知財判例データベース BM特許の権利範囲に関する判断基準を説示した事例

基本情報

区分
特許
判断主体
特許法院
当事者
現代カード株式会社(原告)v.○○(被告)
事件番号
2007ホ2957
言い渡し日
2007年12月26日
事件の経過
確定

概要

189

「営業方法特許」(以下「BM特許」とする)に該当するためにはコンピュータ上でソフトウェアによる情報処理がハードウェアを利用し具体的に実現されなければならず、これは請求項が人の精神活動などを利用したものであったり、単純にコンピュータやインターネットの汎用的な機能を利用しているものであってはならず、ハードウェアと具体的な相互協同手段により特定の目的達成のための情報の処理を具体的に遂行する情報処理装置又はその動作方法が構築されているべきであるため、BM特許の権利範囲も上記のような情報処理装置又はその動作方法が構築されている範囲内で認められなければならない。

事実関係

「クレジットカードを利用した先補償システム及び方法」に関する登録特許権者である被告は原告を相手取って積極的権利範囲確認審判を請求し、特許審判院は原告により実施されている確認対象発明は上記の登録発明の請求項第5項発明(以下「本件第5項発明」とする)の構成要素を全て含んでいるという理由により被告の請求を認容する審決をした。これに対して原告は、本件第5項発明の構成要素3は「会員が顧客端末機を利用しポイント管理サーバーにアクセスしてオンライン上で提示された先補償物を選択すればそれによりシステムが自動的にソフトウェア処理によってマイナスポイントなどをデータベースに保存する構成」であるのに対し、原告の実施している確認対象発明の3、4段階は、オフライン上で顧客と販売員の間で行われる自動車購買契約行為及びそれにより決まったマイナスポイントなどをカード社のサーバーに入力する行為など人の精神活動と行為を中心に構成されているため権利範囲に属さないと主張して本件審決取消訴訟を提起した。

判決内容

法院は、BM特許はその請求項が人の精神活動などを利用したものであるとか、単純にコンピュータやインターネットの汎用的な機能を利用しているものであってはならず、これはソフトウェアがコンピュータに読み込まれてハードウェアと具体的な相互協同手段により特定の目的達成のための情報処理を具体的に遂行する情報処理装置又はその動作方法が構築されているものを言うため、BM特許の権利範囲も上記のような情報処理装置又はその動作方法が構築されている範囲内で認められなければならないところ、BM特許と対比される発明がそのBM特許の権利範囲に属するためには、その対比される発明に上記のようなBM特許の特性が具現された特許発明の構成要素と構成要素間の有機的結合関係がそのまま含まれているべきであると判示した。

法院は、このようなBM特許の特性に照らし、人の精神活動と行為を中心にした確認対象発明の対応構成(3、4段階)は本件第5項発明の構成要素3のようなオンライン上でのソフトウェアによる情報処理に関する構成とは全く異なるものであり、BM特許の権利範囲は人の精神活動と行為に及ばないので、他の構成要素に関しては比べる必要もなく確認対象発明は本件第5項発明の権利範囲に属さないと判示した。

専門家からのアドバイス

韓国で1999年以後、BM特許の出願が急増した頃にはその発明の特許性、具体的に「自然法則を利用したものであるか」という点等に関心が集中した。しかし、既に多くのBM特許が登録となった現在においては、そのBM特許の権利範囲解釈と侵害如何の判断に関する問題が台頭し始めており、本判決はBM特許の権利範囲判断に関する基準を提示したという点でその意義は大きいと言える。さらに、BM特許を認めた趣旨とその特性を考慮しBM特許の権利範囲を単純なアイディアではない、そのアイディアがソフトウェア又はハードウェアにより実現される部分にあると見た点で本判決の説示は至極妥当であると言える。万一、BM特許の権利範囲が人の精神活動と行為にも及ぶと見られることになると、これは特許制度の基本的な趣旨に反すると言える。従って、BM特許を出願しようとする人やこれをサポートする専門家らは、今後本判決が判示した権利範囲に関する判断基準を参酌し適切な請求範囲を有するBM特許を出願する努力が必要であろう。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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