知財判例データベース 機能的著作物の創作性有無の判断方法

基本情報

区分
著作権
判断主体
大法院第1部
当事者
ジュ・○○他5人(被告人、上告人)
事件番号
2002ド965
言い渡し日
2005年01月27日
事件の経過
原審破棄・差戻し

概要

80

地下鉄通信設備のうち画像伝送設備に対する設計図面については機能的著作物としての創作性を認め難いという理由でその著作物性が否認された。

事実関係

調達庁が光州地下鉄の路線の通信設備を国際入札形式で公告するや、被害者A株式会社がこれに応札するために、通信設備のうち画像伝送設備に対する設計図面を作成して被告人B会社に設計図面のCAD作業を依頼し、これに被告人B会社はCAD作業が完了した設計図面(“本件設計図面”とする)を被害者A会社に納品した。一方、同入札に参加することにした被告人C会社は被告人B会社へ被害者A会社が著作権を有する本件設計図面を提供してくれるよう依頼し、被告人B会社はこの要請に応じて本件設計図面のうち会社の名称とロゴのみ被害者A会社から被告人C会社に修正した後、その設計図のプリント1部、設計図に関するCADファイルを圧縮、保存したフロッピーディスク5枚を被告人C会社に提供した。このような行為に対して、検事は被告人B会社及びその職員、そして被告人C会社及びその職員たちを被害者A会社の著作権を侵害する著作権法違反罪を適用して起訴した。第一審は、本件図面は著作物として見ることができないだけではなく、被告人の著作権侵害に対する犯意の証明が足りないという理由で被告人全てに無罪を言渡たところ、第二審は本件図面の著作物性と被害者A会社の本件図面に対する著作権を認めた後、被告人の犯意を認めるのに充分であるとの理由で被告人らを有罪と認定した。

判決内容

大法院は、著作権法第2条第1号は著作物を「文学・学術又は芸術の範囲に属する創作物」と規定し、上記の法条項による著作物として保護を受けるために必要な創作性とは、完全な意味の独創性をいうのではないものの、著作物作成者の創造的個性が表れない表現を含んでいるものは創作性がある著作物とは言えず、一方、著作権法は第4条第1項第8号で「地図・図表・設計図・略図・模型その他の図形著作物」を著作物と例示しているところ、このような図形著作物は芸術性の表現よりは機能や実用的な思想の表現を主な目的とするいわゆる機能的著作物として、機能的著作物はその表現しようとする機能又は実用的な思想が属する分野での一般的な表現方法、規格又はその用途や機能自体、著作物利用者の理解の便宜性などによりその表現が制限される場合が多いため、作成者の創造的個性が表れない可能性が大きく、同一の機能をする機械装置やシステムの連結関係を表現する機能的著作物においてその装置などを構成する装備などが変わる場合に、その表現が変わってくることは当然であり、著作権法は、機能的著作物が含んでいる思想を保護するものではなく、その著作物の創作性がある表現を保護するものであるため、技術構成の差異により変わってくる表現に対して同一の機能を違えて表現したという事情のみでその創作性を認めることはできず、創造的個性が表れているかどうかを別途に判断しなければならないと判示し、そして、被害者A会社が著作権を主張している本件図面にて装備の配置、連結関係は画像伝送設備分野の通常的な図面における配置、連結関係と同一又は類似のもので、装備の配置、配置方式、作図方法に特別な特徴を見いだすことができないため創作性を認定し難く、また、本件図面のうち通常的な図面と差異のある映像交換装置部分は、表現方法上の差異ではなく、表現しようとする技術的思想の差異からもたらされるものであるので、この部分も創作性を認定し難いとして、結果的に本件図面の著作物性を否認し、被告人らに無罪を宣告した。

専門家からのアドバイス

著作権法は、技術的事項を保護するものではなく、表現方式を保護する法律であり、表現方式の中でも創作性があるものを保護する。本件において問題となった設計図面、そして地図、模型などといった機能的著作物はその表現方法、記号などに関してあらかじめ約束されている場合が多く、特に、設計図はその用途に応じた制約により自由な思想又は感情の表現が難しく、当該技術分野の常識又は規格に従う場合が多い。従って、このような機能的著作物に関する創作性はこのような通常の表現方法、規格と細部的に対照し判断しなければならないものであり、この大法院判決はこのような点をもう一度確認したものであると言える。

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