知財判例データベース キャラクターとして広く知られた先登録商標が外国で他人の商品を表示する商標と顕著に認識されたものと判断した事例
基本情報
- 区分
- 商標
- 判断主体
- 特許法院
- 当事者
- ターナーエンターテイメント(原告)v. 株式会社ティージェイクラブ(被告)
- 事件番号
- 2007ホ11708
- 言い渡し日
- 2008年05月28日
- 事件の経過
- 上告
概要
209
旧商標法第7条第1項第12号[1]は、国内又は外国の需要者間に特定人の商標であると顕著に認識されている商標が国内では登録されていないことをいいことに、第三者がこれを模倣した商標を登録して使用することにより、周知商標に化体された営業上の信用や顧客吸引力などの無形の価値に損傷を加えたり、周知商標権者の国内での営業を妨害する等の方法で周知商標権者に損害を加えたり、このような模倣商標を利用して不当な利益を得る目的で使用する商標はその登録を許容しないという趣旨を有するものであるが、ここで特定人の商標が周知商標に該当するかどうかは、その商標の使用期間、方法、態様及び利用範囲などと取引実情又は社会通念上客観的に広く知られているかどうかなどが基準となり、これは登録商標の出願当時を基準にして判断しなければならない。
事実関係
被告は本件登録商標( )の韓国の商標権者であり、原告は先使用商標( )に対する外国の商標権者である。被告が、原告と商標使用契約を締結し先使用商標を使用している企業に商標使用中止などを要求したところ、原告は被告の本件登録商標が商標法第7条第1項第12号に違反し無効であると主張して登録無効審判を提起した。しかし、特許審判院は原告の先使用標章が漫画映画のキャラクター又はその名称として世界各国に広く知られた標章であることは認められるが、商品の識別標識として使用することによって特定人の商標と知られた標章とは見難いという理由などにより原告の請求を棄却した。これに対して原告は自らの先使用商標は周知商標に該当するとして審決取消訴訟を提起した。
判決内容
法院は、先使用商標が漫画映画のキャラクターとして広く知られた事実、これに関し原告が全世界的に450個余りの商標権を保有し、数千の企業とキャラクター使用契約を締結している事実、それによる使用料収入など売上げ規模が相当な規模に達している事実などを確認した後、キャラクターの周知程度、先使用商標の使用期間、使用方法や態様、使用商品の種類と売上げ規模などに照らして先使用商標は本件登録商標の出願当時に既に米国又は日本で特定人の商品を表示するものと顕著に認識されている商標であると判断した。
法院はさらに加えて、原告が提出した製品写真の大部分にその製造日や販売日が記載されていないとしても、各国のライセンシーがキャラクターを使用するために原告側とライセンス契約を締結し、毎年ライセンス料を原告側に支払った事実が認められるため、キャラクターや文字となった先使用商標が該当商品に使われたということが推測でき、また上記の製品に表示された文字やキャラクターがデザインとして使われたのも相当数あることを否定することはできないものの、キャラクターがデザインとして使われたからと言って、必ずしも製品の出処を表示する商標として使われたものでないとは言えず、上記の製品に表示された文字やキャラクターの表示方法、程度などに照らしてみればこれはデザインとしての機能と商品出処表示としての機能を共にしていると判示した。
専門家からのアドバイス
キャラクター商標の周知著名性と関連し、これまで大法院は「キャラクター自体が広く知られているとしてもそういう事情だけで直ちに先使用標章が一般需要者や取引者らに特定人の商標として広く認識されているとは見難い」と判示し、周知著名なキャラクターでも商標としての周知著名性が認められるためには該当キャラクターが商品化活動などを通し商標としても広く知られているという点を別途に立証しなければならないという点を示してきた。本判決の判断対象になったトムアンドジェリーのキャラクター商標は、大法院2000年5月30日言渡98フ843判決の事案で92年末頃を基準とする国内での周知性が問題になったところがあるが、この時には証拠不足により国内の周知性が認められなかった。ところが、本事案ではトムアンドジェリーのキャラクター商標と関連した商品化事業実績などに関する証拠が多数提出されたことにより、法院は特定人の商標として様々な商品に使われ商品出所表示機能を十分に果たしていることを認めたのである。特許法院は、トムアンドジェリーのキャラクター商標としての周知性を判断すると共にキャラクターデザイン自体の周知性も合わせて考察し、デザインとしての機能と共に商品出処表示としての機能も同時に有すると判断したわけであるが、周知著名なキャラクターを利用した商標に関してキャラクターの特性を考慮し具体的妥当性を有する現実的な結論を下したという点に注目したい。
注記
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「国内又は外国の需要者間に特定人の商品を表示するものであると顕著に認識されている商標(地理的表示を除外する)と同一又は類似の商標であって、不当な利益を得ようとしたりその特定人に損害を加えようとする等、不正な目的を持って使用する商標」を不登録事由と規定している。ただし、現在商標法では「顕著に」という文句が削除された。
ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム
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