知財判例データベース デザインが自他商品識別機能を備えている場合、商標としての使用と認めた事例
基本情報
- 区分
- 商標
- 判断主体
- ソウル高等法院
- 当事者
- ルイヴィトン・マレティエ(申請人、抗告人)v. ベク・ソンヒョン(被申請人、被抗告人)
- 事件番号
- 2005ラ861
- 言い渡し日
- 2006年07月05日
- 事件の経過
- 上告審係属中
概要
133
商品に使われたデザインが、取引社会で一般需要者にとって該当商品を他の商品と区別させるものとして作用し、商標の本質的な機能である自他商品識別及び出処表示として使われた場合には、商標としての使用であると見なければならない。
事実関係
申請人は、被申請人がデザイン「 」(第1デザイン)、「 」(第2デザイン)、「 」(第3デザイン)が含まれたハンドバッグを製造、販売する行為に対して、これはかばん類に対する申請人の周知著名な本件登録商標「 」、「 」の商標権侵害行為に該当する一方、その識別力を損なわせる不正競争防止法第2条第1号(ハ)目の不正競争行為にも該当すると主張し仮処分を申請した。これを審理した第一審法院はデザイン1に対してのみ本件登録商標との類似性を認め、これに限り該当仮処分を認容した。これに対して申請人は棄却された部分を不服として抗告した。
判決内容
デザインと商標は排他的、選択的な関係にあるのではないため、デザインになり得る形状や模様であるとしてもそれが商標の本質的な機能であると言える自他商品の出処表示のために使われるものと見られる場合には商標としての使用であると見なければならず、商標としての使用如何は商品との関係、当該標章の使用態様、登録商標の周知著名性、そして使用者の意図と使用経緯などを総合し実際の取引業界で表示された標章が商品の識別標識として使われているかを根拠に判断しなければならない。
本事案では、被申請人が第1~3のデザインをハンドバッグの全面に規則的に反復して使用したことが申請人の本件登録商標の使用態様と同一又は類似である見られ、本件登録商標の周知著名性が認められる点等に照らし、第1~3のデザインはデザインとしての機能と同時に自他商品の出処表示のための商標として使われていると認めることができる。
これにより本件商標侵害の成立如何を判断するために第1~3のデザインと本件登録商標の類否を見れば、第1デザインは本件登録商標の主要部分である「LV図形」を模倣した部分が非常に類似している点等から見て一般需要者をして商品出処に対して誤認、混同を生じさせるおそれがあると認められるが、第2、3のデザインの場合、その要部である「L」と「J」を重ねて置いた模様の図形が登録商標の「LV図形」とは相違し、チェリー模様の図形が挿入される等、全体的な外観が明確に区分され類似性を認めることができないと見られる。
従って、第2、3のデザインに対しては比較対象商標との類似性を前提とする不正競争防止法第2条第1号(ハ)目の不正競争行為もまた成立する余地がないと言えるため、原審の判断通り本件登録商標に対する商標権侵害を構成する第1デザインに限って仮処分でその使用を差し止める保全の必要性を認めるのが妥当である。
専門家からのアドバイス
商標権侵害に対する権利者や司法当局の積極的な対応により、最近では商標権侵害に該当することが明白な文字商標や図形商標を模倣せずに、有名製品の外形や色相、製品の紋様(以下「デザイン」とする)などだけを模倣して一見真正品のような印象を与えるように作られた製品が流通する事例がたびたび発生し、有名デザインの保有者を当惑させている。この場合、真正品の生産・販売者がそのデザインをデザイン権(意匠権)として登録して置いた場合は別論として、通常は当該デザインがすでに公開されているという等の色々な理由でデザイン権(意匠権)として登録していない場合が大部分であるため、このような行為を禁止する方法については悩みが多い。この場合、二つの方法を考えることができるが、第一はそのデザインを商標として登録し、商標権を行使する方法であり、第二は当該デザインが国内取引者と消費者間で周知・著名性を獲得していれば、不正競争行為禁止請求権を行使する方法である。本決定は第一の方法が有効に使用され得ることを明示的に認めたという点にその意味があると言える。第二の方法と関連した製品のデザインも出処表示として機能し得るという点に関しては多数の先例を通して既に認められたところがある。製品の形態をそのまま模倣している場合には2004年に新しく導入されたデッドコピー条項による保護も可能である。
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