知財判例データベース 均等論の適用要件として「両発明で課題の解決原理が同一であること」の意味と判断方法に関して説示した事例

基本情報

区分
特許
判断主体
大法院
当事者
株式会社韓国オゾンテック(原告)v. 株式会社セアイエヌシー(被告)
事件番号
2007フ3806
言い渡し日
2009年06月25日
事件の経過
破棄差し戻し

概要

248

確認対象発明が特許発明の権利範囲に属すると見るための要件として「両発明で課題の解決原理が同一である」ということは、確認対象発明の置換可能な構成が特許発明の非本質的な部分であるが故に確認対象発明が特許発明の特徴的構成を有しているということを意味し、特許発明の特徴的構成を把握する際には、特許請求範囲に記載された構成の一部を形式的に抽出するのではなく、明細書の発明の詳細な説明の記載と出願当時の公知技術などを参酌した上で、先行技術と対比してみて、特許発明の特有な解決手段が基礎としている課題の解決原理が何であるかを実質的に探求して判断しなければならない。

事実関係

被告は自身の実施品は「多数の紫外線ランプを具備する水処理装置」に関する原告の登録特許の権利範囲に属さないという消極的権利範囲確認審判を提起し、特許審判院はこれを認容する審決を下した。しかし、原告が提起した審決取消訴訟で特許法院は、原告の特許発明は従来の技術とは異なり、独立したオゾン発生機を設置しなくても水処理装置内の紫外線ランプで生成されるオゾンガスなどを活用して水を殺菌、浄化処理することを核心的な技術思想としており、確認対象発明もこのような点は同一であるため、確認対象発明は本件特許発明の特徴的な技術思想又は課題の解決原理をそのまま利用していると判断した。また、特許法院は、本件特許発明のうち「第1壁構成」は一つの水処理装置内に水及びオゾンガスを混合する空間と紫外線ランプが設置された空間とが一体となっている反面、確認対象発明は水とオゾンガスを混合する装置(ベンチュリインジェクター及び混合機)が紫外線ランプが設置された反応タンクと離隔されて設置されているという差があるが、確認対象発明の反応タンクの外壁構成が水及びオゾンが混合される空間と紫外線ランプが設置された空間との間を区画しており、水が紫外線ランプモジュールの設置された所へ移動できるように通路を具備している点においては、本件特許発明の「第1壁構成」と機能上特別な差がなく、このような差は通常の技術者が適宜選択できるものとしてその選択による作用効果も十分に予見できる均等関係にあるため、被告の確認対象発明は本件特許の権利範囲に属するという判決を下した。これに対して被告は大法院に上告を提起した。

判決内容

大法院は均等論の適用において発明の課題解決原理が同一であるということは、確認対象発明の置換可能な構成が特許発明の非本質的な部分であるが故に確認対象発明が特許発明の特徴的構成を有しているということを意味し、特許発明の特徴的な構成については、特許発明の特有な解決手段が基礎としている課題の解決原理が何であるかを実質的に探求し判断しなければならないと説示した後、本件で確認対象発明の「ベンチュリインジェクター及び混合機 」と「反応タンクの外壁 」は本件特許発明の「第1パイプ 」と「第1壁 」をそれぞれ置換若しくは変更したものであって同一の構成ではないと判断した。

さらに、大法院は本件特許発明の上記の構成要素は、水処理装置の内部を壁によりそれぞれの空間として区画して処理しなければならない水が、壁に形成された通路を通してそれぞれの空間の間を移動するようにする解決原理に基づいたものであって、これは水とオゾンとを混合する方式として「ディフューザー(Diffuser)方式」を採用したことにより選択された特有の解決手段である反面、確認対象発明の上記の如く置換可能な構成要素は、反応タンクの外部で別途に水とオゾンとを混合するようになっている「ベンチュリインジェクター(Venturi Injector)方式」を採用することに伴うものであるため、確認対象発明は本件特許発明の特徴的構成をそのまま持っておらず、その課題解決原理が同一であるとは言えないと判断した。よって大法院は原審が均等論に関する法理などを誤解したとして原審を破棄差戻しとした。

専門家からのアドバイス

大法院は均等論の適用において発明の課題解決原理が同一であるということは、確認対象発明の置換可能な構成が特許発明の非本質的な部分であるが故に確認対象発明が特許発明の特徴的構成を有しているということを意味し、特許発明の特徴的な構成については、特許発明の特有な解決手段が基礎としている課題の解決原理が何であるかを実質的に探求し判断しなければならないと説示した後、本件で確認対象発明の「ベンチュリインジェクター及び混合機 」と「反応タンクの外壁 」は本件特許発明の「第1パイプ 」と「第1壁 」をそれぞれ置換若しくは変更したものであって同一の構成ではないと判断した。 さらに、大法院は本件特許発明の上記の構成要素は、水処理装置の内部を壁によりそれぞれの空間として区画して処理しなければならない水が、壁に形成された通路を通してそれぞれの空間の間を移動するようにする解決原理に基づいたものであって、これは水とオゾンとを混合する方式として「ディフューザー(Diffuser)方式」を採用したことにより選択された特有の解決手段である反面、確認対象発明の上記の如く置換可能な構成要素は、反応タンクの外部で別途に水とオゾンとを混合するようになっている「ベンチュリインジェクター(Venturi Injector)方式」を採用することに伴うものであるため、確認対象発明は本件特許発明の特徴的構成をそのまま持っておらず、その課題解決原理が同一であるとは言えないと判断した。よって大法院は原審が均等論に関する法理などを誤解したとして原審を破棄差戻しとした。

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