知財判例データベース 特許登録前に行われた要旨変更に該当する補正部分を削除する訂正審決の効力が遡及する範囲に関して説示した事例
基本情報
- 区分
- 特許
- 判断主体
- 大法院
- 当事者
- SKテレコム株式会社(原告、上告人)v. 特許庁長(被告、被上告人)、株式会社KTフリーテル(被告補助参加人)
- 事件番号
- 2005フ254
- 言い渡し日
- 2008年02月28日
- 事件の経過
- 破棄差戻し
概要
197
旧特許法(1998年9月23日法律第5576号で改正される前)第49条、第136条第9項によれば、出願人が特許査定謄本の送達前に明細書又は図面の要旨を変更する補正書を提出したにもかかわらず、その補正が特許庁の審査官により却下されず特許登録された後で訂正審判が請求された場合には、その訂正が受け入れられても訂正審決の効力は上記の法第49条によりその補正書を提出した時まで遡及するようになるが、その訂正審判請求の内容が明細書や図面の要旨を変更した補正部分を全て元に戻すものである場合には、上記の法第49条が適用される余地がなく、訂正審決の効力は最初の特許出願時まで遡及するとみるべきである。よって万一訂正審判請求された内容が要旨変更と認められた補正部分を全て元に戻すのであれば、旧特許法第136条第3項で定めた訂正の要件である「訂正後の特許発明がその出願時に特許を受けることができるものであるかどうか」でいう出願時とは「最初の特許出願時」を意味する。
事実関係
原告は本件特許発明の特許査定謄本が送達される前に特許請求範囲及び発明の詳細な説明を補正したところ、この補正は要旨変更に該当するものであったにもかかわらず審査官により却下されることなく特許登録された。その後、被告補助参加人は本件特許発明に対して無効審判を請求し、特許審判院は上記の補正が要旨変更に該当するため、旧特許法第49条により本件特許発明の出願日は上記の補正書提出日と見なされ、この時を基準とすれば先行公知技術により進歩性が否定されるので本件特許は無効であると判断した。これに対して原告が要旨変更と認められた部分だけを再度最初の出願明細書の記載通りに戻す新たな訂正審判を請求したが、特許審判院はこれを受け入れず、さらに原審である特許法院も、補正により明細書の要旨が変更された発明は最初の出願明細書に記載された発明とは別個の発明であるとしつつ、旧特許法第136条第3項での「特許出願時」とは訂正審判請求された内容と関係なく常に「明細書の要旨を変更する補正書を提出した時」を意味するものであると判示した後、本件訂正審判請求による特許発明は上記の補正書提出日に既に出願公開手続きにより公知となったものであって特許出願時に登録され得ないことが明白であるため、本件訂正審判請求は訂正の要件を備えていないと判断した。これに対して原告は本件上告を提起した。
判決内容
法院は旧特許法第136条第3項が定めた訂正の要件として「訂正後の本件特許発明がその出願時に特許を受けることができるかどうか」は訂正審判請求された内容から照らして要旨変更と認められた補正部分をそのまま維持するものか、それともそのような補正部分を全て削除するものかにより訂正の効力がどの時点まで遡及できるかを判断した後に、訂正後の特許請求範囲が特許出願時、特許を受けることができるものかどうかを判断しなければならないと判示した。ところが、本件訂正審判請求は明細書の要旨を変更したものと認められた補正部分を全て削除することを内容としているため、原審としては補正書提出時ではない最初の出願時を基準として本件特許発明が特許を受けることができるものかどうかを判断しなければならなかったにもかかわらず、これとは異なる前提から本件訂正審判請求の適法如何を判断した原審判決には訂正審判に関する法理を誤解し判決に影響を及ぼした違法があると判示した。
専門家からのアドバイス
訂正審判は特許発明の内容を明確にすることにより第三者との争いの素地を未然に防止し特許権の無効を防止して特許権者を保護するための制度で、法的安全性のために特許法は厳格な要件の下でのみ訂正審判を認めており、その要件の中の一つがまさに「訂正後の特許請求範囲に記載された事項が特許出願時、特許を受けることができるものでなければならない」というものである。ここでいう「特許出願時」とは、一般的に「最初の出願時」を意味することで理解されていたが、本事案のように要旨変更に該当する補正部分を削除し、また本来の特許発明に戻す訂正審判請求が許容されるかどうかは議論の余地があった。このような問題に対して原審は法文言の形式論理に集中する余り、補正により明細書の要旨が変更された発明は最初の出願明細書に記載された発明とは別個の発明であるということを前提として、上記の「特許出願時」は「要旨変更された補正書を提出した時」を意味すると判断したのであるが、大法院は訂正審判請求の具体的内容に注目して、従来の要旨変更された補正部分を削除する訂正審判請求の場合には「補正書提出時」ではない「最初の出願時」を基準に特許の可能性を判断しなければならないと判示したわけである。これは具体的妥当性に基づいて特許権者の権利救済という訂正審判本来の制度的趣旨を生かした判決であると言えよう。
ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム
ジェトロ・ソウル事務所 知的財産チームは、韓国の知的財産に関する各種研究、情報の収集・分析・提供、関係者に対する助言や相談、広報啓発活動、取り締まりの支援などを行っています。各種問い合わせ、相談、訪問をご希望の方はご連絡ください。
担当者:大塚、李(イ)、半田(いずれも日本語可)
E-mail:kos-jetroipr@jetro.go.jp
Tel :+82-2-3210-0195