知財判例データベース 特許出願前に不特定多数人が認識できる状態にあったことを理由に新規性を否定した事例

基本情報

区分
特許
判断主体
特許法院
当事者
株式会社エヌテック(原告)v. 株式会社コボンハンジン他3名(被告)
事件番号
2008ホ3636
言い渡し日
2008年11月20日
事件の経過
未確認

概要

220

産業上利用できる発明だとしても、その発明が特許出願前に国内で公知となっていたり、または公然と実施された発明に該当する場合には、特許を受けることができないところ、ここで言う「公知となった」とは、必ずしも不特定多数人に認識される必要はないとしても、少なくとも不特定多数人が認識できる状態に置かれていることを意味する。従って、特許出願前にその発明の内容が秘密維持義務のない者らの出入りが統制されずに社内外への伝播を目的に開催された発表会で公開された場合は、新規性喪失事由に該当する。

事実関係

被告は、特許権者である原告を相手取って原告所有の特許(以下「本件特許発明」)が、その特許出願前に公開された比較対象発明に比べて新規性がないという理由により登録無効審判を提起し、特許審判院は被告の審判請求を認容する審決を下した。これに対して原告は、比較対象発明の発表は原告と韓国ガス安全公社の付設機関のガス安全研究院で秘密維持義務を有する役職員、専門評価委員などのみを対象に行われたものであるので、比較対象発明が本件特許発明の特許出願前に公知となったわけではないと主張し、特許法院に審決取消訴訟を提起した。

判決内容

法院は、新規性喪失における「公知となった」という意味は必ずしも不特定多数人に認識される必要はないとしても、少なくとも不特定多数人が認識できる状態に置かれていることを意味すると判示した後、比較対象発明を発表する発表会で研究課題評価のための専門評価委員、ガス安全研究院の職員ら以外の人々が出入りするのを統制しなかった事実、ガス安全研究院のウェブサイトとガス安全新聞には上の発表会の目的が「1年間行われた研究成果を公社内外に伝播することによってガス安全技術を共有するもの」であることを摘示している事実などに照らして、比較対象発明が不特定多数人が認識できる状態で発表され、その発表内容は、その当時にガス安全研究院の社内外に伝播した可能性が高いので、結局、本件特許発明は出願前に国内で公知となったと判示し、原告の請求を棄却した。

専門家からのアドバイス

特許法は特許を受けるための要件として、発明が新規性を備えることを要求しているが、新規性を喪失した場合について一定の例外を認めている。従って、このような例外規定を適切に活用すれば、特許審査段階ではもちろん、以後の登録無効審判が請求されても新規性喪失による拒絶や無効を予め防止することができる。

本件のように発表会の現実の参加者が、秘密維持義務を有する公的機関の職員のみであったからといって、秘密が維持されていたと解されるのではなく、その発表会が、不特定多数人が認識できる「可能性」があった以上「公知となった」と判断されてしまうから、必ず新規性喪失の例外規定の適用を申請しておく必要がある。

幸いにも、現行特許法は旧法と異なり新規性喪失の例外を幅広く認めており[1]、本件のように特許を受けることができる権利を持った者による公開が行われた場合、公開日から6ヶ月以内にしかるべき証明書類を整えて特許出願をすれば、新規性喪失の例外の適用を受けられるようになっている。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

ジェトロ・ソウル事務所 知的財産チームは、韓国の知的財産に関する各種研究、情報の収集・分析・提供、関係者に対する助言や相談、広報啓発活動、取り締まりの支援などを行っています。各種問い合わせ、相談、訪問をご希望の方はご連絡ください。
担当者:大塚、李(イ)、半田(いずれも日本語可)
E-mail:kos-jetroipr@jetro.go.jp
Tel :+82-2-3210-0195