知財判例データベース 二重譲渡された特許を受ける権利に基づいて出願された登録発明は無権利者の出願として無効とされた事例

基本情報

区分
特許
判断主体
特許法院
当事者
パク・○イェ(原告)v. 株式会社ネイエヌビ、ラギ(被告)
事件番号
2005ホ9282
言い渡し日
2006年12月28日
事件の経過
確定

概要

153

特許を受ける権利が既に他人に譲渡されていることを知りつつ譲渡人の二重譲渡行為に積極的に加担して行われた二重譲渡契約は反社会的法律行為として無効な契約に該当するため、このような無効の二重譲渡契約に基づいて特許を出願し登録を受けても、これは、発明者ではなく、特許を受けることができる権利の適法な承継人でもない者により出願された発明としてその特許登録は無効とされなければならない。

事実関係

被告会社は2004年2月10日から2004年6月30日まで株式会社イボエムテック(以下「イボエムテック」とする)との間に軽量骨材プラント技術用役契約を締結し、これと関連した特許を受ける権利を含む全ての知的財産権は被告会社の所有とすることにし、以後関連供給契約を締結しながら被告会社の投資者であり代表理事である原告が投資の代価として株式の配当を受け取ることができなかったり、他意により代表理事から解任された場合、直ちに本件技術用役契約の主体が被告会社から原告に自動的に変更され、被告会社の契約上全ての権利も原告の権利に自動的に引き継がれるという内容の特約を追加した。

一方、これまで原告と被告会社の間には投資契約上の争いがあったが、2004年4月末からは原告の投資金返還と代表理事辞任議論が具体化し始め、これに対して被告会社は2004年10月、新しい代表理事を選任して翌年3月には株主総会を通し原告を最終的に代表理事から解任することに至った。その過程で、原告は2004年6月中旬頃イボエムテックから納品を受けた軽量骨材プラント設備を被告会社でない原告の個人工場に設置し、同年8月イボエムテックとの間に本件技術用役契約の主体を被告会社から原告に変更する契約を締結した後、関連研究技術に対して特許出願し、登録を受けた。これに対して被告会社は、原告の特許出願が反社会的法律行為である二重譲渡契約に基づいたことを理由に原告特許に対する登録無効審判を請求し、特許審判院はこれを認容した。しかし原告は上記の審決を不服として控訴し、イボエムテックとの譲渡契約は、被告に対する譲渡契約が解除され、原告も代表理事職を辞任した後で締結されたものであるため、適法であると主張した。

判決内容

原告と被告間の紛争関係、本件技術用役契約と本件二重契約との関係及び原告の代表理事辞任経緯や特許出願時期などの諸般事情に照らしてみる時、被告会社の単独代表理事であった原告は少なくとも新しい代表理事が追加選任された2004年10月までは代表理事としての職務を遂行する義務を持っていて、本件二重契約が締結されるまでは被告とイボエムテックとの間の技術用役契約は解除されなかったと言えるところ、原告が本件技術用役契約に基づいた特許を受ける権利が既に被告会社に譲渡された事実をよく知りながらもイボエムテックの二重譲渡行為に積極的に加担し二重契約を締結したことは反社会的法律行為として無効であると言える。

従って、本件登録発明が被告会社のための技術用役契約の結果物であることが明らかである以上、無効の本件二重契約に基づいて出願された原告の登録発明は、発明者ではなく、特許を受けることができる権利の承継人でもない者による特許出願によるものとしてその登録を無効とすることが妥当であるから、このような趣旨の原審判決は正しく、これに対する原告の控訴は理由がない。

専門家からのアドバイス

反社会的二重譲渡契約が無効であるという法理は主に不動産と関連して確立されたもので、譲渡人が譲受人に既に不動産を譲渡し譲受人に所有権移転登記義務があることをよく知る第三者が積極的に譲渡人の二重譲渡行為に介入し譲渡人の背任行為を誘発した場合、該当二重譲渡契約を無効として見るものである。上記判決の事案はこのような反社会的二重譲渡契約の法理が特許を受ける権利の二重譲渡に適用されたもので、法院は特許を受ける権利の反社会的二重譲渡に基づいて登録された特許を無効と判断した。特許権など知的財産権の譲渡又は譲受契約が場合によっては、思いがけず二重契約により上記のように無効になり、それによる知的財産権の登録も無効と判断される場合が発生し得るためこの点については十分に留意する必要がある。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

ジェトロ・ソウル事務所 知的財産チームは、韓国の知的財産に関する各種研究、情報の収集・分析・提供、関係者に対する助言や相談、広報啓発活動、取り締まりの支援などを行っています。各種問い合わせ、相談、訪問をご希望の方はご連絡ください。
担当者:大塚、李(イ)、半田(いずれも日本語可)
E-mail:kos-jetroipr@jetro.go.jp
Tel :+82-2-3210-0195