知財判例データベース 旧意匠法が要求する客観的創作性の程度を明確に判示した事例

基本情報

区分
意匠
判断主体
大法院
当事者
原告、上告人 v. 被告、被上告人
事件番号
2005フ2922
言い渡し日
2006年07月28日
事件の経過
確定

概要

144

意匠を構成する個々の形状と模様の結合で従来の意匠とは異なる新しい審美感を造成する場合には客観的創作性が認められ、従って該当意匠を他の意匠と対比し類否判断の対象にすることができる。

事実関係

被告は原告を相手に「貨物トラック用積載箱支持具」に関する原告の確認対象意匠が被告の本件登録意匠「トラック用積載箱支持具」の権利範囲に属するという積極的権利範囲確認審判を請求し、特許審判院はこれを審理し確認対象意匠が本件登録意匠と全体的に類似していると判断して被告の請求を認容した。この審決を不服とし原告が提起した審決取消訴訟でも原告が敗れ、これに対して原告は被告の本件登録意匠が物品の機能を確保するのに不可欠な形状のみから成った意匠であるばかりではなく、以前に公知となった意匠と類似か、これらから容易に創作できる水準のものであってその権利範囲が認められず、また本件登録意匠を構成する個々の形状と模様が既に公知となったものに該当する限り、これを類否判断の対象にすることはできないということを理由に上告した。

判決内容

原告の各上告理由を判断したところ、第一に、意匠の構成のうち物品の機能に関する部分であるとしてもその機能を確保することができる選択可能な代替の形状が存在する場合には物品の機能を確保するところに不可欠な形状であるとは言えないところ、本件登録意匠の構成のうち軸固定部内部の形状が円形であるのは物品の機能を確保するところに不可欠な形状であると言えるが、その他の部分は自由にデザインできる部分に該当するため、物品の機能を確保するのに不可欠な形状のみから成った意匠であるとは言えず、第二に、意匠法が要求する客観的創作性とは過去又は現存の全てのものと類似しない独特さだけを言うのではなく、過去及び現存のものを基礎としてそこに新しい美感を与える美的創作が結合され、それ全体として従来の意匠とは異なる美感的価値が認められる程度であれば充分であると言え、第三に、登録された意匠がその出願前にその意匠が属する分野において通常の知識を持った者が以前に公知となった意匠の結合により容易に創作できるものであるとしてもこのような事情だけでは登録された意匠の権利範囲が否定されると見ることができないため、これを総合してみる時、本件登録意匠の権利範囲は認められると言える。最後に、登録された意匠を構成する個々の形状、模様が公知共用に属するものであるとしてもこれらが結合し新しい審美感を造成した場合にはこれを意匠の類否判断の対象とすることができるため、本件登録意匠も類似対比の対象として認めるのが妥当であると見なされる。

従って、確認対象意匠と本件登録意匠の類似性を判断し、その結果、確認対象意匠が本件登録意匠の権利範囲に属すると判示した原審は正当である。

専門家からのアドバイス

意匠も特許と同じように新規性と進歩性が認められた時に始めて有効に登録されるものであるが、多様な公知意匠を結合しこれを新しく構成した意匠は一旦新規性を備えていると見ることができる。上記の判決の事案でも新規性ではない進歩性の認定如何が主に争われたところ、意匠の進歩性は上記の判示の通り過去又は現在のものを基礎とし、そこに新しい美感を与えて従来とは異なる美感的価値が感じられる程度であれば十分である。即ち、上記の判決は意匠の進歩性を原則論的に既存のものと類似の側面があるかどうかを離れ、新しい美感的価値が認められるかどうかを基準にしなければならないという点を明確に判示したものである。併せて、上記の判決は登録意匠が別途の審判手続きを経て無効にならない限り該当意匠が属する分野で通常の知識を持った者が既存の公知意匠の結合により容易に創作できるという事情だけで登録意匠の権利範囲そのものが否定されるわけではないとの趣旨も明確にしている。

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