知財判例データベース 先出願を基礎として韓国内の優先権主張をした出願発明がその先出願を原出願として二重出願された実用新案出願との間で二重出願関係を持たないと判断した事例
基本情報
- 区分
- 特許
- 判断主体
- 特許法院
- 当事者
- ○○(原告)v. 特許庁長(被告)
- 事件番号
- 2007ホ7945
- 言い渡し日
- 2008年09月05日
- 事件の経過
- 未確認
概要
213
国内優先権主張した出願の場合、特許要件や先願主義などの一部規定を適用することにおいて単に出願時だけ先出願の出願時に遡及され、二重出願とは異なり先出願書に最初に添付された明細書の特許請求の範囲以外にも「詳細な説明や図面に記載された発明までも」基礎とすることができ、むしろ先出願の請求範囲より広くすることできる点などを考慮すれば、国内優先権主張の出願だけでその出願時が先出願の出願時に遡及される他に、先出願が他の出願との間に持っている二重出願関係における原出願の地位まで継承すると見ることはできない。
事実関係
原告は、発明(以下「本件先出願発明」)を特許出願した日に、これを原出願とする考案として実用新案二重出願(その後、実用新案登録された。以下「比較対象発明」)をした。その後、原告は本件先出願発明を基礎に国内優先権主張をして特許出願を行ったが、特許庁から一部の請求項が出願日が同じ比較対象発明と同一であって旧特許法(2006年3月3日法律第7871号に改正される前のもの)第36条第2項、第3項により特許を受けることができないという理由で拒絶決定を受けた。これに原告は不服審判を提起したが、特許審判院でも原告の請求を棄却したため、これに対し原告は、先出願を基礎に国内優先権主張をした出願発明は、その先出願を原出願として二重出願された実用新案出願との間に二重出願の関係を持つと主張し審決取消訴訟を提起した。
判決内容
法院は、旧特許法第36条第2項、第3項は、同一な発明や考案に対して同じ日に2以上の特許や実用新案登録出願がある時には重複する権利が発生することを防止するために、協議過程を通して一つの権利だけが登録されるように規定し、ただし旧特許法上、許容された二重出願関係にある出願の間には別途の放棄規定を通して重複する権利が発生することを防止しており、上記のような協議過程に関する規定の適用を排除しているだけであるため、上記のような協議過程に関する規定の適用を排除するためには旧特許法第53条や旧実用新案法第17条が規定している二重出願関係がなければならないと説示した。
また法院は、本件出願発明のような国内優先権主張出願の場合、その効力は単に出願時のみ先出願の出願時に遡及されるだけで、それも特許要件や先願主義などの一部の規定を適用することにとどまり、特許権存続期間などの規定の適用においては遡及されない等(従って、特許権の存続期間が延長され得る)法的効力が及ぼす範囲が非常に制約的である点、二重出願は原出願書に最初に添付された明細書の「請求の範囲」に記載された事項の範囲内でのみできることに比べて、優先権主張出願は先出願書に最初に添付された明細書の特許請求の範囲以外にも「詳細な説明や図面に記載された発明までも」基礎とすることができてむしろ先出願の請求範囲より広くすることができる点などを考慮すれば、国内の優先権主張出願だけでその出願時が先出願の出願時に遡及される他に、先出願が他の出願との間に持っている二重出願関係における原出願の地位まで継承すると見る根拠はないと判示し、国内優先権主張の出願とその先出願の二重出願の間には二重出願の関係がないため、旧特許法第36条第3項但し書による先願主義と関連した協議規定の適用を排除することができず、この協議過程を経なかった本件出願発明は特許を受けることができないと判断した。
専門家からのアドバイス
特許法は重複特許の排除のために先に出願した者に特許権を与える先出願主義を採択しているところ、同じ日に同じ発明が重複して出願されたときは特許法は協議過程を経て一つの発明だけが特許権を受けることができるように規定している。ただし、旧特許法上、二重出願制度によって同じ日に出願された原出願と二重出願の間では協議に関する規定が適用されないが、これは先登録された二重出願を放棄してから原出原の登録が可能となるという別途の規定が存在し、最初から重複特許が発生する余地がなかったためである。本件は、二重出願での原出願を先出願として国内優先権主張をした出願が二重出願に対する原出願の地位を持っていて、出願段階における協議に関する規定の適用を排除することができるかが問題になった事案である。しかし、法院は先出願主義に関する規定の適用に対する例外は明文の規定がある場合にのみ可能であるという趣旨で、二重出願での原出願を先出願として国内優先権主張をした出願はその原出願の地位まで継承できないとして、本件出願発明も出願段階で協議の過程を経なければならないと判断した。本判決は法院が先出願主義の根幹を重視し、関連規定を厳格に解釈したわけであり、至極妥当な結論であるが意味深いものと言えよう。
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