知財判例データベース 商標権侵害差止及び損害賠償を求める民事訴訟が係属中であるという理由により消極的権利範囲確認審判審決の取消を求める訴の利益を否定した事例
基本情報
- 区分
- 商標
- 判断主体
- 特許法院
- 当事者
- キョチョンエフエヌビー株式会社(原告)v. 株式会社ハリム(被告)
- 事件番号
- 2006ホ6406
- 言い渡し日
- 2008年10月10日
- 事件の経過
- 上告
概要
221
その争いを解決するための最も有効かつ適切な紛争解決手段の民事本案訴訟が先に提起され、すでに判決まで言い渡され、その過程において専門国家機関の公的判断である権利範囲確認審判の審決が先に下され、上記の本案判決に考慮され得ていた事情まであったのであれば、敢えて権利範囲の属否に関する審決の取消訴訟を通じて上記の紛争解決の中間的手段に過ぎない審決の妥当性を確定する実益はない。
事実関係
被告は、2006年7月11日に原告が使用している確認対象標章が本件登録商標の商標権を侵害しているという理由により原告を相手取って水原地方法院に商標権侵害差止と損害賠償を求める民事本案訴訟を提起し、これに対して原告は2007年3月21日に被告を相手取って特許審判院に確認対象標章が本件登録商標の権利範囲に属さないという理由により消極的権利範囲確認審判を請求した。これに対して特許審判院は、2008年4月28日に確認対象標章が本件登録商標の権利範囲に属するという趣旨の審決を下したが、それとは異なり水原地方法院は確認対象標章が本件登録商標の商標権を侵害していないという理由により被告の民事訴訟を全て棄却する判決を言渡た。これに対して原告は特許審判院審決の取消を求める訴訟を特許法院に提起し、被告は水原地方法院の判決に控訴して現在民事訴訟は控訴審に係属中である。
判決内容
法院は、権利範囲確認審判の審決が確定されても、それにより商標権の侵害如何に関して法的拘束力を持つようになるのではなく、その侵害如何は最終的に商標権の侵害と関連した差止請求や損害賠償請求のような一般民事訴訟による確定判決により決定されるので、権利範囲確認審判自体としては商標権侵害如何と関連した紛争の解決を図るのにおいて最も有効かつ適切な手段になるには限界があると認定した。さらに法院は、商標権の権利範囲確認審判は審判請求人が審判の対象とした具体的な対比対象商標との関係において当該登録商標の効力が及ぶ範囲に関して現実的な争いが続いており、同じ審判対象に対して最も有効かつ適切な紛争解決手段である侵害差止請求や損害賠償請求のような民事本案訴訟の判決が下される前にその権利範囲の属否を確定する実益がある場合に確認の利益があると言え、もし、これとは異なり、当事者の間に現実的な争いがないか、あるいはその争いを解決するための最も有効かつ適切な紛争解決手段である民事本案訴訟が先に提起され、すでに判決まで言い渡され、その過程において専門国家機関の公的判断である権利範囲確認審判の審決が先に下され、上記の民事本案訴訟の判決に考慮され得ていた事情まであったとすれば、敢えて権利範囲の属否に関する審決の取消訴訟を通じて上記の紛争解決の中間的手段に過ぎない審決の内容を確定する実益はないと見るのが相当だと判示し、訴を却下した。
専門家からのアドバイス
特許審判院が下す権利範囲確認審判の審決が一種の行政的処分だという点を勘案して、その審決が侵害如何を判断する民事法院に対する拘束力まで持つものではないという点は従来から確固に認められてきた。従って、現行制度下では侵害事件を取り扱う法院が侵害如何に関して特許審判院と正反対の判断を下すことが起こり得る。ところが、一方の当事者が特許審判院の審決に対する取消訴訟を提起して、特許法院が特許審判院の審決が正当か否かを判断することになった場合には、同じ審級と言える侵害事件を取り扱う法院と特許法院の間で互いに異なる結論を下すことになってしまう。このような点に照らしてみるならば、本件において特許法院は、法院判決の矛盾や抵触を避けるために自らの基準を提示したものと評価できる。すなわち、侵害訴訟が提起されていない場合には権利範囲確認審判の審決を取り消すか取り消さないかの法的利益が存在するが、侵害訴訟が係属中である場合には、より直接的かつ有効な紛争解決手段である民事本案訴訟の中で解決せよというのである。もちろん、特許法院のこのような態度が正しいかどうかはまだ大法院の最終的な判断が残っており、法院の確立された解釈として見ることはできないが、大法院がどのように判示するか注目したい。
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