知財判例データベース 専用使用権が設定されていても権利者が第三者の商標又はサービスマークの使用差止めを請求できる
基本情報
- 区分
- 商標
- 判断主体
- 大法院
- 当事者
- 被告人
- 事件番号
- 2006ド1580
- 言い渡し日
- 2006年09月08日
- 事件の経過
- 破棄差戻し
概要
139
サービスマーク権に専用使用権が設定されている場合、その専用使用権によりサービスマーク権者の権利行使が制限されることはあり得るが、第三者が該当サービスマークを無断で使用することに対し差止めを請求する権利まで制限されるものではなく、この場合、専用使用権の侵害が成立するだけではなく、サービスマーク権侵害による商標法違反も共に認められる。
事実関係
被告人は本件サービスマーク「ワン○ランド(又は英文Wonland)」に関して専用使用権者Aとサービスマーク使用契約を締結したが、その契約が終了したにもかかわらずサービスマーク権者であるワン○ランド社はもちろんその専用使用権者Aとも使用契約を再度締結しないまま本件サービスマークを使用して語学スクールを運営してきたところ、サービスマーク権者であるワン○ランド社の告訴により商標法違反で起訴された。これに対し、被告人はワン○ランド社は専用使用権者ではなくAが専用使用権者であるため、ワン○ランド社の商標権を侵害したとは見ることはできないと主張をした。
判決内容
商標権やサービスマーク権に関して専用使用権が設定された場合、これにより商標権者やサービスマーク権者の商標又はサービスマークの使用権が制限されるようになるが、第三者がその商標又はサービスマークを正当な法的権限なしに使用する場合にその商標権者やサービスマーク権者がその商標権やサービスマーク権に基づき第三者の商標又はサービスマークの使用に対する差止めを請求できる権利まで喪失するものではない。また、このような場合にその商標やサービスマークに対する専用使用権を侵害する商標法違反が成立することはもちろん商標権者やサービスマーク権者の商標権又はサービスマーク権を侵害する商標法違反も共に成立するようになる。従って本件登録サービスマークの専用使用権がAに設定されているとしても、本件サービスマーク権がワン○ランド社にあることが認められる限り、被告人が本件サービスマークを無断で使用することに対しワン○ランド社がそのサービスマーク権の侵害を理由として使用差止めを請求できるのであり、従って被告人にはサービスマーク権侵害による商標法違反の罪が成立する。
専門家からのアドバイス
商標に関する専用使用権者はその設定契約で定めた範囲内で指定商品に関して登録商標を独占排他的に使用する権利を有する。従って、商標権者であるとしても特別な約定がない限り専用使用権が及ぼす範囲内では該当商標を使用することができず、第三者に重複して専用使用権又は通常使用権を設定することもできない。これと関連して従来は、専用使用権が設定された場合、商標権者がその禁止権を第三者に行使することができるかに対しては意見が分れていた。即ち、専用使用権が設定された以上その範囲内で商標権者の権利は「空権」に過ぎないという理由で否定する見解と、専用使用権者に商標権を使用させることができる権利を与えたとしても商標権者には第三者の商標権侵害による出処の誤認混同を防止するのに法律上の利益があるという理由で肯定する見解とがあったのであるが、上記の判決は商標権者の差止請求権は専用使用権を設定しても制限されないという点を明確にしたということにその意義がある。
ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム
ジェトロ・ソウル事務所 知的財産チームは、韓国の知的財産に関する各種研究、情報の収集・分析・提供、関係者に対する助言や相談、広報啓発活動、取り締まりの支援などを行っています。各種問い合わせ、相談、訪問をご希望の方はご連絡ください。
担当者:大塚、李(イ)、半田(いずれも日本語可)
E-mail:kos-jetroipr@jetro.go.jp
Tel :+82-2-3210-0195




閉じる