知財判例データベース カテゴリーの異なる構成を付加する補正が特許請求範囲の実質的変更に該当しないと説示した事例
基本情報
- 区分
- 特許
- 判断主体
- 特許法院
- 当事者
- NHN(原告)v. 特許庁長(被告)
- 事件番号
- 2007ホ7495
- 言い渡し日
- 2008年07月10日
- 事件の経過
- 未確認
概要
207
明細書に記載された範囲内で方法の発明に属する独立項の従属項に記載された内容をその独立項に追加する補正が実質的な変更ではないものと許容されるのであれば、その方法の発明に関する補正前の独立項に記載された内容をコンピュータプログラムとしてそのまま具現したシステム発明(物の発明)項であるもう一つの請求項に同一の内容の補正事項を追加する補正も許容されなければならない。
事実関係
「検索者の検索要請に応答して検索目録を生成し、検索語広告を提供する方法及びシステム」に関する出願発明に対し審査官が拒絶決定をしたところ、原告は方法に関する独立項第1、2項の従属項である第5項を削除すると共に第5項の内容(以下「本件補正事項」とする)を第1、2項に付加し、さらに補正前の独立項第1、2項の内容をコンピュータプログラムとしてそのまま具現したシステムに関する発明である独立項第9、10項に第5項の技術的構成を付加する補正をしつつ拒絶決定不服審判を請求した。これに対して、特許審判院は、方法の発明である請求項第5項の内容を物の発明である第9、10項に付加する補正は特許請求の範囲を実質的に変更したものとして補正却下決定をし、原告は審決取消訴訟を提起してこれを争った。
判決内容
法院は、請求項第9、10項の補正は補正前の請求項第9、10項に本件補正事項を付加したもので特許請求の範囲を縮小した場合に該当すると言え、本件出願発明の明細書には本件補正事項の技術内容がそのまま記載されていて、本件補正事項が付加された補正後の請求項第9、10項は明細書になかった技術的事項を新規に追加したものではなく、また、補正後の請求項第1、2項は実質的に補正前の請求項第5項と同じであり、補正前の請求項第9、10項は検索語広告提供方法に関する補正前の請求項第1、2項を手段で構成されたシステムという側面で表現を変えたものに過ぎないため、たとえ形式的にはその縮小される対象である特許請求の範囲が補正前後で変わったとしてもその特許請求の範囲の実質的な内容は同一であると判断した。
さらに法院は、特許審判院が本件補正事項を付加した方法の発明である請求項第1、2項に対しては補正却下決定をせず、本件補正事項を同様に付加した物の発明である請求項第9、10項に対しては補正却下決定をしたことと関連して、本件のように方法の発明に属する独立項である補正前の請求項第1、2項に従属項である請求項第5項の内容を追加する補正をすると共に、補正前の請求項第1、2項の内容をコンピュータプログラムでそのまま具現したシステム発明項である補正前の請求項第9、10項に同一内容の補正事項を追加する補正をした場合には、たとえ補正の許否によって補正前後の請求項第9、10項の進歩性有無に対する判断に差はあり得るとしても、このような進歩性有無の判断の差は補正前の請求項第1、2項と第5項を統合整理することにおいても同じことであり、補正前の請求項第1、2項と第5項を統合整理する過程で当然に予想できる範囲内であると言え、それにより審査業務の負担が増加したり第三者に対する不測の損害を加える危険性が高くなるものでもないため、許容されるべきであると判示した。
専門家からのアドバイス
コンピュータシステムが関連されている方法発明は、大部分その方法の内容をそのままコンピュータプログラムで具現するシステム発明を伴うことが多く、この両発明はカテゴリーが異なるだけで各請求項の実質的な内容は同一であると言える。この場合、方法の発明に対する従属項を削除しその内容をそのまま方法の発明に関する独立項に付加する縮小補正が許容され得るということには大きな争いはないが、その補正事項をシステム請求項に付加する補正が許容され得るかどうかは形式的にはカテゴリーが異なるため議論の余地がある。ところが、もしもこのような補正を許容しないとすると、出願人自ら進歩性がないと認めている実質的に同一な方法の発明と物の発明のうち、方法の発明は縮小補正により進歩性を克服できるのに、物の発明は補正ができず進歩性を克服できないことになってしまい、甚だ不合理である。またこのような補正を許容しても審査業務の負担が増大するとか第三者に不測の損害を加える危険性が高くなるわけでもないため、本判決で出願人の補正を許容したのは妥当なところであると言える。
ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム
ジェトロ・ソウル事務所 知的財産チームは、韓国の知的財産に関する各種研究、情報の収集・分析・提供、関係者に対する助言や相談、広報啓発活動、取り締まりの支援などを行っています。各種問い合わせ、相談、訪問をご希望の方はご連絡ください。
担当者:大塚、李(イ)、半田(いずれも日本語可)
E-mail:kos-jetroipr@jetro.go.jp
Tel :+82-2-3210-0195