知財判例データベース 特許無効審判手続での訂正請求において複数の訂正事項に対しては一体でその適否を判断しなければならない

基本情報

区分
特許
判断主体
特許法院
当事者
株式会社ゼ○テックノス(原告)v. 株式会社ドック△ハウジング(被告)
事件番号
2005ホ10916
言い渡し日
2006年12月13日
事件の経過
上告

概要

159

【概要】

特許無効審判手続での訂正請求は不可分的な一つの請求であるため、複数の訂正事項に対して一体でその適否を判断しなければならないのであって、一部事項の訂正のみを許容することはできない。一方、特許請求範囲に記載された用語は明細書で別途に定義した場合でない限りそれが持っている普通の意味で明細書全体を通して統一的に使われたとみるのが妥当であり、これを基礎にして特許請求範囲の記載だけで権利範囲が明白に決められる場合には発明の詳細な説明や図面など他の記載により特許請求範囲を制限解釈してはならない。

事実関係

被告は、原告の本件特許発明がその出願前に公知された先行技術から容易に発明できるものとして進歩性がないという理由で登録無効審判を請求し、これに対し原告は本件特許発明の請求項1、3項の請求範囲を縮小する趣旨の訂正請求をした。これを審理した特許審判院は訂正後の請求項3項が特許出願当時に特許を受けることができないものであって本件訂正請求は不適法であると判断し、続いて被告の請求を認容し本件特許発明に対する登録無効審決を下した。これを不服として原告は特許法院にこの審決取消を求めて控訴した。

判決内容

特許無効審判手続での訂正が特許請求範囲を縮小したり誤った記載を訂正することに該当する場合には訂正後の特許請求範囲に記載された事項は特許出願をした時に特許を受けることができるものでなければならない。一方、訂正請求は不可分的な一つの請求であるため、複数の訂正事項に対しては一体でその適否を判断しなければならず、一部事項の訂正だけを許容することはできないと言える。

これを事案に照らしてみれば、本件特許発明の訂正により縮小された請求項3項の発明は特許出願時に当業者が公示された先行技術から容易に発明できるものであるので進歩性が認められず、従ってこのように請求項3項の部分に訂正不許可事由が存在する限り本件1、3項に対する訂正請求は全体が不適法となる。

そこで、これに原告の訂正請求を棄却し、次に本件特許発明の登録無効について考察してみると如何を見たところ、原告は請求項1項に記載された発明の構成は、明細書に添付された図面上の構造であるとして解釈しなければならないため、その進歩性を認めるべきであると主張する。しかし、特許発明の明細書に使われる用語はその意味を明細書で別途に定義する以外にはする場合の他には、それが持っている普通の意味で使用されると共にすると同時に明細書全体を通して統一的に使用されているとみるべきであり、発明が特許を受けることができない事由があるかどうかを判断することにおいて特許請求範囲の記載だけで権利範囲が明白になっている場合には、特許請求範囲の記載そのもの自体だけに基づいてを基礎として判断すればいいのでることであって、発明の詳細な説明や図面など他の記載により特許請求範囲を制限解釈することは許容されないと言えるが、本件登録発明の特許請求範囲に開示している用語の一般的な意味などに照らしてみるとき、原告の主張のように発明を図面に照らして制限解釈する余地はないと言える。

結局、本件特許発明はその出願前に公知となった先行発明などと実質的にその目的、構成及び効果が同一であるか、当業者が先行発明などから容易に発明できるものであって進歩性がないと言えるため、このような趣旨で下した原審の登録無効審決は適法でありこれに対する原告の控訴を棄却する。

専門家からのアドバイス

本判決は、特許請求範囲に関する複数の訂正請求を一体で判断する特許法院の実務と、特許請求範囲の記載だけで技術的範囲が明らかである場合には他の記載により特許請求範囲を制限解釈できないという既存の大法院判例の考え方を再確認したものである。これと関連して大法院は「特許権の権利範囲ないし実質的保護範囲は特許出願書に添付した明細書の請求範囲に記載された事項により定められるのが原則であり、ただし、その記載だけで特許の技術的構成が分らないとか、分るとしても技術的範囲を確定できない場合には明細書の他の記載による補充をすることができるとなっている。ところが、この場合にも明細書の他の記載により特許範囲の拡張解釈は許されないのはもちろん、請求範囲の記載だけで技術的範囲が明白な場合にも明細書の他の記載により請求範囲の記載を制限解釈することはできない」と判示してきた(大法院1997年5月28日言渡96フ1118判決参照)。上記のような手続的な不備や明細書作成のテクニック的な不備のために、特許の一部や全部がなくなるなど特許権の有効無効に直接的な影響を受け得るため、常に専門家と相談して処理するのが権利保護において望ましい姿勢であろう。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

ジェトロ・ソウル事務所 知的財産チームは、韓国の知的財産に関する各種研究、情報の収集・分析・提供、関係者に対する助言や相談、広報啓発活動、取り締まりの支援などを行っています。各種問い合わせ、相談、訪問をご希望の方はご連絡ください。
担当者:大塚、李(イ)、半田(いずれも日本語可)
E-mail:kos-jetroipr@jetro.go.jp
Tel :+82-2-3210-0195