知財判例データベース 国内に登録された商標と同一・類似の商標が付されたその指定商品と同一・類似の商品を輸入する行為がその登録商標権の侵害などを構成しないための要件を判断した事例
基本情報
- 区分
- 商標
- 判断主体
- 大法院
- 当事者
- 原告株式会社(原告、上告人)v. 被告1他2人(被告、被上告人)
- 事件番号
- 2006ダ40423
- 言い渡し日
- 2006年10月13日
- 事件の経過
- 確定
概要
140
国内に登録された商標と同一・類似の商標が付されたその指定商品と同一・類似の商品を輸入した場合、その輸入物品の商標が正当な権源により付されて国内登録商標と同一の出処を表し、品質において実質的な差がないと認められる時には、たとえ事後品質管理などその付随的なサービスが異なるとしても商標権の侵害が成立しない。
事実関係
原告は米国ブ○ザード社の「STARCRAFT」商標に対する国内専用使用権者として上記の商標を付した娯楽用コンピュータソフトウェアCDを生産し販売してきたところ、被告が米国で上記の商標を付した米国内の真正品である娯楽用コンピュータソフトウェアCDを並行輸入した事実を認知した。これに対し、原告は、被告の輸入製品が購買後CD Keyの事後の管理がなされないなど国内で生産された「STARCRAFT」商標の製品とそのサービスに差があるため、国内商標権を侵害する物品であることを主張し法院に提訴したが、法院は国内商標製品と被告輸入製品の品質に差があると認めず原告敗訴の判決をした。続く控訴審でも原告の主張は棄却され、原告はさらに上告した。
判決内容
国内に登録された商標と同一・類似の商標が付されたその指定商品と同一・類似の商品を輸入する行為がその登録商標権の侵害などを構成しないとするためには、(1)外国の商標権者ないし正当な使用権者がその輸入された商品に商標を付したものでなければならず、(2)その外国商標権者と韓国の登録商標権者が法的又は経済的に密接な関係にあるかその他の事情により、上記のような輸入商品に付された商標が韓国の登録商標と同一の出処を表示するものと見られるものでなければならず、(3)併せてその輸入された商品と韓国の商標権者が登録商標を付した商品との間に品質において実質的な差がないものでなければならない。ここで品質の差とは製品自体の性能、耐久性などの差を意味するものとして、それに付随されるサービスとしての顧客支援、無償修理、部品交替などの有無による差を言うのではない。
従って、被告の本件輸入製品が米国内の商標権者であるブ○ザード社が適法に商標を付して米国で販売した真正品に該当し、その商標が表示する商品の出処であるブ○ザード社は米国商標権者であると同時に国内商標権者であり、また娯楽用コンピュータCDの特性上、生産者や販売国により付随的な情報において多少間の差があってもその主な内容であるゲームの実行過程は全く同一である点を考慮すれば、国内で生産された本件商標製品と被告の輸入製品との間に品質の同一性も認められ、国内商標の製品が本件輸入製品には適用されないCD Keyの事後管理がなされるなどの付随的サービスに差があるとしても解釈が変わるものではない。従って被告の輸入行為が本件商標権の侵害を構成しないと判断した原審は正当であり、原告の上告を棄却する。
専門家からのアドバイス
外国で製造販売される製品を韓国内に輸入する場合、韓国内商標権の侵害問題が起こり得る。例えば、韓国と日本で同一な商標を登録した商標権者が日本で当該商標が付された製品を製造、販売し、第三者である韓国の輸入企業が該当製品を上記の商標権者の意思とは無関係に韓国に輸入した場合、商標権者が韓国の商標権に基づきその輸入を阻止できるかという点が問題になる(いわゆる真正品の並行輸入が許容されるかという問題である)。真正品の並行輸入問題は韓国商標法上、明確に規定されていないため、商標制度の目的と商標の機能などを考慮しそのつど許容されるかどうか解釈せざるを得ない。
最近大法院はその許容条件として外国の商標権者ないし正当な商標権者による商標付着とその外国商標権者と韓国の登録商標権者間の密接な関係や同一出処としての認識可能性を言及してきたところ、本判決はこれに加えて品質の実質的同一性を追加しその意味を明確に説示したということに意味がある。外国の真正品を韓国に輸入することを考慮している会社であれば、上記の要件に該当するかどうかを綿密に検討してみなければならない。
ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム
ジェトロ・ソウル事務所 知的財産チームは、韓国の知的財産に関する各種研究、情報の収集・分析・提供、関係者に対する助言や相談、広報啓発活動、取り締まりの支援などを行っています。各種問い合わせ、相談、訪問をご希望の方はご連絡ください。
担当者:大塚、李(イ)、半田(いずれも日本語可)
E-mail:kos-jetroipr@jetro.go.jp
Tel :+82-2-3210-0195