知財判例データベース 意図的な歪曲表現で製作した地図に創作性があると見てその複製者に対し損害賠償責任を認めた事例

基本情報

区分
著作権
判断主体
ソウル中央地方法院
当事者
株式会社オレンジプラン(原告)v. 株式会社江原マガジン他1(被告)
事件番号
2005ガ単12610
言い渡し日
2005年08月11日
事件の経過
未定

概要

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意図的な歪曲表現でダウンタウン地域を大きく示し、ダウンタウン地域から遠距離に散在している南怡島のような観光地を実際より近い距離に配置することにより観光客がひと目で観光名所が分かる特徴を有した地図には創作性があり、この観光地図を見てこれと実質的に同一の地図を製作・配布する行為は著作権侵害行為に該当する。

事実関係

原告は地図製作業などを主な目的とする法人として、2000年9月1日頃春川市の全景を立体的に表現する観光地図(以下、「本件観光地図」とする)を製作したが、この観光地図は上記のような特徴を有するように製作された。本件観光地図は春川駅、春川市外バスターミナルなどに掲示され、2002年11月18日著作権審議調停委員会に図形著作物として著作権登録が済まされた。被告江原道開発公社(以下、「開発公社」とする)は観光事業などを主な目的とする地方公営企業であり、被告江原マガジン(以下、「江原マガジン」とする)は広告代行業を主な目的とする法人であるところ、江原マガジンは開発公社の依頼により春川観光地図を開発公社に納品したが、江原マガジンが製作し納品した観光地図が本件観光地図のように意図的な歪曲表現でダウンタウン地域を大きく示し、ダウンタウン地域から遠距離に散在されている南怡島のような観光地を実際より近い距離に配置した特徴を有している。これに対し原告は上記の被告らを相手取って複製権侵害の共同不法行為責任を問い、その損害の賠償を求める本件訴えを提起したが、江原マガジンは原告の請求に対して争わず開発公社だけが応訴し争った。

判決内容

原告は本件観光地図の製作により既存の観光地図と区別される著作権を取得したと言えるが、江原マガジンは開発公社に春川観光地図を納品しながら先に製作されていた原告の本件観光地図を見てこれと実質的に同一の地図を製作したと言えるため、江原マガジンは本件観光地図に対する原告の複製権を侵害したものであり、その侵害行為により原告が被った損害を賠償する責任がある。

しかし、開発公社の場合、江原マガジンに上記の春川観光地図の製作に関して具体的な製作方法などに関する注文や指示なしに一切の江原マガジンの責任下でその地図を製作するよう依頼した後、完成された地図の納品を受け、その代金を支払ってからこれを観光客らに無料で配布しただけであり、上記の春川観光地図の製作過程に関与しなかったため、江原マガジンが原告の著作権を侵害したかどうかを知り得ず、ここに過失があると見られる事情もないため、江原マガジンの上記著作権侵害の不法行為に加担したとは言えない。

専門家からのアドバイス

一般的に地図は指標上の山脈・河川などの自然的現象と道路・都市・建物などの人文的現象を一定の縮尺で予め約束した特定の記号を使用し、客観的に表現したものであって、地図上に表現される自然的現象と人文的現象は事実そのものであり、著作権の保護対象ではない。従って、地図の創作性有無の判断においては地図の内容になる自然的現象と人文的現象を従来と異なる新しい方式で表現したかどうかとその表現された内容の取捨選択に創作性があるかどうかが基準になる(大法院2003年10月9日言渡2001ダ50586判決)。本件判決はこの基準に基づき、自然的現象と人文的現象を従来の地図とは異なる方式の表現(春川市全景の立体的表現、縮尺の意図的歪曲)を使用した本件観光地図に創作性を認めたものと判断される。

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