が方法特許の実施にのみ使われる物を製造、販売することによって他の共有者の特許権を減少させる程度まで各共有者の特許実施権を保障する規定であるとは言えない点、特許法は特許権共有者の利益を保護するために特許権が共有である場合に各共有者は他の共有者の同意を得なければその持分を譲渡したりその持分を目的とする質権を設定できず、その特許権に対して専用実施権を設定したり通常実施権を許諾することができないと規定しているところ、万一方法の発明において特許権の共有者のうちの一部の所有者の物がその所有者でない他の共有者の同意なしに譲渡された場合でも、その物が方法特許の実施にだけ使われる物であるとして特許権が消尽されるとすれば、実質的に各共有者が他の共有者の同意を得なくても実施権を許諾できるような結果がもたらされるという点などを挙げた。法院はこのような判断を基礎として、本件で被告に譲渡された飼料製造設備の所有者でなかった他の公有権者の同意があったことを認める証拠がないとして、特許権が消尽されたという被告の主張を排斥した。
専門家からのアドバイス
特許消尽理論は基本的に方法の発明にも適用され得るのであるが、本件のように方法発明の実施にのみ使われる物が譲渡された場合や特に特許権が共有である場合にも何らの制約なしに特許が消尽されるべきであると見られるかは本件で特許審判院と法院の結論が相違することから分かるようにその解釈は様々となり得るであろう。しかし、本件で法院が判示した通り、共有特許権において共有者のうちの1人が所有していた、方法発明の実施にのみ使われる物(飼料製造設備)が他の共有者の同意なしに一方的に譲渡された場合にまで特許権が消尽されるというのは、共有特許権に対する実施権設定時の特約がない限り他の共有者の同意が必要であると規定した特許法の趣旨を没却させる点などを考慮すれば、特許権は消尽されないと見ることがやはり妥当で無理のない解釈となろう。これに対してはまだ大法院の判断が残っているが、本件における法院の判断は今後方法発明の共有特許権の消尽に関する紛争で重要な基準になると思われる。
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