知財判例データベース 販売地域制限の約定違反だけでは商標権や専用使用権の侵害となるとはいえないと判断された事例

基本情報

区分
商標
判断主体
大法院第1部
当事者
株式会社ペンコ(債権者、被上告人)v. パク・○○(債務者、上告人)
事件番号
2002ダ61965 仮処分異義
言い渡し日
2005年06月09日
事件の経過
上告棄却

概要

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登録商標権者から専用使用権を受けた専用使用権者が、この商標権者との販売地域制限約定に違反して韓国へ輸入し販売した者に対し、専用使用権を侵害されたとして提起した仮処分事件に関連し、大法院は、輸入商品に付された商標が国内登録商標と同一の出所を表示するものであれば、たとえ当事者間の販売地域制限などに関する約定に違反していたとしても、それだけでは商標権を侵害するとみることはできないと判断した。

事実関係

債権者は指定商品をそれぞれ「毛布、ベッドカバー、じゅうたん」、「非医療用芳香剤」などとする商標「ROBERTA DI CAMERINO(商標登録番号第416497号及び第519348号)」と「(商標登録番号第416498号及び第519347号)」(以下「本件商標」とする)の専用使用権者であり、債務者は本件商標と同一・類似の商標が付された「車両用座布団、クッション、カーペット、車両用芳香剤」などを日本から輸入し、国内に販売する者である。債務者が輸入・販売した製品は日本の株式会社エルマーク(第519347号と同一の「ROBERTA DI CAMERINO」標章の日本での登録商標権者である三菱商社株式会社との間に上記の標章付着商品に対する生産・販売の約定をした)が生産し、当該製品を外国に輸出しないという約定の下で株式会社九州エステドに販売したものである。債権者は債務者の上記商品の輸入及び販売の行為が債権者の専用使用権を侵害するものであるとし、提起した仮処分申請事件の第一審及び抗告審法院は、債務者が輸入した各商品が適法な商標を付しているが販売地域に関する約定に違反して輸出されたため、これは債権者の専用使用権を侵害するものであるという理由で仮処分決定をしたところがあり(大邱高等法院2001ラ61判決)、これに対する仮処分異義事件で原審は上記の仮処分決定は正しいため、これを認可するという趣旨で判断したが、債務者はこれを不服として上告した。

判決内容

法院は、国内に登録された商標と同一・類似の商標が付された、その商標の指定商品と同一・類似の商品を輸入する行為が登録商標権の侵害を構成しないためには、外国の商標権者ないし正当な使用権者が輸入された商品に商標を付している必要があり、外国の商標権者と国内の登録商標権者の間に法的、経済的に密接な関係があって輸入商品に付された商標が国内の登録商標と同一の出所を表示するものと見られるものでなければならず、一方、外国の商標権者ないし正当な使用権者が商標を付した後、取引当事者間の販売地域制限約定に違反して他の地域にその商品が販売・輸出されてもそのような事情のみでその商品の出所が変わるわけではないため、そのような約定違反のみで外国商標権者が正当に付した商標が違法なものとなるわけではないと判断した。上記の事件で商標第519348号と同一の標章については三菱商社が登録商標権者であり、三菱がエルマークに対して上記の標章付着商品を生産・販売するように約定した事実に照らしてみるとき、債務者が販売地域に関する約定に違反したとしても第519348号商標との関係では外国の商標権者ないし正当な使用権者が商標を付した商品であるとは言えると判示して、これと関連した仮処分決定を取消す判決を言渡た。

専門家からのアドバイス

以前より、真正品の並行輸入が許容される範囲に関しては国際的に非常に議論が多い部分であるが、韓国商標法はこれに関して明確に規定していない。大法院1997年10月10日言渡96ド2191判決を通して大法院は並行輸入を禁止できる具体的要件について説示し、ここで定められた基準はそのまま知的財産権保護のための輸出入通関事務処理に関する告示(関税庁告示2001-23号)に規定されたところ、本判決は従前の判決で定めた並行輸入禁止の要件を再度確認した。さらに外国の商標権者ないし正当な使用権者が商標を付した後、取引当事者間の販売地域約定に違反して商品が輸出されたとしてもこれにより商品の出所が変わるわけではないとの理由で販売地域制限の約定違反の事実だけでは侵害行為にならないという点を明確にしたところに意味がある。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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