知財判例データベース 商標法上では保護され得ない営業標識が使用により周知性を獲得した場合、不正競争防止法により保護された事例
基本情報
- 区分
- 不正競争
- 判断主体
- ソウル高等法院
- 当事者
- 芸○の殿堂(原告、被控訴人)v. 清△市他2人(被告、被控訴人)
- 事件番号
- 2005ナ35938
- 言い渡し日
- 2006年12月12日
- 事件の経過
- 上告
概要
158
商標法上、保護され得ない記述的標章でも、訴訟の弁論終結時を基準として、長く使われることにより取引者や一般需要者らにある特定人の営業を表示するものと広く認識された場合には不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律(以下「不正競争防止法」とする)が保護する営業標識に該当する。
事実関係
被告らが文化芸術施設を運営しつつ該当地域の名称と「芸術の殿堂」という名称を結合して使用したことに対し、原告は「芸術の殿堂」は原告の業務標章及びサービスマークとして登録されていることを知らせ、被告らが使用している名称を変更することを要請した。しかし、被告らはこのような要請を拒否する一方、原告の「芸術の殿堂」標章に対する登録無効審判を請求し、これにより「芸術の殿堂」はその指定役務及び業務の品質、用途などを普通の方法で使用する方法で表示した記述的標章として、サービスマーク登録決定時に原告の業務を表示するものとして需要者間に顕著に認識されたともみられないため、その登録を無効にするという判断を受けた。これに対して、原告は、被告らが原告の営業標識として国内に広く知られた「芸術の殿堂」標識を営業に使用することは不正競争防止法第2条第1号(ナ)目所定の不正競争行為である営業主体混同行為に該当すると主張し、法院に被告らのこのような標章使用行為の禁止及び原告が被った損害の賠償を請求した。
判決内容
他人の営業であることを表示した標識が不正競争防止法第2条第1号(ナ)目の「国内に広く認識された」標識に該当するかどうかは標識の使用期間、方法、態様、使用量、取引範囲などと取引の実情及び社会通念に照らして取引者又は需要者らの間に客観的に広く知られたかどうかが判断の基準になり、そのような認識の程度は営業の種類や性質、取引事情などにより異なるため、営業に対する標識の使用期間、営業の規模、売上高、宣伝広告の程度とマスコミ報道などの諸般事情を総合的に検討しなければならない。一方、保護される標識の周知性取得時期に対しては、明文の規定はないが「国内に広く認識された状態」を保護しようとする不正競争防止法の趣旨上、そういう事実状態が形成された時点から保護することが妥当であり、これによって相手方の利益が不当に侵害されることでもないと言えるため、弁論終結時を基準に周知性を取得したと判断されるのであれば充分であると考えられる。
上記の法理によれば、たとえ原告の「芸術の殿堂」標章が記述的標章としてそのサービスマーク登録時に周知性が認められず商標法によっては保護を受けることができないとしても、原告の営業標識としての使用期間、関連営業人公演回数と観覧客の規模、宣伝広告及びマスコミ報道の程度、一つの固有名詞のように使われ自らの新規性ないし独創性を持っている点などを総合的に考慮してみるとき、本件弁論終結時には「芸術の殿堂」が原告の営業であることを表示するものとして国内に広く知られ、不正競争防止法上の保護対象となる営業標識としての周知性を獲得したと判断される。
従って、被告らが使用する標章の要部が「芸術の殿堂」であって原告の標章と類似しており、たとえ「芸術の殿堂」に地域名称が付加されて使われたとしても、需要者としては被告の公演芸術機関の運営機関が原告の支社、機関、支部又は支店であると誤認・混同したり又はそのように誤認・混同するおそれがあるとみられる限り、原告の周知標章に対する被告らの不正競争行為が成立すると言えるため、本件侵害差止及び損害賠償請求を認容する。
専門家からのアドバイス
本事案では、原則的に商標法上登録が許容され得ない記述的標章に該当する「芸術の殿堂」標識が、登録決定当時を基準に出処を表示する標識として顕著に認識されていなかったという理由で使用による識別力取得が認められなかったことにより、結果的に登録が無効になったとしても、上記判決の弁論終結当時には原告の営業を表す標識として広く認識されていると認められた結果、不正競争防止法上の禁止請求と損害賠償請求が容認されたものである。このように商標法によっては保護され得ない標識であるとしても不正競争防止法によっては保護され得る場合もあり、これは商標法と不正競争防止法の法理と具体的法条項が相異するためで、不正競争防止法は上記の判示にも記されているように、特定営業標識が国内に広く認識されているという現実の状態を保護するものであるので、既に登録が拒絶されたり将来無効になる商標であるとしても訴訟の弁論終結当時に営業標識として周知性を獲得したものと認められれば、保護を受けることができる。従って、営業標識に関しては常に商標法と共に不正競争防止法による保護も考慮することが望ましい。
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