知財判例データベース 既存出版物の一部表現を借用したが、同一性が認められ難い出版物を発行した場合には出版権侵害に該当しないとした事例
基本情報
- 区分
- 著作権
- 判断主体
- 大法院
- 当事者
- キム・○○(原告、被上告人)v. 株式会社韓国ニュートン(被告、上告人)
- 事件番号
- 2003ダ47782
- 言い渡し日
- 2005年09月09日
- 事件の経過
- ソウル高等法院に差戻し
概要
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第三者が出版権者の許諾なしに原作の全部又は相当部分と同一性のある作品を出版する時には出版権侵害が成立するが、原作との同一性を損なう程度に原作を変更し出版した場合には著作者の2次的著作物作成権の侵害に該当しても出版権者の出版権侵害には該当しない。
事実関係
原告は「戦略三国志」という漫画の著作権者から出版権を得てこれを出版した出版権者であり、被告が「スーパー三国志」という漫画を出版するや自身の出版権を侵害しているとして侵害の差止を求める本件訴えを提起した。これについてソウル高等法院は、「スーパー三国志」という代表的な登場人物の顔の形が「戦略三国志」のそれと明確に異なり、図の表現形式においてそれ自体で創作性が認められるほど独特で両作品の間に実質的類似性を認めることはできないが、セリフの流れ、セリフを切るタイミングなどにおいて両作品の間に相当な類似性が発見され、両作品ともナ・グァンジュンの「三国志演義」を原作としているからというだけでは説明できないほど個々のカットの構成、カット内の図の配置、カット割りにおいて類似点を発見できるという理由により被告が原告の出版権を侵害したと認めた(ソウル高等法院2003年8月19日言渡2002ナ22610判決)。これに対し被告が上告した。
判決内容
著作権法第54条所定の出版権は、著作物を複製・配布する権利を有する者との設定行為で定めるところにより、著作物を原作そのまま出版することを内容とする権利であるが、第三者が出版権者の許諾なしに原作の全部又は相当部分と同一性のある作品を出版する時には出版権の侵害が成立するものの、原作との同一性を損なう程に原作に変更を加え出版する場合には、著作者の2次的著作物作成権の侵害に該当すると言えても出版権者の出版権侵害には該当せず、同一性如何は、文と図の表現形式、演出の方法などを総合的に考慮し判断しなければならないのに、原審判決では同一性如何について審理しないまま出版権侵害を認めたという違法がある。
専門家からのアドバイス
出版とは著作物を印刷又はその他類似の方法で文書又は図画として発行、即ち複製・配布する行為を示すものであり(著作権法第54条第1項、第2条第16号)、著作権法第54条第2項が「出版権を設定された者はその設定行為で定めるところによりその出版権の目的である著作物を原作通りに出版する権利を有する」と規定している。従って、原作を改作したり翻訳する等の方法で変更せずに出版する場合にのみ出版権侵害が成立するため(大法院2003年2月28日言渡2001ド3115判決)、著作権ではなく出版権を請求権原にしようとする場合にはこの点に関して注意する必要がある。
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