知財判例データベース 請求項に機能的表現と共にその機能を達成するための技術的構成が共に記載されている請求範囲の解釈方法について説示した事例
基本情報
- 区分
- 実用
- 判断主体
- 特許法院
- 当事者
- ○○(原告)v.○○(被告)
- 事件番号
- 2007ホ10484
- 言い渡し日
- 2008年05月08日
- 事件の経過
- 上告
概要
204
請求項の構成要素が機能的表現を含んでいるとしても、その機能を達成するのに必要な技術的構成が共に記載されており、その技術分野における通常の知識を有する者が請求項の記載のみで当該構成要素の技術的構成を明確に理解することができるのであれば、請求項に含まれた機能的表現は技術的構成を機能的な面で説明するための付加的な部分に過ぎないので、当該構成要素は請求項に記載された技術的構成自体に基づいて解釈されるべきであり、考案の詳細な説明に記載された内容のみにさらに限定して解釈されてはならない。
事実関係
被告らは、「錠用ブラケット」に関する実用新案権を有している原告を相手取って自らが生産している「強化ガラスドア用施錠装置」(以下「確認対象考案」とする)が原告の登録考案(以下「本件登録考案」とする)の権利範囲に属さないという消極的権利範囲確認審判を請求し、特許審判院から権利範囲に属さないという認容審決を受けた。これに対して原告が審決取消訴訟を提起し、確認対象考案は本件登録考案と技術的構成が同一、または均等であるので権利範囲に属するという主張をしたところ、被告は機能的に表現された本件登録考案の一部構成要素は、発明の詳細な説明により限定解釈されるべきだとして、争った。
判決内容
法院は、被告が本件登録考案の構成要素3が請求項にて機能的表現で記載されているので、発明の詳細な説明に記載された内容によって限定して解釈されると主張した点に対し、請求項の構成要素が機能的表現を含んでいるとしても、その機能を達成するのに必要な技術的構成が共に記載されていて、その技術分野における通常の知識を有する者が請求項の記載のみでも当該構成要素の技術的構成を明確に理解することができるのならば、請求項に含まれた機能的表現は技術的構成を機能的な面で説明するための付加的部分に過ぎないので、当該構成要素は請求項に記載された技術的構成自体に基づいて解釈されなければならず、考案の詳細な説明に記載された内容のみにさらに限定して解釈されてはならないと説示し、本件登録考案の請求項に記載された構成要素3(錠が設置できるようにその錠に形成された複数の貫通孔にそれぞれ対応する位置に第2貫通孔が形成された装着部)の場合、装着部の機能以外にその技術的構成が共に記載されているので、その技術分野における通常の知識を有する者は上記のような請求項の記載によりその技術的構成を明確に理解することができるとして、これに関する被告の主張を排斥した後、確認対象考案が本件登録考案の権利範囲に属するという判断をした。
専門家からのアドバイス
特許請求の範囲を作成するにあたって、機能的表現を使用せざるをえない不可避な場合が度々発生することがある。ところが、このような機能的表現により特許請求の範囲が不明確になる場合があり、実務上、請求項の機能的表現はそのような記載によっても発明の構成が全体として明瞭であると認められる場合にのみ許容されている。このように機能的表現で記載された請求項を持つ発明が登録された後、その権利範囲の解釈に関連し、従来、法院は、出願人が公衆に公開していない部分まで独占権を付与することは適切ではない点を考慮して「請求項に記載された機能を遂行する全ての構成を含むのではなく、請求項の記載と発明の詳細な説明及び図面によって明確に確定することのできる構成のみを含むことに限定して解釈しなければならない」と判示している(特許法院2006年11月23日言渡2005ホ7354判決)。本件で被告は上記のような特許法院の事例を念頭におき、本件登録考案も機能的表現を使用しているのでその権利範囲が詳細に説明された内容に限定して解釈されなければならないと主張したが、本件登録考案の請求範囲には機能的表現以外にむしろ当業者が容易に理解できる技術的構成が主として記載されており、純粋に機能的表現のみで記載された特許請求の範囲に対する解釈を本事案にそのまま当てはめることは無理があると考えられる。
ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム
ジェトロ・ソウル事務所 知的財産チームは、韓国の知的財産に関する各種研究、情報の収集・分析・提供、関係者に対する助言や相談、広報啓発活動、取り締まりの支援などを行っています。各種問い合わせ、相談、訪問をご希望の方はご連絡ください。
担当者:大塚、李(イ)、半田(いずれも日本語可)
E-mail:kos-jetroipr@jetro.go.jp
Tel :+82-2-3210-0195