知財判例データベース 結合商標間の類否を判断することにおいて分離観察の適用を否定した事例
基本情報
- 区分
- 商標
- 判断主体
- 大法院
- 当事者
- ジ○チュ(ジャージ)リミッテッド(原告、上告人)v. 特許庁長(被告、被上告人)
- 事件番号
- 2005フ2908
- 言い渡し日
- 2006年08月25日
- 事件の経過
- 破棄差し戻し
概要
146
結合商標の類否判断時、分離観察する場合、対比される商標の間に類似の部分があるとしてもその部分が対比される商標で占める割合、他の構成要素と結合している程度、位置及び両商標の全体的な構成、形態及び観念などに照らしてその部分だけで分離認識される可能性が稀薄であったり、一般需要者や取引者が指定商品の出処に関して誤認・混同を起こすおそれのない場合には類似商標であるとは言えない。
事実関係
原告は、「トランク、ハンドバッグ、財布、傘」などを指定商品とする「 」商標を出願したが、これは指定商品を「傘」又は「ハンドバッグ、トランク、非貴金属製財布」などとして右側の図のように構成された先登録商標と類似していると判断され、その登録が拒絶された。原告は特許審判院に商標登録拒絶決定不服審判を請求したが棄却され、これに対して再度特許法院に審決取消訴訟を提起した。これを判断した特許法院は、本件出願商標の「JIMMY」部分と「CHOO」部分はその結合によりある特別な観念を形成するものでもなく、これを分離観察すれば自然でない程に不可分的に結合されているとも見難いため、「JIMMY」部分と「CHOO」部分に分離観察でき、同じ理由で先登録商標も各図形部分、「PATTY」部分及び「JIMMY」部分で分離観察できるため、本件出願商標と先登録商標いずれも「JIMMY」部分で分離観察される場合、その呼称及び観念が同一で互いに類似の商標に該当し、従ってこれらの商標を同一・類似の指定商品に使用する場合、商品出処に関する誤認・混同を起こすおそれがあるという趣旨の判決をした。上記の判決を不服として原告は大法院に上告した。
判決内容
商標の類否はその外観、呼称及び観念を客観的、全体的、離隔的に観察し、その指定商品の取引で一般需要者や取引者が商標に対して感じる直観的認識を基準にしてその商品の出処に関する誤認・混同を起こさせるおそれがあるかどうかにより判断するもので、対比される商標の間に類似の部分があるとしてもその部分だけで分離認識される可能性が稀薄であったり、全体的に観察する時、明らかに出処の混同を避けることができる場合には類似商標であるとは言えない。
本事案で、原告の本件出願商標と先登録商標を客観的、全体的、離隔的に観察する場合、これらの商標はその外観、呼称及び観念において互いに明確に区分され類似していないと言え、たとえこれら商標の構成のうち「JIMMY」部分が互いに同一であるとしても、「JIMMY」部分が各商標で占める割合と他の構成要素と結合している程度及び位置、商標の全体的な構成、形態及び観念などに照らしてみる時、一般需要者や取引者が本件出願商標と先登録商標をいずれも「JIMMY」部分だけで呼称又は観念する可能性は稀薄であるため、その指定商品の出処に対して誤認・混同を起こすおそれがあるとみることも難しい。
従って本件出願商標は先登録商標と類似していると言えないため、これに対して原告の上告を受け入れ原審判決を破棄し原審法院に差し戻して事件を再度審理するようにするのが妥当である。
専門家からのアドバイス
結合商標の類否を判断することにおいて大法院は、文字と文字又は文字と図形が結合した結合商標においては各構成部分を分離観察すれば自然ではないほどに不可分的に結合されていない限り、その構成部分のうち一部分のみにより簡略に呼称・観念され得て、また一つの商標で二つ以上の称呼や観念を考えることができる場合に、そのうちの一つの称呼・観念が他人の商標と同一・類似であると認められる時、両商標は類似していると判示している。このような分離観察は結合商標の類否を判断するのに有用な方法にもなり得るが、度を越して形式的に適用すると、実際での取引関係での商標使用例とはかけ離れた判断をし易い。原則的に両商標の類否の判断は全体的な観点から外観、呼称、観念を比べなければならず、分離観察はそのような全体観察を補完する方法であるにもかかわらず、法院が全体的な外観や取引実情などを考慮することなく、度を越して分離観察方法を利用する傾向があったのも事実である。上記の判決は全体観察が結合商標比較の原則的な方法であるという点を再度強調したという点にその意義があり、商標登録を取得しようとする実務者にとっては非常に心強い大法院判決であると言える。他人の商標との類否が問題になる場合、先ずは全体的な外観、称呼、観念を比べなければならないという点にくれぐれも留意する必要がある。
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