知財判例データベース 特許請求範囲が訂正により無効事由が解消された場合、訂正前の侵害行為について特許侵害罪を問えないとした事例
基本情報
- 区分
- 特許
- 判断主体
- 大法院
- 当事者
- 韓国個人(被告人)v. 検事(上告人)
- 事件番号
- 2005ド1262
- 言い渡し日
- 2005年10月14日
- 事件の経過
- 確定(上告棄却)
概要
115
特許請求範囲に記載不備の瑕疵があり権利範囲を認めることができなかった特許発明に対してその特許請求範囲を訂正する審決が確定された場合、訂正前に行われた被告人の製品製造、販売行為が特許権侵害罪に該当するかどうかを判断することにおいては、訂正前の特許請求範囲を侵害対象特許発明と見なければならない。
事実関係
控訴外A社は丸編機用糸格納及び供給装置に関する特許を登録し保有していたが、同特許発明の特許請求範囲には該当特許発明の必須的構成要素が全て記載されていない状態であった。その後、その特許請求範囲を訂正する審決が確定されたものの、被告人が上記の特許と関連した丸編機用糸格納及び供給装置を製造、販売したのは上記訂正が行われる前であった。
判決内容
特許発明の特許請求範囲にその効果達成に必要な必須的構成要素が全て記載されたと見られない発明は、特許法に違反して登録されたものとしてその特許を無効とする審決が確定される前でもその権利範囲を認めることはできず、このように権利範囲が認められない特許発明と同一又は均等な関係にある発明を実施する行為は特許権侵害罪を構成しない。従って、被告人が製造販売した物品が訂正前特許請求範囲と同一又は均等関係にあるかどうかと関係なく被告人の行為は特許権侵害罪に該当しない。
一方、本件特許発明の特許請求範囲を訂正する審決が確定され、被告人が製造販売した製品が訂正後の特許請求範囲と同一又は均等な関係にある物である可能性がある場合に、このような訂正審決が確定されたときは、その訂正が別途の訂正無効審判の手続きにより無効にならない限りその特許発明は最初から訂正された特許請求範囲により登録されたものと見なければならないが、被告人の行為が特許権侵害罪に該当するかどうかを判断するのにおいて訂正後の特許請求範囲を侵害対象の特許発明とするのが被告人に不利な結果をもたらす場合までも訂正の遡及的効力が当然に及ぶとは言えない。
専門家からのアドバイス
独立した訂正審判請求又は特許異議手続き/特許無効審判手続き内での訂正請求により訂正審決がなされた場合、その訂正の効力は当該特許の出願時に遡及し発生するのが原則であり、このような原則は、訂正審決に対して審決取消訴訟などが提起された場合にも、その訂正審決を取消す判決が確定される前までは、そのまま適用される。ただし、特許侵害罪の適用によってこの原則をそのまま押し通すとなると刑事法の大原則である刑罰不遡及の原則に反する結果になるため、やむをえずその遡及効を一部制限しないわけにはいかず、本判決はこの点を明確に宣言したところにその意義を見出すことができる。
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