知財判例データベース 代理人不当登録に関する規定を回避するために、代理店などの名義者とその名義を違えて登録された商標の登録を取り消した事例

基本情報

区分
商標
判断主体
特許法院
当事者
○○(原告)v. スノーデン株式会社(被告)
事件番号
2008ホ12548
言い渡し日
2009年04月30日
事件の経過
未確認

概要

242

商標法第23条第1項3号の本文で言う「代理人若しくは代表者」とは、一般的に国外にいる商標に関する権利を有する者のその商品を輸入し販売・広告する代理店、特約店、委託販売業者、総代理店などを示すものであるところ、契約により代理店などとなった者と商標登録をした者が異なる場合であっても両者の関係、営業形態、代理店など契約の締結経緯及び以後の経過、登録商標の登録経緯、標章及び指定商品の関連性、商標使用の方法など諸般の事情に照らして、上記の商標法規定の適用を不当に回避するための便宜的、形式的なものに過ぎないと認められるときは、両者は実質的に同一人と見なければならないので、その商標登録名義者も上記の規定の「代理人若しくは代表者」に該当するとみなさなければならない。

事実関係

被告は、訴外会社の代表理事である甲との間でこの訴外会社を被告が製造した商品の韓国内独占販売権者とする内容の契約を締結し、甲はその直後、自身の配偶者である原告をこの訴外会社の代表理事とした。訴外会社は上記の契約が解約となる直前まで被告から商品を輸入し韓国内で販売、広告していたが、契約締結直後に被告の日本登録商標の標章及び指定商品と同一・類似の商標(以下「本件登録商標」とする)を原告(すなわち甲の配偶者)の名義で出願して登録を受けていた。これに対して被告は、商標法第23条第1項3号の代理人不当登録に関する規定を根拠に本件登録商標に対して取消審判を請求し、特許審判院は被告の請求を認容する審決を下したところ、原告は審決取消訴訟を提起し、本件登録商標の名義者は原告であり、被告との関係において代理人若しくは代表者の地位にいる者は訴外会社であるから、原告が代理人不当登録に関する規定における「代理人又は代表者」とみなすことができるかについて争われた。

判決内容

法院は、契約により代理店若しくは代表者となった者と商標登録をした者が異なる場合であっても両者の関係、営業形態、代理店など契約の締結経緯及び以後の経過、登録商標の登録経緯、標章及び指定商品の関連性、商標使用の方法など諸般の事情に照らして、商標登録名義者を代理店若しくは代表者となった者とは異ならせたことが、商標法規定の適用を不当に回避するための便宜的・形式的なものに過ぎないと認められるときは上記の規定を適用することにおいて両者は実質的に同一人とみるべきであるため、その商標登録の名義者も上記規定の「代理人若しくは代表者」に該当すると説示し、原告は訴外会社の代表理事である上にその契約を直接締結した甲の配偶者として甲と共に実質的にこの訴外会社を運営している点、本件登録商標と被告の日本登録商標の標章及び指定商品が同一・類似である点等に照らして、原告は被告との関係における代理人若しくは代表者に該当するとして原告の請求を棄却した。

専門家からのアドバイス

代理人不当登録に関する商標法の規定はパリ協約第6条の7規定を反映したもので、公正な国際取引を確立するために一定の範囲内で属地主義に対する例外を認めたものである。このような代理人不当登録に関する事案は実務上たびたび問題になり、特にその適用要件の中で「代理人若しくは代表者」の範囲をどのようにすべきかがよく争われている。

以前の大法院判例で、代理人不当登録に関する規定を回避するために法人を便宜上・形式的に設立したという特別な証拠などがない限り、契約当事者(代理店など)の実質的支配を受ける関係にある子会社であるという事情だけではこの子会社が直ちに代理人としての地位を持つわけではないと判示したところがある(大法院2003年4月8日言渡2001フ2146判決)。このケースは結局、正当な商標権者と子会社の間でも契約上の代理人の関係が成立するとして商標登録取消事由があると判断されたが、代理人不当登録に関する規定の回避に該当するかどうかについては言及されなかった。

本件判決は、本件登録商標が原告の名義で登録されたことは代理人不当登録に関する規定を回避するための便宜的・形式的なものであったという点を明示上の根拠として契約当事者でない原告を上記規定上の代理人に該当すると判断して、本件登録商標を登録取消することによって正当な権利者を積極的に保護しており、この点で非常に意義のあるものである。

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