知財判例データベース Pear To Pearサービスを提供した業者に対して著作隣接権侵害の幇助責任を認めた事例
基本情報
- 区分
- 著作権
- 判断主体
- ソウル高等法院第4民事部
- 当事者
- 株式会社新村ミュージック他、10人(債権者、被控訴人)v.梁○○他、1人(債務者、控訴人)
- 事件番号
- 2003ナ21140仮処分異議
- 言い渡し日
- 2005年01月12日
- 事件の経過
- 債務者の上告により現在大法院で係属中(2005ダ11626)
概要
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音楽ファイルを共有できるプログラムを開発し、このプログラムを自分のサイトを通してサービスすることにより、利用者をして不法複製ファイルを相互交換することができるようにした債務者に対し著作隣接権侵害行為の共同不法行為責任は否定したものの幇助責任は認めた。
事実関係
債権者らは音盤の製造、販売を目的とする音盤製作者及び外国の音盤会社から大韓民国内で音盤製造権と販売及び配布権の許諾を受けた独占的実施権者であり、債務者らは「P2P(peer to peer)方式」を使用しMP3音楽ファイルを共有できるようにするプログラムの開発者として自分たちが運営しているウェブサイトでこのプログラムを配布して、これを利用した音楽ファイル共有サービスを提供したところ、債権者らが著作隣接権又は独占的実施権を保有している歌が債務者らの許諾なしにこのサービスを通して利用者間で相互交換されていた。このような行為に対して債権者らは音盤複製権及び配布権侵害による侵害停止請求権を主張すると共に債務者らを相手取った音盤複製等禁止仮処分申請事件を提起し、本件原審法院は債務者らが開発、提供しているプログラムの利用者らがこのプログラムを利用して債権者らが音盤製作者になっている歌のMP3ファイルをアップロード又はダウンロードしてはならないと決定した。これに対し債務者らは第1審判決の取消を求めてソウル高等法院に控訴した。
判決内容
法院は、音楽ファイル共有サービスの利用者らが他の利用者のコンピュータにアクセスし、本件の歌のMP3ファイルを自分のコンピュータにダウンロードしてハードディスク等に保存する行為は音を有形物に固定するものとして、当該音盤製作者の著作隣接権の一つである複製権を侵害する行為になると認めた。次に、このような利用者の複製権侵害行為に対して債務者に共同不法行為責任が成立するか、或いは幇助責任が成立するかを判断した。先ず、共同不法行為責任の成否について共同不法行為が成立するためには客観的に見たとき被害者に対する権利侵害が共同で行われ、その行為が損害発生に対し共通の原因となり、かつ各行為が独立的に不法行為に該当しなければならないところ、本件債務者らはサーバーを運営しながらID等、アクセスに関する情報のみを管理しているため、個別利用者らの具体的な不法ファイル共有及びダウンロード行為を確定的に認識することは難しかった点、利用者らによる歌検索及び検索結果の伝送、ダウンロードには債務者が全く関与しなかった点などを考慮してみるとき、債務者らの行為が独立的に音盤製作者らの複製権を侵害したり、利用者らの侵害行為に直接的で密接に関与したと評価することは難しいとの理由で共同不法行為責任は否定した。しかしながら、幇助責任に関しては、(i)利用者らの著作隣接権侵害行為を債務者が未必的にでも知ることができ、このような不法的なファイル共有を制限することができた点、(ii)債務者が運営しているサーバーは音楽検索機能の他に整列機能、リアルタイム聴取機能、チャット機能を備えており利用者らのファイル共有を促す多様な機能がある点、(iii)債務者らは自分が運営しているサーバーの認知度を利用し今後の収益を得る計画であった点、(iv)自分たちのサービスを通して共有されるファイルが大部分著作隣接権侵害の問題になることを経験則上、十分に予想できた点を考慮してみるとき、債務者は利用者らの不法的なファイル共有行為による著作隣接権の侵害行為を未必的にでも認識していたにもかかわらずこれを容易にせしめたため、幇助責任を認めることができると判断した。
専門家からのアドバイス
本件は日本国のFile Rougeと類似するP2Pサービスの運営者に対して民事上、著作隣接権の責任を認めた事例である。本件と同日に言渡された刑事判決で債務者らに対する著作権法違反幇助罪の刑事責任は被告人らが最初から複製権侵害行為を幇助する目的でプログラムを開発したのではないとの点などを考慮し、幇助の故意がないとの理由で無罪を言渡た(ソウル地方法院2003年5月15日言渡2001コ単8336判決)。音盤製作者、実演者のような著作隣接権者は複製権、配布権を有するが、改正著作権法(施行日:2005年1月17日)は音盤製作者及び実演者に対しても伝送権を付与することにより、今後このような事件で著作隣接権者は複製権侵害に加えて伝送権侵害を主張することができるようになった。伝送権とは、一般公衆が個別的に選んだ時間と場所で受信したり、利用することができるように著作物を無線又は有線通信の方法により送信したり利用に提供すること(著作権法第2条第9号の2)を言うもので、例えばストリーミングサービスの不法性が争われた事件(2004コ単1275、4133、5829(併合)など)のように利用者のコンピュータ内にデータが保存されたかされないかを争うことなく権利主張できることになる。
ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム
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