知財判例データベース 色々な図形が規則的・反復的に配列されている両商標を全体的な構成そのもの・配列形態・表現方法を基準に類否判断した事例
基本情報
- 区分
- 商標
- 判断主体
- 大法院
- 当事者
- ル○ヴィトンマレティエ(申請人、再抗告人)v. ベク△ヒョン(被申請人、相手方)
- 事件番号
- 2006マ805
- 言い渡し日
- 2007年02月26日
- 事件の経過
- 破棄差し戻し
概要
157
商標の類否判断は、二つの商標を同時に並べて見比べるのではなく、時と場所を別にして二つの商標に接する取引者や一般需要者が商品出処に関して誤認・混同を起こすおそれがあるかどうかの観点でなされなければならず、二つの商標がその外観、呼称、観念などにより取引者や一般需要者に与える印象、記憶、連想などを全体的に総合して観察して、商品の出処に関して誤認・混同を起こすおそれがあると認められる場合には二つの商標が互いに類似しているとみるべきである。
事実関係
かばん類に対する「 」商標の商標権者である申請人は、被申請人が「 」(第1デザイン)、「 」(第2デザイン)、「 」(第3デザイン)デザインのかばん製品を販売していたことに対し、これは申請人の商標権を侵害する行為であり周知著名な申請人商標の識別力を損傷させる不正競争防止法第2条第1号(ダ)目の不正競争行為に該当すると主張して仮処分を申請した。これを審理した第一審法院は、第1デザインは本件登録商標との類似性が認められるが、第2、3デザインの場合、その要部である「L」と「J」を重ねた模様の図形( 、以下「LJ図形」)が登録商標の「L」と「V」を重ねた図形( 、以下「LV図形」)とは相違し、チェリー模様の図形が挿入されているなど全体的な外観が明確に区分されて類似性を認めることができないと判断し、これにより第1デザインに限ってのみ仮処分を認容した。申請人は抗告し第2、3デザインに対する第一審敗訴部分の取消を求めたが、上記の請求は棄却されたため、大法院に再抗告した。
判決内容
被申請人の商品に自他商品の出処表示として使われたデザインは申請人の登録商標の構成要素である各図形を一部変形はしたが、それと類似の図形をモチーフとしており、本件登録商標と被申請人の比較対象商標は全て「LV図形」又は「LJ図形」を中心に残りの三つの図形が一定の間隔と大きさの比率を維持して連続的に周囲をとり囲んだ形態で構成されているなど、その図形の全体的な構成、配列形態、表現方法などが非常に類似している。
ところが、上記のように色々な図形が規則的・反復的に配列されている商標の場合、これに接する取引者や一般需要者が必ずしもその個別図形の細部的なところまで正確に観察して記憶することにより商品の出処を識別するとは断定できず、商標全体が与える印象により商品の出処を識別する場合が少なくないのが一般的な取引実情であると言えるところ、本件登録商標と比較対象商標の場合、取引者や一般需要者に外観上最も強い印象を与えて記憶・連想を引き起こさせる特徴的な部分が商標を構成した個別図形の具体的・細部的な模様であるというよりは直観的に認識され得る図形のモチーフ、全体的な構成、配列形態、表現方法などにあり、時と場所を別にして対比される両商標に接する取引者や一般需要者が上記のような類似する外観上の特徴により強い印象を受け、記憶・連想をすることにより商品出処に関する誤認・混同を起こすおそれがあると判断されるため、両商標は互いに類似の商標であると見なければならない。
従って、原審の申請人敗訴部分に対する判断には商標の類似如何判断に関する法理誤解及び審理不尽の違法があると言えるため、これを再度審理・判断させるために事案を原審法院に差し戻すことにする。
専門家からのアドバイス
商標の類否判断においては、両商標を全体的に観察して比べる全体観察が原則的な方法であるが、中心的な識別力を持った要部を抽出し比べる要部観察や、文字と文字又は文字と図形の各構成部分が結合された結合商標を各構成部分に分離して比べる分離観察が、全体観察と並行して活用される場合が多くある。本事案でも図形と図形が結合された結合商標の類否が問題になり、原審では構成部分のうち、一部を別に離してそれだけを別途に観察した後、一部デザインに関して互いに類似していないという判断をした。しかし、大法院が判示した通り色々な図形が規則的・反復的に配列されている商標の場合には商標全体が与える印象により識別される場合がむしろ一般的であると言えるため、このような取引界の事情を十分に勘案し類否が判断されなければならない。このような点から本件判決は商標の類否判断において形式的な比較を止揚すべきであるということを再確認したという点にその意味がある。
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