知財判例データベース 商標法第7条第1項第4号所定の「公共の秩序又は善良な風俗を紊乱するおそれがある商標」の意味を判断した事例
基本情報
- 区分
- 商標
- 判断主体
- 大法院
- 当事者
- インディペンデント○○○リミテッド(原告、被上告人)v.ジョ・○○他1人(被告、上告人)
- 事件番号
- 2004フ1267
- 言い渡し日
- 2006年02月24日
- 事件の経過
- 特許法院に差戻し
概要
118
商標を登録して使用する行為が特定の当事者間でなされた契約に違反したり特定人に対する関係で信義誠実の原則に違背しても、そのような事情のみで商標法第7条第1項第4号所定の「公共の秩序又は善良な風俗を紊乱するおそれがある商標」に該当すると見ることはできない。
事実関係
被告は原告との間で低アルコール飲料であるRTD(Ready To Drink)に対する国内独占販売契約を締結し、原告が自国(ニュージーランド)に登録した商標を付して商品を販売したが、上記の独占輸入販売権を訴外1に譲渡することにより原告との取引関係を終了した。以後被告は原告商標の要部である「KGB」が中央に入る商標を国内に出願して登録を受け、原告に原告商標の使用商品が自身の登録商標を侵害するという理由でその商品の輸出中止を要求すると同時に訴外1に原告商標の使用中止を求める仮処分を申請した。これに対して原告は、被告の登録商標が商標法第7条第1項第4号で規定した「公共の秩序又は善良な風俗を紊乱するおそれがある商標」に該当することを主張し、原審はこれを認容して本事件登録商標に登録無効事由があると判示した。
判決内容
商標法第7条第1項第4号で規定した「公共の秩序又は善良な風俗を紊乱するおそれがある商標」とは、商標の構成自体又はその商標が指定商品に使われる場合、一般需要者に与える意味や内容が社会公共の秩序に違反したり社会一般人の通常の道徳観念である善良な風俗に反する場合又は故意で著名な他人の商標又はサービスマークや商号などの名声に便乗するために無断で他人の標章を模倣した商標を登録使用するように、その商標を登録して使用する行為が一般に公正な商品流通秩序や国際的信義と商道徳など善良な風俗に違背する場合を言う。従って、商標を登録して使用する行為が特定の当事者間でなされた契約に違反したり特定人に対する関係で信義誠実の原則に違背したものと見られるとしてもそのような事情のみを挙げて上記の法条項所定の「公共の秩序又は善良な風俗を紊乱するおそれがある商標」に該当すると見ることはできない。
本事案で、被告が原告商品の独占輸入販売権を譲渡した後、その営業に使用する標章と同一・類似の商標を出願・登録する行為は譲受人訴外1等、特定当事者に対する関係では商道徳や信義誠実の原則に違反したと言えるが、特定当事者以外の者に対する関係でも一般に商道徳や信義誠実の原則に違反したとは言えないことである。従って、被告の登録商標が商標法第7条第1項第4号所定の商標に該当すると見ることはできず、上記の法理を誤解した原審判決を破棄し事件を差し戻す。
専門家からのアドバイス
当事者である原告や訴外1の立場では多少不満であろうが、商標法第7条第1項第4号の「公共の秩序又は善良な風俗を紊乱するおそれがある商標」とは、特定当事者に対する関係だけではなく一般人に対する関係でも商道徳や信義誠実の原則に反すると言えなければならないため、本事案が商標法第7条第1項第4号により保護されることはできないという趣旨で判示した上記の判決は妥当であるものと判断される。本事案でのような取引相手の信義誠実の原則に反する行為から保護を受けるためには契約を締結する段階から契約上競業禁止義務、類似商標使用及び登録禁止義務などを具体的に規定して置く必要がある。
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