知財判例データベース 乳酸菌発酵乳製品に「毎日ブルガリア」標識を使用することは国内に広く知られた「ナムヤンブルガリス」製品と混同を引き起こすおそれがあり禁止されると判断した事例

基本情報

区分
不正競争
判断主体
ソウル高等法院
当事者
ナムヤン乳業株式会社(債権者、被控訴人)vs. 毎日乳業株式会社(債務者、控訴人)
事件番号
2005ナ67775
言い渡し日
2006年05月17日
事件の経過
確定

概要

124

乳酸菌発酵乳製品に関連して「毎日ブルガリア」という商標を使用することは、国内で乳酸菌発酵乳製品関連の取引者及び需要者間で申請人の商品標識として広く認識されている「ナムヤンブルガリス」と、取引上、一般需要者に商品の出所に関して誤認・混同を引き起こす不正競争行為として禁止される。

事実関係

債権者であるナムヤン乳業は、1991年1月頃に登録商標「ナムヤンブルガリス」の標識を付した乳酸菌発酵乳製品を発売して以来、当該標識に単語「プライム(PRIME)」を付加した同製品を国内で製造・販売し続けてきた。債務者である毎日乳業は、2004年1月ブルガリア国の国営企業であるエルビブルガリクムから韓国国内でのライセンスを受けたバイタルフード株式会社との間にブルガリア国にて採取した天然乳酸菌で培養した乳酸種菌を独占的に供給を受けるという約定をし、その約定によって供給を受けた乳酸種菌を使用して製造した乳酸菌発酵乳製品に「毎日ブルガリア」という商標を付して販売している。これに対し債権者は、債務者が乳酸菌発酵乳製品に「毎日ブルガリア」という商標を使用することによって債権者の周知著名な「ナムヤンブルガリス」製品と混同を引き起こしていると主張し、債務者を相手取って「ブルガリア」標章の使用禁止を求める仮処分申立を行い、これを受け入れた決定に対し、債務者が異議申立後、控訴した。

判決内容

債権者の標識「ナムヤンブルガリス」は、その売上実績、広告の態様及び費用、マスコミ報道の内容及び回数、認知度調査の結果等を総合してみるとき、国内の乳酸菌発酵乳製品に関わる取引者及び需要者間で債権者の商品標識として広く認識されていると見るのが相当であり、取引業界では債権者と債務者が生産する製品を「ブルガリス」、「ブルガリア」と略称するものと見受けられ、言語慣行上強く発音される前半の3音節が同じである点等に鑑みるとき、その呼称の類似性が認められ製品群と顧客層、流通経路等も類似し、取引上、一般需要者に商品の出所に関して誤認・混同を引き起こすため債務者の行為は不正競争行為に該当する。

これに対し債務者は、(1)「ブルガリス」標識が顕著な地名又は記述標章に該当し識別力を備えておらず、(2)顕著な地名又は記述的標章に該当する「ブルガリス」標識が仮に使用による識別力を得たとしても、その一次的意味に該当する「ブルガリア」標識自体には効力が及ばないので債務者の「ブルガリア」標識使用は正当であり、(3)「ブルガリス」標識の使用は不正競争防止法上、原産地虚偽表示及び出所地誤認の惹起行為に該当し、(4)登録商標「毎日ブルガリア」の使用は、不正競争防止法第15条により不正競争防止法の適用が排除される商標法による正当な権利の行使であると主張した。

しかし、「ブルガリス」は識別力を持つ商品標識として顕著な地名及び技術的標章以上の独自の意味が認められ、債権者標識と混同を引き起すことによって、その独自の識別力を損なわせる不正競争の目的による標識使用まで許容されるとはいえない。また、「ブルガリス」は国語辞典に記録されていない単語で、少なくとも債権者が顕著な地名ないし記述的標章を変形したものであって、商品の原産地や出所等がブルガリアだという情報を伝えるための標識、又はブルガリアで生産される乳酸種菌を使用しているという認識を与えるためのものであるとは考えられず、債権者の「ナムヤンブルガリス」標識が周知性を持つようになった後で債務者が「毎日ブルガリア」標識を使用し始めた点等の諸般事情を考慮するとき、不正競争の目的で形式上商標権を取得したケースに該当するので、「毎日ブルガリア」標識の使用が商標法による適法な権利行使であって、不正競争防止法第15条により同法の適用が排除されるという主張も受け入れられない。

専門家からのアドバイス

本判決は、仮処分事件及びその異議申立事件における結論を支持しながら債務者が提起した様々な抗弁を全て排斥した。つまり裁判所は、債権者の標識が国内で周知性を備え、債務者が債権者の標識と類似する標章を使用することによって商品の出所に関する誤認・混同を引き起すとして、債務者には不正競争の意図があったものと見られるだけに、特に顕著な地名又は記述的標章の公正な使用、又は商標権に基づく権利行使といったような抗弁は受け入れられないと判示した。このようにある標章の使用が公正使用又は商標権行使など、一応、正当な権利行使の外形を備えているとしても、当該標章の使用時期及び態様など具体的な諸般事情を総合して不正競争の目的が介入したものと確認される場合、そのような権利行使は否認されることもあるという点に留意する必要がある。

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