知財判例データベース 他人の標章をドメイン名で登録して置いたことがUDRP第4条の要件を充たすだけでなく、商標権又はサービスマーク権の侵害にも該当すると認めた事例
基本情報
- 区分
- ドメイン
- 判断主体
- 仁川地方法院富川支院第1民事部
- 当事者
- パク・○○(原告)v. コンチネンタルエアーラインズ,インク(被告)
- 事件番号
- 2004ガ合2549
- 言い渡し日
- 2005年08月05日
- 事件の経過
- 控訴
概要
97
他人の著名なサービスマークと同一の文字からなるドメイン名をそれに対する権利や正当な利益のない者が、その他人の顧客らを自身が運営するウェブサイトに誘引するための意図で登録した場合、そのドメイン名の登録と使用は、UDRP(Uniform Domain Name Dispute Resolution Policy)第4条aの要件を充たし、そのドメイン名は登録取消、移転、変更の対象になり、商標権あるいはサービスマーク権の侵害による不法行為の要件もそのまま充たす。
事実関係
被告は米国で売上げ規模で5位に入る航空会社として韓国特許庁に「continental airline」標章をサービスマークとして登録している。原告は2003年4月8日ネットピアドットコム(Netpia.com)に「continentalairline.com」ドメイン名(「本件ドメイン名」とする)を登録し、それに該当するウェブサイトの開設を少し留保したまま、インターネットアドレスのウィンドウに本件ドメイン名を入力すれば自身が運営する他の航空券予約代行業のウェブサイトである「eflight.com」に移動するようフォーワーディング(forwarding)していた。被告は原告による本件ドメイン名の登録と使用がUDRP第4条aに該当すると主張しながら全米仲裁院に原告を相手取って行政的紛争解決手続きの開始を申請し、上記の全米仲裁院は被告の申請により本件ドメイン名を被告に移転せよという趣旨の決定をした。これに対し原告が被告を相手取って本件ドメイン名に対する被告の使用禁止及び移転請求権が存在しないことの確認を求める本件訴を提起した。
判決内容
原告は本件ドメイン名の登録申請をすることにより、被告は本件ドメイン名に関する行政的紛争解決手続きの開始を申請することにより、両方ともUDRPの規定による紛争解決結果に羈束されるが、i)本件ドメイン名は被告の登録サービスマークである「CONTINENTAL AIRLINES」と同一であり、ii)原告は本件ドメイン名を他のウェブサイトにフォーワーディングさせているだけでウェブサイトも開設していなかっただけではなく、その名前を商号にして事業者登録をしているなどの事情が認められないため、本件ドメイン名に対する権利や正当な利益があるとは言えず、iii)原告は本件ドメイン名を登録した当時、被告が航空運送業を営む著名な会社であるという事実を知り、その顧客を誘引するための意図で被告のサービスマークと同一のものをドメイン名として登録したと推認されるため、本件ドメイン名はUDRP第4条aの要件を全て充たすから、登録取消、移転、変更の対象になる。一方、UDRP第4条aの要件は商標権あるいはサービスマーク権の侵害による不法行為の要件もそのまま充たすため、この点からも被告としては原告を相手取って本件ドメイン名の使用禁止などを請求する権利がある。
専門家からのアドバイス
ドメイン名に関する争いで行政的紛争解決手続きが開始され、紛争解決サービス提供機関の決定がある場合、これまでの裁判所の態度は大体商標権者に国内法(商標法又は不正競争防止法等)で定めた禁止請求権があるかを主に判断する立場を取り、UDRPは国内法の解釈を補充することを原則としてのみ使用してきたが、「ccfhsbc.com」などドメイン名関連事件でソウル高等法院が最初にUDRPのみに基づいて使用禁止請求権の存否を判断したところである(ソウル高等法院2004年11月24日2004ナ10697判決)。本判決は上記ソウル高等法院判決と同じ基調でUDRP自体により禁止・移転請求権が存在することを明示したものであるが、これが国内実定法にも違反するものと付随的に明らかにした点に特徴があると言える。一方、韓国の不正競争防止法は2004年1月20日改正時に不正な目的によるドメイン名の登録・保有・移転又は使用行為を新しく不正競争行為として規定したところがあるが、本判決ではこの点に関しては特に判断していない。
ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム
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