知財判例データベース 登録商標を題号として使用したことは書籍の出処を表示するものではないため、商標権侵害に該当しないと判断した事例
基本情報
- 区分
- 商標
- 判断主体
- ソウル中央地方法院
- 当事者
- ○○(申請人)v. 株式会社YBM社(被請求人)
- 事件番号
- 2007カ合3639
- 言い渡し日
- 2008年04月11日
- 事件の経過
- 未確認
概要
199
他人の商標を定期刊行物やシリーズ物の題目として使用するなど特別な場合には使用態様、使用者の意図、使用経緯など具体的な事情により実際の取引界で題目の使用が書籍の出処を表示する識別標識として認識され得るが、一般的には書籍類の題目は該当著作物の創作物としての名称ないしはその内容を含蓄的に表すものに過ぎないため、他人の登録商標をその指定商品と同一又は類似の書籍類の題目で使用してもこれを「商標的使用」と見難く商標権の侵害であるとは言えない。
事実関係
教育用教材、録音テープなどを指定商品とする本件登録商標( 「図形+飛び越えのハングル」)の権利者である申請人は、被申請人が本件登録商標のうち「뛰어넘기(飛び越えのハングル)」の標章を英語、中国語学習用教材、リスニングテープの題目の一部で使用し出版したことは商標権侵害に該当するとしてその侵害の差止を求める仮処分を申請した。
判決内容
法院は他人の登録商標と類似の標章を利用した場合であるとしてもそれが商標の本質的な機能であると言える出処表示のためでない場合には登録商標の商標権を侵害する行為とは見ることができないとしつつ、本件で「뛰어넘기」標章が使われた教材は被申請人が出版する教材のうち極めて一部である点、被申請人は「뛰어넘기」標章だけを題目として使用せずに当該教材の内容を表す名称を付加し使用している点、本件登録商標のうち「뛰어넘기」という標章に比べて被請求人の商号又は営業標章がはるかに周知され、著名なものとして見える点、韓国国内で出版された書籍のうち「뛰어넘기」という標章が題目の一部として使われた書籍類は少なくとも111種に達し、このうち74種は学習用教材である点から照らして上記の標章が持つ識別力がそれほど大きくないと見える点、「뛰어넘기」標章は一般需要者や取引者に「一段階高い水準の課題を克服する」という意味で認識されることができ、これを通しその教材の品質や効能を暗示する効果を得るためのものと見える点などを総合してみれば、被申請人が「뛰어넘기」標章を商標的に使用しているとは見難いと判示し、本件仮処分申請を棄却した。
専門家からのアドバイス
書籍の題号は一般的に独自の著作物と認められず著作権法による保護を受けることが難しいが、実務上題号が直接書籍の内容を表す等、品質表示に該当しない限り商標登録を受けることができ商標法による保護がなされている。しかし、題号は一般的に該当著作物の創作物としての名称ないしその内容を含蓄的に表すものであるため、商標法による保護を受けるためには実際の取引界で題号の使用が書籍の出処を表示する識別標識として認識されるかどうかにより具体的に判断する必要がある。本件の場合、法院が適切に指摘した通り被申請人は「뛰어넘기」標章を出処を表示する識別標識として使用したとは見難いため、申請人の仮処分申請を排斥した法院の判断は妥当であると見られる。従って、題号を商標として登録した者はこのような題号の特殊性を十分に勘案し商標権行使の際に予め専門家との相談を通してその可能性如何を検討してみる必要があると言える。
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