知財判例データベース 外国で周知・著名な商標をハングル又は英語で単に音訳表記した商標は不正目的を持った商標であるとした事例

基本情報

区分
商標
判断主体
特許法院
当事者
株式会社○(原告)v. 株式会社チョン○食品(被告)
事件番号
2005ホ11049
言い渡し日
2006年07月07日
事件の経過
未確認

概要

131

原告の商標「 」(比較対象商標1)、「 」(比較対象商標2)、「 」(比較対象商標3)のうち、日本で周知・著名な比較対象商標1に関連して日本の一般需要者が呼称する発音である「ひよこ」をそのままハングルで音訳した「히요꼬」の下にその英語音訳である「HIYOKO」を二段で併記した本件登録商標「 」は商標法第7条第1項第12号の同一又は類似の商標に該当する。

事実関係

原告は、被告の本件登録商標が原告の比較対象商標3に関連して、商標法第7条第1項第4号、第6号、第7号、第9号ないし第12号に違反し登録されたという理由で登録無効審判を請求したが、特許審判院は日本語の国内普及水準などを考慮するとき、本件登録商標は比較対象商標3と外観、呼称及び観念が異なり類似していないため、商標の類似性を前提とする商標法第7条第1項第4号、第7号、第9号、第10号、第11号に該当せず、比較対象商標3が国内で著名性を取得したり、本件登録商標の使用において不正な目的を持っていることを認める証拠もないため、同法第7条第1項第6号、第10号及び第12号に該当しないとして原告の審判請求を棄却した。これに対して原告は本件登録商標が比較対象商標1、2に関連して商標法第7条第1項第12号に違反して登録され、比較対象商標3とも呼称が同一であるというなどの理由で特許審判院の上記の審決の取消を求める訴えを特許法院に提起した。

判決内容

商標法第7条第1項第12号は「国内又は外国の需要者の間に特定人の商品を表示するものであると顕著に認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不当な利益を得ようとし、又はその特定人に損害を加えようとする等、不正の目的を持って使用する商標」は商標登録を受けることができないように規定しているところ、これは国内ではまだ周知・著名ではないが、外国で周知・著名の商標の権利者が国内でもその商標を自他商品の識別標識として使用できるように、不正な目的を持って使用する商標に対して商標登録を排除することにより外国の周知・著名な商標を保護しようとするところにその立法趣旨があると言える。

従って、本件登録商標が日本で周知・著名な比較対象商標1を呼称する発音をそのままハングルで音訳した히요꼬の下にその英語音訳であるHIYOKOを二段で併記した文字商標であることに関連して商標の同一・類似性を国内の一般需要者を基準に判断すれば、アルファベットで表示された文字商標とアルファベット以外の他の文字で表示された文字商標を合理的根拠なしに差別する不当な結果が生じ得るため、日本の一般需要者が発音する比較対象商標1の呼称をハングルと英語で音訳して構成した本件登録商標は比較対象商標1の呼称と同一であると見なければならず、その結果、全体的に類似した標章である。また、原告との技術提携を通し生産されているなどの虚偽広告を通して比較対象商標を模倣しこれに蓄積された良質のイメージや顧客吸引力に便乗して不当な利益を得たり、その価値を希薄化させて原告に損害を加えようとする目的が認められると言えるため、本件登録商標は商標法第7条第1項第12条に該当しその登録が無効とならなければならない。

専門家からのアドバイス

上記の判決は外国商標と国内商標の同一・類似性を判断するのにおいて外国人が発音することを考慮した事例である。外国人が該当外国商標を発音することを考慮しなければ、英語を除いては該当商標をハングルでそのまま音訳したものと同一又は類似していると判断し難いのであるが、そのようになれば周知著名な外国商標を保護しようとする商標法第7条第1項第12号の立法趣旨が没却され得るという点で上記の判決は妥当であると言える。上記の判決での事案のように外観は互いに異なる国家の文字から成り立っているものの、その呼称において登録商標と同一の商標を使用する者がいる場合、登録商標権者としては商標権侵害差止請求などを積極的に考慮する必要がある。

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